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前世の記憶が蘇りましたわ。

公爵令嬢フローラ・フォルダンと、美男騎士団長の46話に出て来る、ジュエル帝国のメギツネ、メルディーナの転生ものです。メルディーナは以前の物語で、散々、振られて酷い扱いの女性だったのですが…(-_-;)。とりあえず、転生させてみました。黒騎士死しても尚37話にも出ていて彼女の強さが分かります。

私、メルディーナ・アシュッツフォアベルクは、駄目な女なのです。

亡くなった私の父が残してくれた公爵家に婿入りして下さったリカルド様が私の旦那様なのですけれど、私の事、何も知らない女だって…

それはもう、注意して下さるのです。本当に私は愚かな女なのです。

俺がいなければ、とっくにこの家はつぶれていたんだ。だから感謝しろって。

だから、旦那様にとても綺麗な愛人がいて、私とは褥を共にしなかったり、

それは当然の事なのです。だって私、瘦せていて全然綺麗じゃないですもの。

お金も自由になった事なんてありません。だって、私の面倒を見てくれた叔父様は、お金をくれなかったし、結婚したら結婚したで、リカルド様が。このお金は愚かなお前には任せておけない。私が預かるって。


だから、新しいドレスもアクセサリーも何も買う事が出来なくて。

母の形見のドレスも何度も洗濯して…何だか色褪せてきているのですけど、それは当然の事なのです。

私が愚かで何も知らない女なのですから。

あまりにも愚かなので、叩かれる事なんてありますけど、私が愚かなので仕方がありません。

ああ、旦那様が帰って参りました。お出迎えしないと…また、叩かれますわ。



リカルド・アシュッツフォアベルク公爵は上機嫌で愛人のマリアと共に帰ってきた。

愛人のマリアは、べったりとリカルドと腕を組んで。

メルディーナは一回も共に夜会に行った事がない。いつも愛人を伴ってリカルドは出かけているのだ。マリアは見せびらかすように、甘い声で。


「今日は楽しかったわぁ。リカルド様。ああ、でもこのドレス、この間も着て行ったから、今度新しいのが欲しいの、お願い。リカルド様。」


「ああ、愛しのマリア。新しいのを作らせよう。」


リカルドは出迎えの使用人に交じって、出迎えるメルディーナをチラリと冷たい視線で見て。


「ふん。辛気臭い顔しやがって。楽しい気分が滅入るわ。」


「お帰りなさいませ。」


メルディーナは頭を下げる。


「辛気臭いって言ってるんだよ。」


思いっきりメルディーナは頬を叩かれた。


よろめいた拍子に後頭部を壁にしたたか打ち付ける。


使用人達は、リカルドが怖いのか、大丈夫かとも声をかけない。


「フン。ほっておけ。行くぞ。」


メルディーナは、痛む後頭部をさすって、立ち上がろうとした。


使用人達が声をかけてくる。


「大丈夫ですか?奥様。」


「奥様っ…」


「大丈夫…大丈夫よ。」


フラフラと立ち上がった途端。


パァンっと頭の中で何かが弾けた。


あら…私…どうして、こんな所で、あんなクズ男にいたぶられて大人しく暮らしているのかしら。


蘇ってくる前世の記憶。


ああ…そうだわ。わたくしは、帝国の女帝。メルディーナ・アルクド・ド・ジュエル

帝国の真紅の薔薇。氷の女帝。そんなわたくしが、何故、こんな所で、こんな目にあっているの?


思い出したわ。はっきりと。わたくしの前世を。

剣技に優れ、真紅の鎧で舞うその姿は、帝国の薔薇とも言われ、

容赦ない政治に見せるその強さは氷の女帝とも呼ばれて。

他国からは帝国のメギツネって言われ、悪口も言われたけれども…


メルディーナは立ち上がる。


廊下に設置されている大きな鏡に映る自分の全身を眺めて。


なんて、格好なの…。前世のわたくしは、それはもう美しく咲き誇る薔薇のようだったのに、

痩せて落ちくぼんだ目。青白い顔…。荒れた手に、色褪せたドレス。

前世では豊かだった黒髪も、今は短く結って、色気も何もありはしない。

髪が長いと、リカルドに引っ張られ、振り回されるから、長く出来なかったんだわ。


怒りに身が震えてくる。

居間から楽し気に笑うリカルドと、マリアの声が響いて。


許せないわ。ここはわたくしの家のはず…。何でわたくしが、駄目な女扱いで、

小さく暮らさなくてはならないの?


バンと扉を開けて中に入り、リカルドとその愛人を睨みつける。


「出ていって下さらない?ここは、わたくしの家。貴方は入り婿のはず。

離縁して差し上げるわ。どうぞ、今すぐに出て行って。」


リカルドは驚いたように、こちらを睨み。


「クズ女の癖に、狂ったか?俺がいるからこそ、この家は保っていけるんだろう。」


そう言うと、リカルドはこちらへ近づいて来た。


拳を振り上げてきたので、メルディーナはドレスの裾をめくり、右足を回して、思いっきりその腰を回し蹴りした。よろけて床に倒れ込むリカルド。


駄目ね…前は顔を蹴り上げる位、足が上がったのに…。体力が落ちているわ。


「何しやがる。」


「そうよ。クズ女の癖に。」



床に転がり、こちらを見てわめくリカルドの頬を容赦なく叩く。

そして、その顔を靴で踏みつけた。

ヒールで無いのが残念だわ。


「今まで良くも、わたくしに暴力を振るってくれたわね。」


ギリギリと靴でその頬を踏みつければ、リカルドは呻きながら。


「や、やめてくれっ。メルディーナ。」


マリアは腰を抜かして。


「そうよ。暴力反対だわ。」


「何が暴力反対よ。散々、わたくしに暴力を振るってきたのは、どこのどなた?」


思いっきり、リカルドの股間を蹴り上げれば、リカルドはうううううん、と呻いて、


「出て行って下さるわね?今日限り、離縁致しますから。この屋敷はわたくしの屋敷。

そもそも、貴方は入り婿。さっさと伯爵家にお戻りあそばせ。これからは、わたくし、メルディーナが、女公爵として、この家を継ぎますから。」


周りを遠巻きに見ている使用人達に。


「この二人を外へ叩き出しなさい。」


使用人達数人が、リカルドとマリアを拘束して、そのまま、外へ叩き出してくれた。


ああ、すっきりしましたわ。


ごみを片付けた所で、部屋に戻って、改めて自分の容姿を見つめる。


「さて、まずは…。この家の財政がどうなっているか調べて。

それから、もっと食べて身体に肉を着けないと、鍛えないといけないわ。

前世のわたくしは、腹筋が割れていたもの。これでは剣を振るえない。

お化粧にドレスの新調。髪も伸ばさないと…。」


化粧台の引き出しに、紅があった。

今まで着ける事も無かったけれども。


赤い紅を唇に引いてみる。


前世と比べれば美しい顔立ちではないけれども、化粧をすれば見られない事はないわ。

まずは夜会ね…。

前世の旦那は冴えない容姿の男だったから、今世は、最高の男を掴んで見せる。


メルディーナは、鏡の前で怪しげに微笑んだ。


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