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レオル皇太子殿下とダンスを踊りましたわ。

前世のジュエル帝国は皇帝の皇子間で対立し戦が起こる程、混乱した国だった。

メルディーナの兄達、皇太子の長兄ロベルトと次兄のアルフレッドが悪政を敷いていたために、帝国民に不満がたまっていたこともあった。父である皇帝は皇太子ロベルトの言いなりだった。


だから、メルディーナは立ち上がり、弟皇子達と共に、他国や民衆の指示の力も借りて、兄達と戦った。

そして、勝利し、女帝となったのだ。

何故、平凡な容姿の男を婿にしたのかというと、彼は一族にマレに出現する強運を持つダンゼン男爵一族の血を引いていたのである。

彼の先祖の男爵家からは、男爵令嬢から皇妃になる程の力を持った女性もいた。

皇妃程の力は無かったが、その男もそれなりに強運を持っていたのである。

その力の助けもあってメルディーナは女帝となった。


でも、何か物足りなかったのね…


男として、平凡な前世の伴侶は、メルディーナには物足りなくて。

だから、せっかくクズ男と離縁出来たのだ。

今度は、最高のイイ男と結婚したい。


かなり叔父や、リカルド、マリアが金を使い込んでいたが、幸い、公爵家の財産が傾く程の散財ではなかった。


女公爵として、執事に的確に領地経営の指示を出し、まずは仕事に精を出す。

そして、食事をしっかりと食べ、身体を鍛える事を忘れない。

良い剣を取り寄せ、無くしていた勘を取り戻せるように、鍛錬する。


「相手が欲しいわね…。もう少し、体力が付いたら、騎士団に殴り込みしましょう。」


帝国の薔薇であったメルディーナの剣技は、前世でも、最強と言われた兄弟達に引けを取らない程の強さだったのだ。


とりあえず、まずは夜会に出てみようと思い、机の上に置かれた招待状を見て見る。

今まではリカルドが愛人と出かけていたので、行った事がまるでなかった。


「楽しみだわ。この皇宮での夜会。これに行ってみましょう。現皇宮はどうなっているのかしら。」


メルディーナが女帝をしていた国とは、ここの国は違う。

だが、現皇宮の様子は他国とはいえ、楽しみだった。


大分、顔に肉がついて、髪も少し伸びてきた頃、ドレスを新調したメルディーナは、

夜会に一人出かけた。


着て行くドレスは薔薇をあしらった真紅のドレスである。


真紅はメルディーナの色…気に入っていた。


メルディーナが、皇宮の広間に入って行くと、皆、メルディーナの方を見つめる。

手を差し出して来る貴族も居て、


「お美しき方、エスコートしましょうか?」


「まぁ、エスコートして下さるの?よろしくお願いしますわ。」


「貴方様のような方をエスコート出来る栄光を頂けるなんて、幸せです。」


すると、数人の青年たちが進み出て。


「是非、私にエスコートを。」


「いえ、私にこそ、その栄光を…」


メルディーナは扇を口元に当てて微笑み、


「まぁ、困りますわ…。」


そこへ、この国のレオル皇太子が、美しい女性と共に近づいて来て。


「これは、見かけぬご婦人だな。名は何という。」


「メルディーナ・アシュッツフォアベルク公爵でございますわ。」


「ああ、確か夫と離縁して女公爵になったと言う。今まで夜会で見かけなかったが、

このような美しい女性とは。」


「あら…お褒めに預かり光栄ですわ。」


隣の女性が凄い形相でこちらを睨んでおりますけど、この方が皇太子殿下の婚約者の令嬢ですのね。


わたくしは、皇太子殿下に向かって、とびっきりの笑顔を向けましたわ。


「お願いがございますの。ダンスを一曲。踊って下さいません?皇太子殿下。」


「ああ。構わない。許可しよう。」


曲が始まったので、そのまま、レオル皇太子にエスコートされて、広間の中央へ出て、

メルディーナはレオル皇太子とダンスを踊る。


