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Alice to Teles ~外道勇者と親バカ魔王と魔王の娘とそのペット~  作者: 群青
イスト大陸編 ~グランディア王国~
7/70

第6話 ヴァルゲア3大陸


「う~~~…… あまり眠れなかった……」


 見れば昨日買った服を着たまま寝てしまったようだ、そりゃ寝苦しいハズだよ。

 ただでさえ胸の重量がある上に締め付けられていたら当然だ。


 ポヨン♪ ポヨン♪


 うん、いい感触だ。

 明日からは寝る時は全裸になろう。



《 ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ーーーーーーー!!♪ 》



 寝起きですっかり忘れてた……

 ちょっと胸を触っただけで朝っぱらから魔国国歌が斉唱される、マジでウルセー。


 疲れが抜けきってないからもう少し寝ていたいトコロだが、今日もやることはたくさんある。

 顔洗って朝飯食いがてら情報収集もしてしまおう。



―――



「おはよう!」

「オハヨ……ゴザイマス」


 オバちゃんは朝から元気だ。


「朝食は今用意してるから好きな席に座って待ってて」

「はい…… あ、あの女将さん」

「ん? なんだい?」

「変な質問しますけど…… ココってドコですか?」

「はぁ?」

「なんて国のなんて街ですか?って意味です」

「変なこと聞く娘だねぇ、ここはグランディア王国の外れアインの街だよ」


 …………


「グランディア…… 王国?」

「どうした? なんか顔色悪いけど?」

「いえ…… なんでもありません……」

「?」



―――



 カランカラン



『やっと出てきやがったかエロガキ! お前マジ殺すぞ!!

 …………って

 なんでそんな暗い顔してるんだ? アリスたんの胸揉んだクセに?』


 宿を出てすぐに店の前の階段に力なく座り込んでしまう。


「暗くもなる…… ここ、グランディア王国だってさ」

『な……なんだと? その…… それがなにかマズイのか?』


 魔王はどうやら事の重大さが理解ってないらしい。


「お前…… グランディア王国がドコにあるか知らないのか?」

『あ~…… 下等な人間の国家のことなど知らん!』

「下等なのはお前の頭だ、地理も知らないでなんで世界征服とか言い出したんだよ? このバカ殿」

『それヤメロ! なんか…… なんかヤダ!』


 地理もろくに知らないバカ魔王のために、我々が暮らすヴァルゲア3大陸について説明してやる。


 ヴァルゲア3大陸とは、西の「エスト大陸」東の「イスト大陸」そして中央の「アム大陸」の3つで構成されている。

 分かりやすく言うとその3つの大陸が「N」の形に並んでいるのだ。


 グランディア王国は「N」の右上の位置にあり、魔国は「N」の左下の位置にある。

 要するに3大陸で最も遠い場所が出発地と目的地になってしまったというワケだ。


『えぇ~…… それでココから魔王城までどれくらい掛かるんだ?』

「一般人では辿り着くことは不可能、冒険者でも順調に進んで……2~3年かなぁ?」

『おまっ!? ふざけんなよ!? そんなの認められるか!!』

「そんな事は言われなくても判ってる、だからナニか良い方法はないかと考えてるんだけど…… 今のところロクなアイディアが浮かばない。

 それどころかグランディア王国から無事に出られるかすらアヤシイ」

『はぁ? なんでだよ! アリスたんが美しすぎてどっかの変態貴族に捕まるからか!?』

「確かにその可能性もなくもないケド、もっと根本的な問題がある。

 グランディア王国南の国境は巨大な運河が流れていて、渡れる場所はシーザー大橋一箇所だけ。

 そこの通行料が一般人だと60万ディル掛かる」

『ふざけるな!! 何だその金額!? 暴利過ぎるだろ!!』


 仕方がないんだ、グランディア王国は前大戦で唯一最後まで残った人類の領域だった。

 魔国から一番遠いにもかかわらず、今でも防衛の意識が非常に高く人々の出入りも厳しく制限されている、そしてこのバカ高い通行料も軍備強化のために必須なんだ。

 つまり(先代)魔王が悪い。


『待てよ? もしかしたら冒険者ならもっと安く通れるんじゃないのか?』

「そうだなぁ…… 確か30万ディルくらいだったかな?」

『ずいぶん差があるな、しかしだったら冒険者になるべきだろ? 一般人じゃ辿り着けないんだから』


 …………


(いいのか? アリスの身を危険に晒しかねないぞ?)

『わかっている、しかし背に腹は代えられない、それにアリスたんには…… あ~…… 他の追随を許さない魔法の才能がある!!』


 確かにアリスは魔法のエキスパートだ、魔力量だって底無しかよってレベルだ。


(しかし魔法使いが1人で冒険者をやるのは厳しい)

『ナニを言う! お前だって1人で魔王城に突っ込んできただろ? お前に出来ることがアリスたんに出来ないハズがない!!』

(前衛と後衛では意味が違う、それにアリスは体力がない、1人だと絶対に詰む)

『うっ! だ……だったらパーティーを組むしか無いだろ? 1人で無理なら仕方ない……

 ただしパーティーメンバーは女性限定だ! 男女混合パーティーなんてお父さんは許しませんよ!?』


 女パーティーは俺も賛成だ、こんな所だけ気が合う…… なんかチョットやだなぁ~。


(お前の言うことは正論だ、だがそれは無理だ)

『なんでだ!?』

(パーティーは集団だ、パーティーみんなで意志の統一をする必要がある、1人で「魔王城に行きたい」なんて言って誰が付き合うんだよ?)

