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第29話 トレオ第二衛星国


― トレオ第二衛星国 ―


 ゴブリン集団の襲撃から3日後、俺達はラビットランド~テレジア間乗合馬車の中継地点、トレオ第二衛星国にやってきた。


 トレオ第二衛星国はかつて小規模ながら独立国家を営んでいた。

 しかしこの周辺は岩山や深い森が多く、昔から盗賊たちがたくさん巣食う土地柄だった。

 周辺国は年に一回は盗賊に襲撃され、小さな国はなかなか発展できない、そこでこの近隣では最大の……というより、都市国家群最大国・テレジア王国の庇護下に入ることを選択した。


 テレジア王国を中心に、この辺りには幾つもの小規模な国が存在するが、それら全てがテレジアの属国のようなものだ、ここトレオ第二衛星国もそんな国の一つだ。

 この国はラビットランドとテレジアのほぼ中間点にあり、ここから南西に馬車で1日ほど行った場所にトレオ第一衛星国、そこから更に2日ほど行くとテレジア王国へと辿り着く。


 国の面積はハオネス王国の5倍くらいだろうか? 都市国家群の中ではかなり小さい国だ、だが城壁や門は兵士によりしっかりと守られている、あれがテレジアの駐留軍だな。


 馬車は門をくぐり町へと入った。


「さて、今日はこの国で一泊する、我々の宿は予約してあるんだが、さすがにお嬢ちゃんたちの分はないんだが…… どうする? 俺達と同じ宿に泊まるか? もしそうなら少しくらいなら口利きも出来ると思うが……」


 御者のおっちゃんがそんな提案をしてきた。

 有り難いお話ではあるが、客層を見る限りかなりランクの高い宿に泊まるのは間違いない、いくら値引きしてもらっても俺達の懐事情では少々厳しい。


「いえ、一応他の宿も見てみます、もしいい宿がなければお願いすることになるかもしれません」

「そうか、俺達は「明けの金鷲」って宿に泊まるからな、それと明日は朝9時に南門に集合してくれ」

「はい、ありがとうございます、明日もよろしくお願いします」


 その場でフィロと2人で馬車を降りる。


「さて…… どうしようかアリスちゃん、もう宿探す?」

「ん~…… その前にギルドに行きたいんだけど」

「ギルド? 今から依頼受けるの?」

「そういうワケじゃないんだけどね。

 戦争の事とかぜんぜん知らなかったから、一応情報だけでも知っておきたいんだ、これから向かう先だからね」

「あぁ~、うん、そうだね」


 転ばぬ先の杖を用意したいんだ、もちろん戦争に関わる気は無いが……



―――



 魔王はイボ痔帝国とは……

 周辺に掃いて捨てるほど居た盗賊団の一つに過ぎなかったようだ。


 いくつかの盗賊団を一つに纏め、いつの間にか壁を作り国を創っていた…… テレジアの人たちは気づかなかったのだろうか?

 狭い国土に現在は推定1000人ほどの国民が居ると思われている……


 イボ痔帝国軍は盗賊を中心に500人規模、場合によっては全員戦闘に出てくるかもしれないので最大1000人。

 ソレに対してテレジア軍は騎士をメインに義勇軍を合わせて2000人規模…… 戦力差は2倍、普通に考えれば勝負にならない。

 だが痔主は魔物使い(テイマー)だ、どれだけの魔物を従えているかはわからない、もっともこの辺でテイム出来るのはゴブリンだけ、それもそんなに多く生息しているわけじゃない、せいぜい1000匹とかその程度だろう。

 南の方にいけばオークなんかも生息しているが…… いや、今はもういないか。


 だがいくらテイムしていても自国内(壁内)に配備するだろうか?

