姫、日本行きに準備する
「ふっ!はっ!とわっ!!」
パチパチパチパチ
「流石です、姫様!剣の腕もかなりのものであります!」
「いえ、まだまだです」
「そんなことございません。さぁ、こちらタオルでございます」
「ありがとう、セバス」
「しかし、何故急に剣の稽古などを?」
「そろそろ日本に行かなくて行けませんから…」
そう私は今、魔境日本に向け準備をしている。
魔境日本…考えただけで震えがくる。
魔法がない世界…どんな原子的生活か予想ができない…。
魔法がなくては、火も起こせない。火は文明の証である。火がなくては武器も作れず、料理も作れない。
そういえば、あの勇者は武器を使うことはない生活と言っていた…素手で戦う戦闘方法なのが主流なのだろうか…。
空手や柔道という戦闘技法があるといっていた。武器を使うという概念がないのだ。
料理も生で食べることがあると聞いた…きっと火で物を焼くという文化がないのだろう…。
一番怖いのは、回復魔法である。怪我をしたらどうやって治療するのか話をシオンちゃんが聞いたらしいが、大怪我をしたら糸で縫いつけたりするらしい。
考えただけで怖い…。絶対に怪我をしてはいけない。
そのために私は今、全力で鍛えている。
「ふっ!はっ!とわっ!!」
日本行きの期限はもうすぐそこまで近づいてきている。
いよいよ今日が出発の日である。
セシリアちゃんが見送りに来てくれた。
「エリカ、他のみんなはもう出発して後は私とエリカだけだ」
「ええ、シオンちゃんもサーシャさんも昨日会いに来てくれました。他にもアイリスちゃんやゾーイちゃんも忙しいのに気を遣ってくれました」
「そうか、では私からはこれを送ろう!」
セシリアちゃんは腰から一本の剣を取り、私に渡した。
「この剣って!!名剣エンデバー!!いいの!?セシリアちゃんのお気に入りの剣じゃなかった!?」
「いいんだ。本当なら私が行くはずだったんだ。でも私は日本という土地に行くの怖気づいてしまった。結果、シオンの提案したくじに逃げてしまった。そのせいで友であるエリカに迷惑をかけてしまった。これは、私のけじめなんだ受け取ってくれ」
「セシリアちゃん…」
セシリアちゃんは責任感が強い人だ。今回の勇者召喚では帝国が率先してやったことからなにか思うことがあるのだろう。
「わかった…ありがたく受け取るね…」
「ああ、エリカ達者でな…」
セシリアちゃんはそういうと去っていった。
勇者の世界訪問は行ったきりでなく、半年を目安で報告会ということで戻ってくることができる。
半年間生き延びれば後は体調不良でもいって、異世界行きを断ってりする。半年間さえ生き残れば後はどうにでもなる。
セシリアちゃんがくれた名剣エンデバー。
シオンちゃんがくれた魔石銃。
サーシャさんがくれた各種ポーション。
アイリスちゃんがくれた痺れ薬。
ゾーイちゃんがくれたナイフ。
他にも魔導書、弓矢、アクセサリー、食材…etc
みんなからの気持ちがうれしい。
みんなからの力があればどんなところでも私は生きていけると思う。
かかってこい!魔境日本!
あの勇者も私の完全武装を前にして後ずさりしている。勝った!異世界行き勝利である。
「サーチ エリカ姫の危険物」
「?」
勇者が何か呟いている。
「エリカ姫、まず武装の解除をお願いします」
「!?」
私は生きて帰ることができるのだろうか…。