第22話 ダンジョンの街
フィロと二人ノンビリと歩きながらラビットランドへ向かう。
このペースなら夕暮れまでには辿り着けるだろう、それにこのペースならおんぶも必要ない……と、思う。
「ちなみに世界3大の残りの2つってどこなの?」
「お? アリス君イイ質問だね?」
………… フィロ先生、キャラ変わってます。
「1つはエスト大陸の魔国にあると言われている黄泉の大穴「地獄」!」
(地獄……)
『おお、アレが3大の1つか』
「一説には地下1000階層まであり、最下層は悪魔界に繋がっている……なんてウワサもあるね」
『事実だ、確かにあの穴は悪魔界に繋がってる、ただし階層は666階だがな』
(!? お前…… まさか潜った事あるのか?)
『まさかぁ~、我が召喚した悪魔が教えてくれた』
(あぁ…… まぁそうだよな)
『我の嫁の実家だし……』
!?!?
(え? お前…… え?)
『後妻だ…… 我もホントは嫌だったんだが、悪魔との付き合いで仕方なく……な』
あぁ例の…… そういう事ね、なんかコイツって中間管理職っぽいなぁ、もしかしてバックに大魔王とか居るんじゃねーだろうな?
『ホントだぞ!? 我は今でもネリスたん一筋だ!』
そしてこの堂々たるロリコン宣言だ…… ここまで来るとむしろ漢らしい。
『だって嫁は常にカリカリしててコトある事に怒ってるし、金遣いは荒いし、炊事洗濯一切しないし、ゴミ出ししてもアリガトウの一言も無いし……』
ん?
『ハァ~~~…… 近年ではブクブク肥え太るし、掃除洗濯も全部我がやる事になるし、最近では部下たちも我より嫁の言うコト優先して聞くようになってきてるし……
ハァ…… なんで結婚しちゃったんだろう……』
オカシイな? 俺の思い描いていた魔王像と、コイツの語る魔王の実体はあまりにもかけ離れている……
もしかしてコイツって魔王じゃ無くて魔王城に勤めてたサラリーマンかなんかじゃないのか?
あとさっきの漢らしいってのは撤回する、全然 漢らしく無かった。
4低みたいな奴だな。
「そして最後の1つがアム大陸の中央、世界の中央に存在する特殊ダンジョン「天獄」ね」
「あぁ天獄ね、ん? 特殊って?」
「ダンジョンってのは基本的に地下に出来るモノなんだけど、天獄は世界でたった一つだけ天に向かってそそり立つ塔の形をしたダンジョンなのだよ!」
「そっか~、天獄も世界3大ダンジョンの1つなんだ……」
「アリスちゃんも天獄は知ってるんだね?」
「あ~…… うん、まぁ有名だからね」
(つーか登ったことあるし)
『!?!?』
「天獄も地獄同様、未だ踏破した者は誰もいないと言われてるダンジョンで、最上階層は1000階、天界に繋がってる……なんてウワサもあるね」
(いやいや、1000階とかそれっぽっちじゃないから、あの塔10000階あるからね?
あと天界って言っても空と雲だけで他には何もない場所だから。
天使の軍隊が駐留してたけど、あれは神界を守護する待機所みたいな場所かな? 多分最終防衛ラインみたいな物だ)
『はっ!? え!? おまっ…… の…… 登ったのか??』
(レベル上げがてらチャレンジしたことがある、あの塔って上に行けば行くほど時間の流れが狂うから、3ヵ月以上かかったと思ったけど、実際には1週間程度しか経ってなかったなぁ)
さすがにあんなに高いとは思わなかったけど。
ちなみに踏破したのは俺で2人目だ、最初に踏破したのは初代勇者シーザー・サロスだったそうだ。
『しかも踏破してた! お前…… ウソだろ!?』
(魔王を封印するのに使った封神杖どこで手に入れたと思ってるんだ? あの塔は途中にお宝が一切なかったが登りきると神と謁見できるんだぜ? 女神様が美しかった…… ホントはお前をぶっ殺す武器が欲しかったのに…… 女神様はなんて慈悲深いんだろうな)
『…………………… お前…… ホントに人族か?』
(失礼な、他に何に見えるんだよ?)
『(バケモノにしか見えない)』
(なんだって?)
『なんでもない』
『…………(もしかして今が勇者を殺せる絶好のチャンスなんじゃないか?
でもアリスたんの身体に入られている以上それは出来ない……!
