11話「漬け物の変」
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「ど、どうぞ。」
愛莉は恐る恐る唐揚げをテーブルに置く。その唐揚げはちゃんと唐揚げになっており見た目も悪くはなかった。
「いただきます。」
俺は本気で頑張った愛莉に敬意を示すため背筋を立てた。そして唐揚げを一つ掴み口へ運び、噛んだ。
「うまーーーい!」
噛んだ瞬間、口の中に肉汁が広がる。また衣のサクサク具合も良く。箸が止まらない。俺は皿に盛られた唐揚げを全て平らげる。
「愛莉。これおいしいぞ。よくここまでできるようになったな。」
俺が素直に褒めると愛莉は恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「あ、ありがとう。2人とも…」
その時、2人は可愛さのあまり固まってしまった。そして遥が口を開く。
「も、もしかして…あなたあいちゃん?」
「「あ。」」
この後、遥にこの事は内緒と伝えた。なお、アイツはちゃっかりサインを貰っていた。俺はまだなのに…
「とりあえずあのダークマターだった唐揚げはどうにかなったが他はどうする。」
俺がそう聞くと遥が答える。
「漬け物で埋めちゃえばいいんじゃないかしら。確か漬け物作ってたわよね。」
「あぁ。それなら冷蔵庫の上の箱に入ってるぞ。」
なぜ冷蔵庫の上かという以前、床下収納に入れたらあの黒いヤツが漬け物の中に侵入してきたからだ。
冷蔵庫の上には換気扇があり常に風が吹いてるため移動させた。
なぜこんな説明するかって?それはこの俺が漬け物を愛してるからだ。だからヤツが一緒に漬けられてるのを見て俺は悲鳴をあげた。それはそれは大きな悲鳴を。
俺が過去の出来事を思い出している内に遥は漬け物が入った箱を取ろうとしていた。身長が足りないため椅子の上に立っていた。しかしそれでも身長が足りず指先だけしか届いていなかった。
一生懸命にやっている姿をジッと眺めていた次の瞬間。遥が漬け物を取ったと思ったらバランスを崩して後ろに倒れそうになる。
「「あ!」」
俺と愛莉の声がシンクロする。そして俺は咄嗟に動いた。
"バシャ"
箱の蓋が開き、中身が溢れる。しかし遥は無事だった。俺が下敷きになったのだ。
「っいたい!目に汁が!」
俺は仰向けに倒れながら目を押さえる。その腹の上に遥も倒れている。
「だ、だ、大丈夫?!」
遥はすぐにどいて声を荒げて言った。その表情は恐怖に染まっていた。俺は目を押さえながら遥の頭に手を乗せて言った。
「人を心配できるって事は大丈夫だって事だな。」
そして俺は立ち上がり水で目を洗う。
「で、でもどうしよう。漬け物がダメになっちゃった。」
遥はまだ暗い表情だった。
「任せろ。俺にいい案がある。」
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