 完全に統制が取れていたとしても、ゴブリンと一緒の所で暮らすのは俺ならゴメンこうむる。

 だってアイツら強烈にクサイし。


 しかし話を聞けば聴くほど不可解だ、こんな小国が大国のテレジアに喧嘩を売るということが……

 もしかしたら切り札みたいなものを用意しているのかもしれない。

 そしてテレジアもその可能性に気づいている、だからこそ捨て駒として使っていい義勇軍を募集したんだろう。


 なおさらこの戦争には参加するべきじゃないな。

 上手いこと立ち回り、テレジア王国をスルーするんだ。


「ねぇアリスちゃん」

「ん?」

「ボクね、勇者としてこの戦いに参加したほうが良いんじゃないかって思うんだけど…… どうかな?」


 フィロが面倒臭いことを言い出した、反対するのは簡単だが理由くらいは聞いておくべきか……


「ここで活躍すればテレジア王国がボク達の旅を支援してくれるかもしれないよ?」


 確かに…… その可能性はある。

 でも……


「私は反対……かな」

「どうして? ヒトを殺すの…… やっぱりイヤ?」


 ヒトと戦争するのならヒトを殺す覚悟が必要だろう……

 だが俺は盗賊の殺生なんか別にどうでもイイ。


「あくまでも持論なんだけど…… 勇者の使命は魔王を倒すこと、ヒト同士の争いごとに進んで介入するべきじゃないと思う。

 もちろん困ってる人がいる以上、それを取り除くために勇者が介入する事は間違いじゃないと思うけどね」

「う……ん」


 偉そうに言ったが、要は費用対効果の問題だ。

 戦争に参加する労力に見合うだけの報酬が得られれば参加する。

 こき使われた挙句、大した対価が得られないなら参加する意味はない。

 何と言ってもテレジアが義勇軍を募ってる辺り報酬は期待はできない。


 実際に(テレス)はよほど稼ぎにならない限りヒト同士のトラブルには介入しなかった、結果だけ見ればそのおかげで俺は他の勇者候補をぶっちぎって魔王討伐を果たした。

 決してコミュ障だからヒトと関わりたくなかったワケではない…… 本当だ。


「とは言え『フォルティス』のリーダーはフィロだから、フィロがヤルと言えばソレに従うよ」

「アリスちゃん……」


 介入するな~! 介入するな~! 介入するな~! 介入するな~! 介入するな~! 介入するな~! 介入するな~! 介入するな~! 介入するな~! 介入するな~!


 念を送ってみる。


「うん、アリスちゃんの言う通りかもしれないね、ボク達の旅の目的は魔王を倒すこと、先を急ごう」


 よし! それでこそ念を送った甲斐があるというものだ!

 フィロがチョロくって将来が心配だよ。



 その後……

 ギルドで依頼を確認するが……


―――――――――――――――――


 従軍依頼Lv.D


 「魔王はイボ痔帝国と戦争」


 キミも正義と平和のために我々と共に魔王はイボ痔帝国と戦おう!


 依頼者:テレジア陸軍兵務科

 達成報酬:感謝状

     :記念メダル


―――――――――――――――――


 掲示板は義勇兵募集の張り紙で埋め尽くされていた。

 ここはテレジアの庇護下にある国、無理矢理ギルドの依頼を止めて冒険者を募っているのか……


 報酬が驚くほどショボい……


 もしかしてテレジアって財政がヤバいのかな?

 勇者として活躍しても支援とかは期待できそうに無いな…… やはりスルーに限る!


 ちなみにギルドカードの更新をしたら、(アリス)のレベルが13に上がってた。


 その後、ギルドにある冒険者用の大部屋に泊まる、一人一泊1000ディル、大人数での雑魚寝部屋だった。

 壁際をキープしてすぐ隣にフィロに寝てもらう、もちろんそれだけで危険を回避できるとは思って無い、そこでティッペに寝ずの番をしてもらった。

 一晩中、男冒険者の悲鳴が聞こえていた気がする…… きっとティッペが鼻に噛みついたんだろう、大活躍だな。

 一応(可視化の)結界は貼ってあったから冒険者たちに何かできたとは思えないが……


『アリスたんの天使のような寝顔を男共に晒すワケにはいかん!』


 ……と、いう理由で一晩中ガンバっていたらしい、寝顔くらいイイじゃねーか…… とも思ったが、アリスの寝顔は俺が将来独占する予定だ、他の男に見せるのは確かに勿体無い!

 魔王GJ! お前はこれからも完徹でアリスの寝顔を守ってくれ!



―――



 翌朝……


 南門で乗合馬車と合流する。

 ここから2日ほど行くとトレオ第一衛星国、その先がテレジア王国だ。

 王国には少し立ち寄るだけですぐに出発するつもりだ、戦争イベントは全力でスルーさせてもらう。

 場合によってはココでオブシディアン・ナイフを売る予定だ、しかし馬を買うほどの金額にはならないだろう。

 南部王国連合の田舎に行けば或いは…… そこは行って見てからだな。


 …………


 なんて考えていたんだが、やはり甘すぎたらしい。

 勇者とはトラブルに巻き込まれる生き物だと言われている…… 今の俺は勇者じゃないが、残念なことにすぐ隣にはフィロがいた。


 回避しようと思っていた戦争イベントに思いっ切り巻き込まれる事になった。




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