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曖昧な6日目 2


誰かの声が聞こえた。 遠くでゆらゆらと揺れる声。

その声は私の頭上を通りすぎていって、現時と夢の曖昧な境界線に消えた。


ふわふわと、微睡んでいるのが何となく解った。 眠たくないと思っていたけど、やっぱり寝てしまったらしい。 薬のせいなのか、疲れているせいなのか。

でも、正直起き上がる気なんか、欠片もなかった。 何故なら微睡んでいるのが大好きだからだ(私がこの世で一番好きな瞬間は、あったかい布団の中でぬくぬく微睡んでいる時なのだ) 。

そんな曖昧な世界の中で曖昧さを噛み締めながら、ふと、気が付いた。


昨日あいつに好きって云われて、私否定的な事しか、云ってないんじゃないか、な?


あ、ヤバイ。


一気に覚醒した。 がばっと跳ね起きてから頭を抱えた。

そうだよ、うわどうしよう。 え、ナニコレ、私もしかして振ったことになっちゃってたりしちゃったりして?! え、この場合どうすれば? と1人であわあわしていると、小さく吹き出す音が聞こえた。


「……くっ。 お前、何1人百面相してんだよ……! あーおもしれ」

「え、や、ちょっと待って! なんで居るの! わ、私思いっきりパジャマ……!! 」

「あ? おばさんが入って待っとけって。 俺って信用在るから? 」

「な、なんつー腹の立つ……! 」


なんでこのタイミングでこんな事になるんだろうか。 ベットの傍までイスを持ってきていたらしい変態は、私の真横で足を組んで座っていた。

頭は寝癖だらけだし、顔も思いっきり寝起きだし、パジャマだし、寝起きだからちょっとはだけてるし。

ちょっとお母さん何してくれてるの貴方! とキレたくなってきた。 私はブツブツと恨み言を呟きながら、掛け布団を頭まですっぽり被って体育座りをした。 そしてまだ笑い続ける変態に背を向ける。 これを引き籠もりスタイルと名付けようと思う。 そしてまだまだ私の背後で笑っている変態に、我慢出来ずに思いっきり叫んだ。


「あ゛ーもう、早く出て行ってよ! こっちは病人なの。 女の子なの! 」

「今日出たプリントを持ってきてやってるっつーのに、なんつー暴言」

「私のが暴言ならそっちがやってるのは暴挙って云うんだよ! ばっかじゃないの、早くでてってば……!」

「嫌だ。 俺はまだ昨日の答えを聞いてない」


ベッドのスプリングが悲鳴を上げた。 私の背中には、確かな重み。

一瞬で塗り変わる、曖昧な世界。

でも、この曖昧さが壊れてきてることぐらい、きちんと気付いてる。

私が必死で守って手放さなかった世界にヒビを入れたのは、彼。


「云えよ」

「…………」

「気になって勉強どころじゃない。今日だって何食ったかすら覚えてない」

「…………」

「云えよ。じゃないと、今すぐ……食うぞ」

「え?お弁当を?」


ワントーン下がった声音にそんなにお腹が空いていたのかと申し訳ない気分になる。私が昨日曖昧に終わらせたせいでおばさんのお弁当が食べられなかったなんて申し訳なさすぎる。

私がそう云ったにも関わらず彼はピクリとも動いていないように感じられる。可笑しいな。お腹空いてたんじゃないのかな。

後ろを向いて確認しようとした私の頭にベシリと何処となく力なさ気に手刀が下ろされた。


「いったい!なんでそこで叩くワケ!別にお弁当食べたって良いし!育ち盛りじゃん?」

「お、まえ、本っ当に、ばっか・・・!」


私にずるずるともたれかかって、思いっきり溜息を吐いた奴は「云えよ」 ともう一度、何故か力無く繰り返してきた。

曖昧な世界。ヒビを入れたのは彼だけど、きっと、壊すのは、これを創った彼じゃない。


彼の創ったこの世界を、頑なに、怯えながら、手放さなかった、


「…………レイカさんに、嫉妬した」


私にしか、きっと、壊せないと思った。




やっと終わりが見えてきました?(何故疑問系)


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