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曖昧な4日目

初めて、貢がれてみました。


「なんでマックなの。 せめてモスでしょ」

「うるさい。 文句云うな」


ベシッと頭を叩かれて思わずよろける。「ちょ、私のアイスティーが! 暴力反対! 」と眉を顰めて抗議すると、アイツはお綺麗な顔を歪ませ余裕綽々で片眉を持ち上げ云った。


「ハ、元が元なのにそんな顔してると、更にブッサイクだな」


ほっほぉーう?


ちょっとした(此処重要) 不可抗力があって、席に座る前にヤツの足を軽く(此処重要、テストに出ます) 踏んでしまった。


「っっっってぇぇ……! お前、自分の、体重、わかってんの、か?! 」

「あ~ら、ごっめんあそばせ~ちょっと足がすべちゃって。 いや〜やっぱり床が綺麗だと駄目ね~」

「お、まえは! だからって脛を蹴るな! 痛い! 」

「ちょっとした不可抗力が」

「何処がだっ。 明らかに作為的かつ確信犯的だろうが! 」


恨みがましい目つきで睨んでくるイケメンに、店内の視線は集まりに集まっている。 オイオイ、なんで溜息吐いただけで盛り上がるんですかオネイサマガタ? コイツはそんなキャラじゃないですよー。 ちょっと絞ったら即捨てるようなクズ男ですよー。 と心の中でツッコミの嵐だ(そんな奴に惚れている1人のくせにに。 だなんてツッコミは、現在担当者が不在の為お答えできませんという事にしておこう) 。


思えばコイツに惚れて(いるのを自覚して) 『彼女』 というポジションに憧れ続け、早5年。 色んな女に(両手両足の数だけでは足りない程の女達に) 嫉妬し続けて早5年。

ある時は同級生に。 ある時は後輩に。 中学の頃には社会人に。 一番最近で云えばレイカさんに(見た事無いけど) 。 その前は後輩である中学生に。 とヴァリエーションには事欠かない。


だけど、コイツは『マイルール』とやらを設けているらしく『付き合うのは3ヶ月以内』だけらしい。本命できたら、どう、するんだろうか(チクリ、と胸が痛んだ。 こんな事、考えなければいいんだ。 消去! ) 。


コイツは付き合っている彼女の事を、かなり赤裸々に(かつ淡々と) 語ってきやがるので、私はシたことなんかないのに、かなりの耳年増になってしまった(そのせいでみんなから誤解されるんだよ! ソウイウ話題フッて来んな馬鹿! ) 。性格が悪いとか、センスが悪いとかだけなら良い。 それ以外にも大分語るのだ。 この男は! (あぁもう思い出しただけでも恥ずかしい! )


私がそれでどれだけ傷付いているかなんて、コイツは全く知らないだろう。

傷口からは血が溢れて、カサブタもできないくらいに、抉られているのに。


あぁ、それらよりも不可解なのは、どうして私がコイツの暗部を知っているというのに、こんなにベタ惚れなのかということだ!


「人間って、不可解なイキモノだよなぁ」

「はぁ? いきなりなんだよ」

「唯単にちょっと人生についての考察をしていただけですが何かー? 」

「ふぅん。 お前がそんな事を考えられるだなんて、驚きだな。 精々体重の事とか、あの似合わないコンビニの制服ぐらいなもんかと思ってたんだけどな」

「画像見せるな。 つーか消せコノヤロウ。 イヤイヤ、私だって気にしてるよ。 例えばお菓子の量減らしたりとかさ! 」

「もう手遅れだろ」

「ちょっと待てまだ平均維持してるから大丈夫だからってなんでそこで目ぇ反らす訳こっち向けコルァだからって哀れみの視線向けないでくれません腹立つんだよこのタラシが! 」

「良く一息で云いきったなぁ。 女の肺活量とは思えな、うわっ」


この憎いアンチクショウは私の不可抗力の一撃をサッとかわしやがった。 腹が立つのでアイスティーを一気にズズズズズッと啜る。


「人生を哲学してた女にしては、気品も何も感じない行動だな。 意地汚い」

「うるさい。 気品のない哲学者もいるかも知れないでしょうが」

「かもな。 ま、個人の自由だけど」

「ちょっと待てなんで私にはその個人の自由が適応されないのよ。私は立派な日本人ですっ!」

「はいはい、分かった分かった」


腹の立つ返答を返しながら、ヤツはテリヤキバーガーを食している。私もチーズバーガーにかぶりつく。 あぁ、体重が増えるー。 でもやめない。 だっておいしいと幸せだから!


もしゃもしゃと無言でハンバーガーを食しながら、コイツが彼氏だったら、どうなんだろう。 とアリエナイ妄想をしてみた。


多分、きっと。 私は逃げるんだろうなぁ。 似合わないから、釣り合わないから、って。でもそれでも離れられなくて、泣くんだろう、な(ヤバイ、なんかリアルすぎる) 。

抉られた場所が、ジクジクジクジク。 膿んで、ボロボロになって、ドクドクドクドク血を流し続けて。 でもそれを隠して。 絶対にバレないように、包帯を巻くんだろうな。

グルグルグルグル。 何重も。血なんか見えないように。 グルグルグルグル。


「てかさー、もうちょっと乙女を気遣って、カロリー抑えめなトコに連れてってくれてもイイじゃん? マックじゃムードもへったくれもないし」

「なんで俺にそんなモノを求めるんだよ。 面倒臭い。 大体お前にはマックがお似合いだよ。 っつーかマックしか考えられない。 It is cheap! 」

「ひど! そこは悪かったとか云って流してよ! てかなんでそんなに発音よく区切るの指さすな! 」

「ハハハ、悪い、俺って正直者だから、本当の事しか云え無くってさ」

「オイオイオイこのエセプレイボーイが何を云うか! 爽やかに笑っても無理だよ本性だだ漏れだよ。 第一、ついこの間までレイカさんに愛を囁きつつ、裏でウザイウザイほざいてたクセにさ! 」

「女には別」

「うわっ最低だこの男。 つーか私も女だよ乙女だよ」

「冗談は休み休み云え。 乙女はローキックとかしないんだよ。 それにな、考えてもみろ。 『好きだ』と云ったら相手は喜ぶし、俺にも金が入る。 一方素直に本心を出して、『お前なんて唯のカネヅルとしか見ていない』なんて云ってみろ。 向こうも悲しむ上に、俺には金が入ってこない。 此程意味のない事もそうそう無いだろ? これはな、ギブ アンド テイクなんだよ」


ズキズキズキズキ、ジクジクジクジク。


痛い痛いと、傷口が痛みを訴える。骨にまで達して、貫通してしまったんじゃないかって云うぐらい、痛んで。


『お前なんて唯のカネヅルとしか見ていない』


私も、なのかな。 私も、唯のカネヅルなのかな。 彼女なんてポジションには、絶対たどり着けないのかな? (あぁ、そんな事、もっと昔から知っていたのに)

傍にも、居られないのかな? (あの時にちゃんと、知ったはず、なのに)

あぁ、私は欲張りだから、なぁ(諦めなきゃ、いけない、のに)。

痛い痛い傷口が痛い。 あぁ、包帯を巻いて、隠さなきゃ。


だって、知られたらきっと、そこで終わりだから。 涙なんか見せちゃダメだ。 ささやかな幸せだって、得られなくなるんだ。 もう二度と、一緒に居られなくなって、しまうんだ。


「本当に、最低な、男だ、な」


隠して逃げなきゃ。 希望はないんだから。




「まぁ、カネヅルだけが目的じゃないけど」 と、彼が云った言葉の意味なんて、私は知らない。


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