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諸々が千々に降下してくる夏々の日々  作者: triskaidecagon
第五章 秘密とは隠して知らせる情報
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7月4日(月) 8:00

諸々が千々に降下してくる夏々の日々

 第五章 秘密とは隠して知らせる情報

━━━━━━━━━━

7月4日(月)

      8:00

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 月曜。週末が終わって、今日からまた学校。

 私は学校は嫌いじゃない。むしろどちらかと言えば好きだ。授業は私の知らないことを教えてくれるから楽しい。とはいえ好きじゃないところもあって、それは時間的な拘束があること。でも逆に、時間的な拘束があるから他に興味が逸れてしまうのが防がれているみたいなところがあって、好きじゃないけど必要な部分かもしれないとは思っている。

 8:00。目が覚めた。

 遅いぐらいの時間だけど、リモプレの授業だからこれで充分だ。

 時間ついでに携端を確認すると、そのタイミングでメッセが来た。


|☆ハルカ☆|佐々也ちゃん? 起きたなら服貸して。|


 寝ぼけたまま確認すると、こんな内容だった。

 服? なんで?

 ああそうか、着替えられるようになったら服がないのか。

 まるっきり思いつかなかった。

 幸い、私とハルカちゃんの身長は同じぐらいなので、適当なTシャツとズボンを見繕う。

 自分はまだ寝間着から着替えてないけど、ぱっと手近にあった服、つまり何事もなければ私が今日着るはずだったろう服を持って隣の部屋を尋ねた。

 部屋に入ると、ハルカちゃんはプラスチックみたいな素材のブラとパンツを着て、あらぬ方向いてなにか考え事をしているかのようだった。

 服はないのに下着は持ってるのか……。

 しかしそれにしても、ハルカちゃんは服を脱いで背中側から見てもまがうかたなき美少女。

 手足も胴もスラッとしてて、肩幅や上半身の厚みもほっそりしていて、まるでアニメのフィギュアみたいな体型だ。

 始めて、つまり、ハルカちゃんが地面に落ちてたときに見たときにもフィギュアみたいだと思ったんだよな。その時には美人だからというのではなくて、人間型だけど上半身しか無い感じな上に単色成形でとても生きているとは思えないからという理由だったんだけど。

 最初はフィギュアだと思ってたのに今では実際に動いて話してるのを当たり前だと思ってるんだと思えば、なかなか感慨深い。いまではフィギュアではなくほぼ人間だと思っているので、なんというかこう、造形が良いことに感心しながらぼんやり見ていても、裸を見ているような気がしてなんかちょっと恥ずかしくなってきた。

「あの、ハルカちゃん? 服持ってきたよ」

「あっ佐々也ちゃん! ありがとう」

「えっ? おっ……」

 私が声をかけるとハルカちゃんは気がついて、そのまま私の方に近寄ってきた。

 うまく口も回らない。

 ひえー、お人形さんみたいな美人が半裸の下着姿で近寄ってくるー。

 別に困りはしないけど、どうすればいいかわからない。助けてくれー。

「そういえば、下着はあるんだね」

 とか苦し紛れに、さっき思った言葉が口をついて出る。

 いやべつに無い方が良かったとかそういう意味ではなく、でもこのタイミングで言うとそういう意味に聞こえちゃうんだろうか。いや違うんですよ。って言い訳するほうが怪しいぞ、これは。

 と、自分で仕掛けた罠に自分で掛かってしまい、デッドロックに陥る。

「これ? これは下着じゃないよ。表面。前の制服と同じ。下着まで脱いで見せることはそうそうないだろうと思ってさ」

「ああ、そういうやつ。そうだね、それでいいかも。うん、いいと思う」

 ハルカちゃんの何気ない返答にも、なんかちょっと上ずった感じ合いの手を返してしまう。

 なにを挙動不審に陥ってるんだ私はかえって怪しいよ。

 下着を脱いでいるところを見られる場面というとお風呂とかもある。それはまたその都度対策でいいのかとか、そんな感じになんとなく硬直していたら、私が手の上に載せた服をひょいと取り上げて、その場でほいほい着てゆく。

 うひゃー、目の前で着替えないでくれー。

 なんというかロッカールームとか教室での着替えとかならともかく、こう、生々しい感じの生活感のある私室というか……。いや、定義上ハルカちゃんの部屋に生々しさは無いし、生活もしてない気がするな。あるとしたら生活感でなくてプライベート感の高さ?

 そこはなんでもいいのか、とにかく目の前で人が着替えてることにはなんとなく心構えが居るんだよ。着替えてはいないか。着てるだけか。それこそどうでもいいか。

 それはそれとしても、目の前でやられるとなんか恥ずかしいな、これ。

 着る服がないから服持ってきてくれって言ってたんだから、裸なのも服を着るのも当然の成り行きではあるんだけど、そういうことではなく、自分の心構えとして。

 よくこの成り行きに気が付かかなかったな、私も。


「どうしたの? 佐々也ちゃん? フリーズした?」

「あ、いや。そうだね、フリーズしてたよ。見慣れない人が目の前で着替えてるからさぁ」

「見慣れない人? 友達じゃないの?」

「いや、親とかクラスメートとかはなんだかんだ着替えてるところ見たことあるとか、子供の頃は一緒にお風呂に入ったりもしたからね……、なんだかんだみんなの裸は見たことがあるんだ」

「なにそれ。いまフリーズしてるのとあんまり関係ないんじゃない?」

 そうですね、私もそう思います。

 こうなんというのか、ハルカちゃんの裸形の美々しさに当てられた感じか?

「うーん……」

「まぁでもいいわ、下着姿は禁忌なわけね。その辺の空気感って資料だけだとよくわからないから、今後の参考にさせてもらう」

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