『うぐっ!』

(俺はそれが煩わしいから1人で魔王城へ向かったんだ。

 一応エスト大陸まではパーティー組んでたんだぜ? 男女混合パーティーだったけど、そこで別れた)

『誰も付いて来てくれなかったのか? だろうな! お前人望無さそうだもんな!』


 ウルサイ。


『だが安心しろ? 今度の旅だけは我が最後まで付き合ってやる。

 寂しいボッチ勇者に愛の手を!』


 ここぞとばかりに煽ってきやがる、ボッチに関してはお前だって人のコト言えないんじゃないの?

 魔王が愛を語るとは世も末だな。


(この先どうするかは別にしても金を稼ぐ必要がある、冒険者登録はしておくか)

『男とパーティー組むなよ! 絶対だぞ!』

(ウルサイ、それよりも…… 魔王プラトンよ)

『む? なんだ改まって?』

(アリスを無事に返して欲しければ魔法を教えろ)

『………… それが人にモノを頼む態度か?』



―――



――





 冒険者協会(ぼうけんしゃギルド)


 一般的にギルドと呼ばれているこの組織は、最初の勇者シーザー・サロスが魔王大戦時に魔族への対抗手段として発足させたものである。

 魔物と戦える力がある者を積極的に集めるため、そして戦い方を教え広めるための教室の側面もある。

 また、ランクによって色々お得な特典が付くため、家業がない者は「取りあえず冒険者になっておく』という者も多い。


 ギルド…… 俺も8歳で登録してからずいぶんとお世話になったものだ。


『ギルド……ねぇ? ヘッ!』


 …………


(なんだよ、見た目愛玩動物のくせになんで急にヤサグレてるんだよ?)

『ここにいる奴らの最終目標は我を殺すことなんだろ? そして魔族を殺しまくってるんだろ? 胸糞悪いわ!』

(あぁ、魔物退治を生業にしている奴らは多いけど、最終目標に魔王殺しを据えてる奴は殆どいないぞ)

『そうなのか?』

(大抵は口だけだ、大体実力が伴ってないからな)

『フッ…… 下等な人間どもめ! 我に恐れをなしたか!!』


 いや、お前その下等な人間の俺に半殺しにされてただろ? つまりお前のほうがもっと下等ということだ。

 小動物の姿で必死に虚勢を張る魔王があまりにも惨めなのでツッコミは控えておく。




 キィ……



 微妙に建てつけの悪い扉を開けてギルドに入る、すると……



 ザワザワ―――



 なんかいきなり注目浴びてる。


『おい、見られてるぞ? 誘拐されないように注意しろよ?』

(この感覚、懐かしいな…… 俺も初めてギルドに行った時はこんな感じだった)

『ウソつけ』


 アッサリ嘘吐き認定された、でもウソじゃねーよ、8歳の少年がギルドに登録すれば注目浴びるんだよ。



 周囲の視線を無視して一番奥のカウンターへ行く。


「ようこそ♪ あなたの暮らしに寄り添う冒険者協会(ぼうけんしゃギルド)・アイン支部へ♪

 本日はどういったご用向きでしょうか?」

「冒険者登録をしたい……んですが」

「畏まりました♪ それではこちらの書類の太枠で囲われた箇所に必要事項をご記入ください♪」

「は~い、えぇっと……」


(あ……)

『なんじゃ?』

(アリスのフルネームってなんて言うんだ?)

『そんな事も知らんのか? ど~しよっかな? 教えて上げよ~かな? 知りたい?』


 イラッ


(別に偽名でもイイか)

『あー! 分かったよ、教えるよ! アリスティア・アグノス・スキアーだ!』

(最初から素直に教えろよ、アリスティア・アグノス…… あ)

『今度はなんだ?』

(魔王のフルネームは?)

『………… お前……ホントに勇者なの? マジで? 我の名前知らないの? 名前も知らないクセに我のコト半殺しにしたの?』

(殺すつもりだったんだから相手の事なんか詳しく知る必要ない、それで? 名前は?)

『いいだろう、教えてやる! そして魂に刻みこめ!! 魔王プラトン・スクリロス・スキアーの名を!!

 いつの日かお前を殺す者の名だ!!』


 う~ん……


(やっぱり偽名にするか)

『なんでだよ!! テメェおちょくってんのか!?』

(いやぁ、お前とファミリーネームが一緒なのが良くないんだよ)

『漆黒の影を意味する魔国に伝わる由緒正しき名だぞ!』

(尚更悪い、魔王の親族だってバレる、「お前の名字魔王と一緒~♪」とか言われてイジメられるんだぞ? 石投げられてアリスに傷でも付いたらどうする?)

『石投げた奴の一族郎党皆殺しにする』

(行く先々でそんなコトやってられるか)

『ぐぬぬ……ッ!!』

(ファミリーネームだけ変えればいいか、偽名は…… ティザーで……)

『ティザー?』

(うん、俺のファミリーネーム、俺の嫁ってコトにしとけばいいか……)


『させるかぁぁーーーっ!!!!』

(あっ!? こらっ! 暴れるな!!)

「ナニやってるんですか? 暴れないで下さい!」



―――



 ドタコン魔王の所為で登録者名がアリスティア・アグノス・ティアになってしまった……




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