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Alice to Teles ~外道勇者と親バカ魔王と魔王の娘とそのペット~  作者: 群青
イスト大陸編 ~グランディア王国~
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第4話 アインの街


 アインの街は2m程の壁に囲まれた街だった。

 城壁と呼ぶには少々頼りなさすぎる気がする、てかこんな低い城壁初めて見た。

 俺ならこれくらい簡単に飛び越せるんだが、アリスの身体では無理だ。


 仕方ないので壁に沿ってしばらく歩くと門が見えてきた。

 人が並んでる…… 城塞都市ではよく見かける光景だ、街の住民以外が入る為には保証金が必要になる街が多い。

 列に並びながら見てみたが、どうやら1000ディル必要らしい。


『おい、街に入るのに金が必要なのか?』

(そうだよ、一般常識だぞ? 知らないのかよ?)

『し……仕方なかろう! 我は魔国から出たコトないんだから!』


 親子揃って引きこもり……か。


『つーか金は?』

(心配ない、ちゃんと山賊から奪ってきた)

『それが勇者のセリフか?』


 山賊を倒したら金とアイテムがドロップしたから拾ってきた、何も間違ってない。

 ただし山賊がどっかから盗んできた財宝には手を付けなかった、運ぶのに使ってたテーブルクロスは服にしちゃったし、あんな重くて大きいモノはアリスの体力じゃ運べない、だいたい盗品を売りさばいたら山賊の仲間と思われかねないからな。

 だから金貨・銀貨・銅貨の現金にしか手を付けなかった、そこら辺は抜かりない。


『勇者よ、街に入る前に言っておくべき事がある』

(あ? なんだよ、自殺でもしたくなったのなら好きにしてくれ)

『なんでだよ! そうじゃなくて言葉使いに気を付けろ!』

(あ?)

『アリスたんは紛うこと無き美少女だ、その美少女とお前の言葉使いの親和性は最悪と言わざるを得ない、もしアリスたんがお前みたいな話し方をしてたら…… お前どう思う?』


 …………


 確かに最悪だ、性格の悪さが滲み出てる気がする…… せっかくの美少女が台無しだ。


(だからって俺に女言葉を使えってか?)

『そこまでしろとは言っておらん、せめてボクッ娘レベルにまで抑えろと言っている』


 なんでお前がボクッ娘なんて言葉を知っている? 魔族にも需要があるのかよ?


(しかしなぁ……)

『そっちの方が絶対にウケが良い、唯でさえ目立つ容姿をしてるんだ、ナニかと都合が良い事もあるだろう、更に我の心のHPを削られずに済む! 良いコト尽くめだ!』


 最後のが本音か、アリスの顔で罵倒し続ければ魔王の精神はいつか死ぬらしい。

 いや、死ぬ前に新たな性癖に目覚めそうな気がするが……


(仕方ない…… 確かにアリスの顔ならその方がメリットが有りそうだしな……)

『ヒャッホオォーイ!! これでゲス勇者の顔を思い出さずに済む!!』


 ………… コノヤロウ。




 そうこうしている内に順番が回ってくる。


「次、ん? お嬢ちゃん一人かい?」

「は……はい」


『コラ! 笑顔が引き攣ってるぞ! アリスたんの笑顔は100万ディル!!』


 うっさい!


「保証金は……まだ子供だから500ディルだ、持ってるかい?」

「あ、はい」


 500ディルを手渡す…… あ、ちょっと手が震えてる。


「よし、ではコレが入街証だ、街を出る時にも必要になるから失くさないようにな? 失くすと500ディルが返ってこないから」

「はい…… ありがとうございます」


 入街証を受け取り、ようやくアインの街に入る事ができた。

 その頃にはすっかり夕方になっていた……



―――



 街は夕方特有の活気に満ち溢れている。

 家路を急ぐ人もいれば、夕飯の買い出しをしてる奥様もいる、犬の散歩をしてる爺さんもいれば、いまだに遊びまわってる子供もいる。

 屋台なんかも多くあり、少しずつ席が埋まってきているようだ。


 ずいぶんと平和な街だな…… 魔国からはかなり遠いのかも知れない。


(さて、あまり時間も無いし、さっさと次の行動に移らないと……)

『うむ、まずは何は無くとも……』


(『服屋だ!』)


 勇者と魔王の心が初めて一致した瞬間だった。




 人でごった返す商店街を服屋を求めてさ迷い歩く。

 すれ違う人々からチラチラと視線を向けられる……

 絶世の美少女というのもあるが、恰好がみすぼらしいのがよろしくない、早くまともな服を手に入れなければ!


