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曖昧な6日目 3

次の次でラスト、です。取り敢えず頑張って完結させてみま、す。


ヒビの入った曖昧な世界。それを壊すのは、きっと私。


「嫉妬、した。 ううん。 違う、あの時私はレイカさんを見下した。 見下して、哀れんで、それでその上、嫉妬した。 ……自分が、汚いって、思った。 浅ましくて、薄汚くって、最低だと思った。 だから逃げて、でもって、なんか泣きたくなった」

「………………」


パタタ。と音がしてお気に入りの優しいオレンジ色をしたシーツの上に昨日の海の一部が出現した。 私のそれほど長くない睫毛の先から流れ落ちていくそれは、一粒二粒で止んでしまった。

きっと昨日私の海は無くなってしまったのだ。 きっと後ろにいる彼が全部飲みこんでしまったせいだ。

私は染みの付いた乱れているリネンを見ながら、両膝の間に頭を沈め、自分の中にある何かを吐き出した。 彼がずっと無言だった事が、少し怖かったけれど、その事に何処か安心して曲がっていた背中を少し戻してほんのちょっと後ろに体重をかけてみた。

感じるのは確かな感触。

あぁ、彼は今後ろにいて、私の話を聞いてくれてるんだ。 と、その事に何故だか胸がキュンとした。



「私、自分がどうしたかったのか良く解んない。 この曖昧な感じをずっと守りたかったのか、それとも壊したかったのか。 変わりたいのか、変わりたくないのか。 もう分かんない」

「……お前は、結局どうなんだよ。俺の事が好きなのか唯の幼馴染みなのか。それをはっきりさせてみろよ」


問われて、私は何故だか少し躊躇する。これで本当に、きっとこの曖昧な世界は壊れてしまうだろう。 欠片さえ残さず、記憶の中に、その曖昧さの居心地の良さだけを遺して。

曖昧な、私達の世界。 この世界の中では、2人だけの時は、彼は私のモノだと思えたんだ。

きっと今から始まる世界は曖昧なんかじゃなくってしっかりと支えられていて――きっともっと幸せで、本当に彼を自分のモノだって、胸を張って云えるようになれるはず。

だからこの世界は、私が壊す。今から云う、たった一言で。


「…………………………わ、たし、は……うん……」


さようなら、曖昧な私達の世界。


「好きだよ」


ぎゅっと、抱きしめられる。強くて、痛いと思った。でも離して欲しいとも、思わなかった。


彼との曖昧な全て。


机の上の大量のチョコレートも、オレンジジュースも、ハンバーガー・セットも、似合わないコンビニの制服も、手袋も、アイスティーも、チーズバーガーも、テリヤキバーガーも、レモンティーも、マフラーも、海も、全部全部、愛おしくて。

でもきっと、曖昧じゃなくても、これからの物全てが、これまでの物も、全てが、愛おしい。そう思う。彼となら、そう思える。


さようなら、曖昧な日々。




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