くそぉう! なんとしても旅の途中でこのバケモノ勇者を殺す手段を探さないと! さもなくば復活と同時に我が殺される!)』
『…………』
『(でもこんなバケモノに弱点なんかあるんだろうか? いや! 諦めるな我! 諦めたらそこで人生終了ですよ…?)』
―――
――
―
さっきから魔王の念話が止んでる、いつもコレくらい静かなら有り難いんだが……
辺りが夕日に染められる頃、俺達はラビットランド共和国に辿り着いていた。
入国審査が行われる建物の中には俺達の他にも多くの冒険者がおり列を作って並んでいた。
待つこと1時間、ようやく順番が回ってきた。
「んー、キミ達も出稼ぎ希望の冒険者か?」
「は、はひっ! そうでス!」
落ち着けフィロ、訛ってる訛ってる。
「国によっては素性の知れない冒険者を毛嫌いする風潮もある、だがここラビットランドは違う、冒険者がダンジョンに潜り素材を手に入れ、それを我々が加工して販売する、どちらか片方が欠けただけでも立ち行かなくなる、キミ達冒険者は我らのパートナーと言っても過言ではない存在だ、だからキミ達の入国を歓迎しよう!」
「は…… はぁ……」
ずいぶんと長文な歓迎の言葉を受けたけど、それって入国審査を受ける人全員に言ってるの?
そりゃ長蛇の列になり1時間待ちになるわな。
「それとキミ達が初入国なら内門の側にいる老人に声をかけるがいい」
「? なンでですカ?」
「もう外は暗くなっている、今からダンジョンに潜りはしないだろ? 彼に話しかければ安宿を紹介してくれる」
遅くなったのはお前の入国審査が遅いからだろ。
「はぁ…… そうですね、声かけてみまス」
ようやく入国か、うわ、外ほとんど真っ暗だな。
ちなみに入国料は勇者割引で1人100ディルだった、どこの国もこんな安ければ楽なんだが。
「ハァ……」
「フィロ?」
「ボク達ってそんなに貧乏に見えるのかな? いや、間違ってないんだけど、いきなり安宿紹介されるとか……」
「それはたぶん初入国者全員に言ってるんだよ、この国は物価が高いから他の国より宿代も高いんだと思う」
「あぁ~、ナルホド」
この国ではただ留まっているだけで金がドンドン流れ出てく、しかし仕事をすれば出費に見合った…… それ以上の収入が得られるハズだ。
ここで稼げるだけ稼いで馬車を…… いや、馬車を買うなら他所の国に行ってから買うべきか。
この国からなら主要な他国へ乗合馬車が出てるハズだし。
俺達は壁を越え、正式にラビットランドに入国を果たす。
空は既に真っ暗だ、しかし街は明るく活気に満ち溢れていた。
「街灯がこんなにたくさん…… ホントにお金持ちの国なんだねぇ~」
「ん、街灯の有る無しでその街の裕福度の基準になるって言われてるからね」
しかもこの街の街灯はお高い魔石式の街灯だ、それが街中至る所にある。
「お嬢さんがた、この国は初めてかい?」
「?」
そこには1人の老人がまるでアイドルの出待ちでもしてたかのように佇んでる。
このジーサンが例の貧乏人御用達ジーサンか。
「あ、はい、どこか安く泊まれる宿をご存じないですか?」
「ほっほっほっ、案内しよう、付いといで」
勝手知ったるといった感じで案内してくれるジーサン、この人も出稼ぎの人かな?
少し歩くと町中にも拘らず巨大な穴が唐突に現れた。
「ナニコレ? シンクホール?」
「これが霊獄の入り口じゃよ」
「えっ!? これが!?」
東門から入国して歩いて3分程度だ、てっきり国の中央にあるのかと思ってた。
直径は100mくらいあるだろうか? そんな穴が街の中に普通にある、中は急こう配な坂になっており、その壁面に人が入れるような穴が幾つも空いている、何かの採掘場みたいな感じだ。
そして穴の周りには腰の高さ程度の柵が設けられて、所々に梯子が設置されてる……
それよりもなによりも、モンスターの巣窟であるダンジョンの入り口が塞がれていない、開けっ広げである。
あれ? ここって街中だよな?
「こんなノーガードでイイの? 夜な夜なゴーストが這い出て来ないの?」
「ほっほっほっ、その心配はいらんよ、ここのモンスターは瘴気の中でしか存在できない、そしてその瘴気は光に弱く簡単に浄化できる。
太陽はもちろん月の光でも問題無いんじゃ」
「曇りの夜は?」
「その為の魔石街灯じゃ。
あれは聖光の魔石で瘴気には特に効果的なんじゃよ」
なるほど、街の中にダンジョンがあるんだ、備えは万全で当たり前だったな。