ダンスなんて、今世では踊った事がなかったけれども、前世では、それはもう。踊る機会が良くありましたから、帝国の真紅の薔薇としては、魅せ方は心得ておりますのよ。


わたくしと、踊りながら、レオル皇太子殿下が、頬を染めるのを見てしまいました。


「何て完璧な…。見事なステップだな。メルディーナ。」


「お褒めに預かり光栄ですわ。皇太子殿下。」


前世の夫とは大違い。金髪で綺麗な顔の皇太子殿下…。

わたくしよりは少し、年下だけれども…あの公爵令嬢から取ってしまおうかしら。

そうしたら、わたくしは、皇妃になるのも夢ではないわ。


ダンスが終わった途端、周りの人達から拍手がレオル皇太子とメルディーナに注がれる。

あまりの完璧なダンスと美しさに皆、魅了されたのだ。


レオル皇太子殿下に囁かれる。


「今度、其方と食事がしたいものだな。」


「ええ。喜んで。お受けしますわ。」


レオル皇太子は、他の人達の方へ行ってしまった。


先程、レオル皇太子の隣にいた公爵令嬢がつかつかと近づいて来て。


「わたくしは、レオル皇太子殿下の婚約者、フォンディーヌ・アレクシアと申します。

どういうつもりですの?色香を使って皇太子殿下を惑わすなんて。」


「惑わすとは…わたくしは、ただ、皇太子殿下とダンスを踊っただけですのよ。」


「あんな…あんな様子の皇太子殿下は…見た事がありませんわ。」


「うふふ。でしたら、もっとご自身の魅力を磨かれたら如何…。失礼しますわ。」


激動の時代に生きて来た帝国のメギツネ、いえ、薔薇を甘く見ないで欲しいわ。

自分でメギツネなんて言ってしまいましたけれども、わたくし、他国からも恐れられていましたのよ。


馬車に乗り込み、皇都の屋敷へ向かえば、急に馬車が止まって。


「そこの女、馬車から出ろ。」


馬車から出れば、覆面をした男達が数人、馬車の周りを囲んでいて、


「悪いが、ここで死んでもらう。」


「恨むんなら、出過ぎた真似をした自分の愚かさを恨むんだな。」


あら…この人達、命知らずなのかしら。


前世で国で一、二位を争う他国の騎士団長と凄腕のもう一人の騎士、二人を相手に一歩も引かなかった、わたくしを舐めているとしか思えないわ。


腰に差していた剣を構える。


「ほら、坊や達、かかってらっしゃい。」


覆面の男達は、メルディーナが武器を持っているとは思わなかったらしく、

それでも剣を手に、襲い掛かってきた。

軽くその剣を弾き、一人二人と、鳩尾を強く打って、殺さぬように倒して行く。


だって…黒幕を吐かせないと意味ないでしょう?


この人達、大した腕ではないわね…。


覆面の男達を地に転がした所で、一人のその腕を捻り上げて、


「さぁ、誰の仕業かしら、白状して欲しいわ。」


「誰が…お前なんぞに。」


「腕を切り落とされたいようね。ああ、それではつまらない。指を切り落としてみようかしら。一本一本…それはもう楽しいでしょうね。」


「わ、解った。アレクシア公爵家だ。」


「まぁ、随分仕事が早いですこと。では、騎士団に引き渡しますから証言して頂戴。」


通行人に騎士団へ連絡して貰い、男達を引き渡す。

同じ爵位のアシュッツフォアベルク公爵家に喧嘩を売ったのだ。

何かしらの処分はあるだろう。少なくともフォンディーヌは、皇太子の婚約者を外されるはずだ。


ふふん。いい気味よ。


屋敷へ戻れば、薔薇を浮かべたバスタブを用意して貰い、ドレスを脱ぎ捨て、

バスタブに入る。


大分、肉もついて来たわ。まだまだ、腹筋は割れないけれども、

そうね…騎士団へ明日、行ってみようかしら。楽しみだわ。


湯船に浮かんだ薔薇の花びらをふううっと息を吹きかけて、飛ばして、

怪しげな笑いを浮かべるメルディーナであった。


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