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3話「ばか」

"ブクブクブク"


静寂な部屋でお湯が激しく沸騰している。


俺と愛莉は目を合わせたまま動かない。


"カァーカァーカァー"


カラスの鳴き声が聞こえる。


まだ動かない。


"パタパタパタ"


何かが飛び立つ羽の音が聞こえる。


そして俺が口を開く。


「んな訳ないよな。お前みたいな馬鹿が。」


すると愛莉は顔を真っ赤にして怒る。


「りくに言われたくないわ!ホントアイドルバカはウザい。」


その言葉が俺には『あいちゃん』を馬鹿にしているように聞こえていつもは無視する俺だが今回は違った。


「はぁ〜?お前にアイドルの何がわかる。確かに世間一般的にはなぁ俺みたいなやつ変人だと罵られる。

だがなぁ、やりがいがあるんだよ!

アイドル達はな、売れない頃でも必死に頑張ってなぁ。どんなにネットで叩かれようとファンには笑顔しか見せない。俺達の想像を超えるような努力をしているんだ!

そんな人の力になりたいとは思わないのか!

俺はMainがまだ結成したての頃から応援しているんだ!なぜだと思う?

それはな頑張ってたからだよ!

俺はいろんなアイドルを見てきたがあそこまで努力していたアイドルはMainが初めてだ!

そのMainを汚すようならどんなやつでも俺が許さない!絶対になあ!」


俺が長ったらしく語ると愛莉は下を向いたまま「バカ…」と言い部屋に走っていった。


俺は右手で頭をかく。


「やりすぎたなぁ…」


そう呟いた次の瞬間、下につけていた左手から高熱が伝わった。


「あつ!」


沸騰した水が小さな鍋から溢れ出ていた。


「やべぇ!」


俺は急いでガスを止め火を消す。そして火傷した手を水で冷やしながら考える。


「あとで謝るか…」


『謝る』というのは何年ぶりだろう。前は悪いことをしたら軽いノリで誤魔化していた。しかしさっきはさすがにやりすぎた。しっかりと謝らなくては…


愛莉が好きなチーズをカレーに混ぜ、いつもより丁寧に牛肉を切っていく。


"コンコン"


出来立ての特性カレーを持ち二階に上がると愛莉の部屋のドアをノックする。


「愛莉。さっきはそのー…悪かった。ほらカレーできたから置いとくぞ…」


脳裏には愛莉が部屋で泣いている姿を想像した。それが全くの勘違いだと知らず。



(まじでなんなのお兄ちゃん!私がMainの『あい』だって気づかれたと思ったら今度はベタ褒めしてくるし、ほんと恥ずかしい!)


愛莉は自室のベッドで枕を抱きながら顔を真っ赤にしていた。


「じゃあな…」


坴の元気のない声がドア越しに聞こえてきた。


愛莉は決心し立ち上がってドアに手をかける。




"ガシャ"


俺は驚いた。ドアが開いたと思いきや愛莉がものすごい上目遣いで顔だけ出し、こっちを見てきたのだ。


「な、なんだ?」


俺が聞く。すると愛莉は恥ずかしそうに言う。


「私が『あい』なの。」


「え?」


俺は訳がわからないと言った表情をする。


「だから!私が!Mainのリーダー『あい』なの!!」


「え〜〜!」


俺は顎が外れるくらい口を開いた。


「そ、そんなバカな。変な冗談やめろよ。」


すると愛莉は顔を引っ込めドアを完全に開く。


「…んなバカな…」


俺は愛莉の部屋にある大量の『Main殿』と書かれたトルフィーを目にし驚きのあまり倒れるのであった。

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