『おい勇者よ! アレはどうだ? アレも服屋だろ?』


 魔王が見つけた店は冒険者用の旅具を扱う店だった。

 ちょっと高級志向だが…… どのみち魔王城まで旅が必要になりそうだしアレでいいか。


 さっそく店に入る……と、その前に……


「キュル?」

「ここ高級店だから、ケダモノは入店禁止です」

『お……おい! ちょっと待て!』

「動物は動物らしくお外で遊んでてください」


 ポイ


『あーーー!!』


 小動物を放り投げ、その隙きに入店。


『ま…待てぇーーー!! お前にアリスたんのコーディネートを任せるとか嫌な予感しかしない!! 我に監督させろーーー!! フリフリ! フリフリをぉぉぉ!!』



―――



 店の前で小動物がキューキュー騒いでいるが無視する。

 だいたい年頃の娘の服を買うのに父親がついて行ったって面倒臭いことを言うだけに決まってる、あのドタコンならミニスカ禁止とか言い出しかねない。


「いらっしゃいませ~、本日はどういったものをお探しでしょうか?」


 高級店だからかな? 店員が速攻で寄ってくる、いつもなら鬱陶しいが今日は実に頼りになる。


「えっと、旅装一式と靴を…… それと…… 下着を何セットか……」

「かしこまりました、それでは奥へどうぞ、まずはサイズを測ります」


 うんうん、俺もアリスのサイズについては常々気になってたんだ。

 店員さんは俺のみすぼらしい格好を気にも留めてない感じで対応してくれた、さすがプロ。




 当然のことだが俺はブラの着け方なんか知らない、なので店員のお姉さんにしっかりレクチャーしてもらった。

 ついでにアリスの胸の感触もしっかり堪能させてもらった、スッゲー柔らかかった♪



《テレスはブラのホックを片手で外すテクニックを覚えた!》



 いつかアリスに披露したいものだ、その為にも元の身体に戻らなければ。




「旅装備はどうしましょうか?」

「そうですね、できるだけ軽くて丈夫で汚れに強い素材の……あ」

「?」


 男の時ならそれでいい、しかし今は美少女だ、美少女は旅装備も可愛くあるべきだ!

 そうだな…… ここは俺の趣味を爆発させてみるか?


「すみません、今言ったことは忘れてください」

「はい」

「こういうのはありますか? え~とですね……」



―――



――





「キュゥゥゥゥゥ~ン……」


 店の前では奇妙な小動物が切なげな鳴き声を上げながらドアに縋り付いている……

 おかげで誰も出入りできない。



 カランカラン♪



「ムギュッ!」

「うん?」


(なんだこんな所にいたのか、お前の大好きな仔猫ちゃんでも見つけて交尾でもしてくればよかったのに)

『誰が仔猫ちゃん好きだ!!』

(違うのか? ロリコンなのに?)

『誰がロリコ……ン!?』


 魔王は俺を見て怒鳴るのをヤメた、ふふん♪ 見惚れてるな?

 俺のコーディネートは全体的に白と黒を基調としたゴスロリ調にしてある。

 白いシャツにコルセットを付けてアリスのロリ巨乳ポテンシャルを更に引き上げた。

 一応ロリコン魔王の希望に沿ってフリルを大量にあしらってある。

 あと魔法のエキスパートであるアリスには大きなつば広三角帽子、コレは譲れない。

 コンセプトは《童貞を殺す服》だ、鏡を見て俺も危うく死ぬトコロだった。


『お…… おぉお……』


 しかしミニスカートってのは初めて履いたが…… 見るだけなら幸せになれるが自分で履くと頼りないしちょっと恥ずかしいな、子供の頃履いてた半ズボンの方がまだ安心感があった。

 一応ニーハイにしてみたが絶対領域部分が妙にハズカシイ。


『おぉぉぉお……』

(どうだ? 可愛いだろ? 個人的にはかなり良いコーディネートだと思ってる、まぁお前が気に入ろうが気に入るまいが、ココは俺の趣味を優先させて貰う……)


『うおおおおおおぉぉぉぉぉぉおお!!!!!』



 ビクッ!?



「な…… なに?」


『素晴らしい!! 素晴らしいぞ!! お前のようなクズでゲスでカスな人間にも何か一つくらいは良い所があったんだな!

 お前のコーディネーターとしての才能は我を遥かに凌駕しておる!!

 悔しいが我の完敗だ、お前がナンバーワンだ……!』


 素直に褒められんのか? 思いっきり罵倒してたじゃねーか。

 小動物は涙を流しながら右前足をまっすぐ前に突き出してる、多分親指立ててるつもりなんだろう。


 しかし少々やりすぎてしまった気がする、盗賊から奪った金が60万ディルほどあったのだが、アッという間に10万ディルを切ってしまった。


 服にこんなに金掛けたの初めてだよ。




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