2話「カレーライス」
「ただいま〜〜はぁ〜疲れたぁ〜〜」
俺はどうにか夕暮れ前に家に着いた。
「って誰もいないか…」
うちの家庭はごく普通の4人家族で母親と父親、そして俺と妹という構成だ。
今、両親は理由があってかれこれ5ヶ月家を空けている。
その間、俺は妹の松本 愛莉と一緒にこの大きな家で暮らしている。
仕送りは月に2回。基本的に生活には支障はないが強いて言えば愛莉が全く家事の手伝いをしないことだ。
いつも学校に行かずどこかほかの所に出かけに行きそして夕方頃になると帰ってくる。
なので俺はこれから食事を作らないといけない。
ため息をつき、靴を荒く脱ぐ。
ゾンビの様な足取りで歩きながらもさっさと食事の準備を始めた。
今日の料理はカレーライスだ。
そういえば両親がいなくなって初めての晩御飯の時、確かそこら辺のコンビニのカレー弁当を買って食べたなぁ。
だけど1カ月ぐらい経って「弁当飽きた。」とか愛莉が言いやがって俺が作るはめになったんだっけ。
俺は別に料理が下手なわけではない。たぶん。ただ単にめんどくさいだけだ。
しかし愛莉は外では内気なメガネなのに家では生意気で一度何かを強請るとそれが叶うまで強請り続ける。うざいくらいに。
愛莉の容姿をここで説明しておこう。
まぁ俺のようなイケメン(自称)の妹だ。
世間一般的には可愛い(本当)。
低い身長の割には発達した胸(セクハラじゃないよ。)。
それに水色のメガネがチャームポイントだ(ロリコンじゃないよ。)。
「…ただいまー。」
噂をすれば…ドアが開く音とほぼ同時に疲れ切った声が微かに聞こえた。愛莉だ。
「お帰り。」
俺はそう言いながらレトルトのカレーを温める。
「今日のご飯は?」
愛莉はリビングのソファーの上に大きく座るとそう聞いてきた。
「坴特性カレーライスだ。」
冗談を言ってみたがいつも通り流される。
俺はじっと沸騰しているお湯を見る。大小様々な気泡が水面でたくさん破れ続ける。
ふと今日のライブの事を思い出す。
確かに目が合った気がした。しかもどこかで会った気もする。
俺は何度も思い出そうとするが思い出せない。
「・・く。りく!」
近くから聞こえた怒鳴り声で自分が呼ばれていることに気づく。
そしてカウンターを通して目の前にいる愛莉に目を向ける。
「何だ……よ…」
「何だってカレーそれ以上やったらドロドロになっちゃうよ!」
俺の耳にはその言葉は届かなかった。なぜなら気づいたからだ。愛莉と目があった瞬間。
「お前…あいちゃん…?」
「え……?」