第19話 魔王のでべそは黒い
「ワシがハオネス王国国王リチャード・ハオネスⅢ世じゃ」
俺達はハオネス城の謁見の間で国王陛下とお会いした。
まぁリチャードさん家の客間でオッサンに会ったとも言うが。
『アレが王? なんというか…… 人族の王は…… ショボいな』
悔しいことに全く反論できない、だが皆が皆あゝじゃないコトは分かって欲しい。
確かにこの謁見の間も天井は低いし壁紙は端っこが剥がれてる、王様も足元はガムテで補修したサンダル履いてるしスネ毛も見えてる……
ショボいというよりみすぼらしい。
こんな小国だからな、最初から期待はしてない。
むしろ期待しまくってたフィロが哀れだ……
「さて、本日そなたらを呼び出したのは感謝の意を伝えるためだ」
「感謝……ですカ?」
『おい、勇者!勇者! 今気づいたんだがフィロは緊張したりビックリすると方言が出るぞ! 普段は訛ってないのにそういう時のイントネーションがアヤシイ!』
お前どんだけ王様に興味ないんだよ? せめて話くらい聞いてやれよ。
「そなたたちが捕縛した盗賊たちは都市国家群でも問題になっていたフダツキでな、国王会議でも問題になっていた連中なのだ」
「そうなんですカ?」
「うむ、我々も手を焼いておったのだ、夏になると深夜に国の外を大きな音を出して走り回りウチのハナコも怯えておった。
あの「魔王のでべそは黒い団」の連中は!」
「はい?」
「ん?」
『あ?』
魔王の…… なんだって?
「あんのぉ…… 王様、今なんて仰られたんですカ?」
「あぁ、「魔王のでべそは黒い団」だ」
聞き間違いじゃなかったらしい。
『おい、あのハゲなんだ? ケンカ売ってんのか? お? 上等だよ、ちょっと屋上行こうぜ?』
(あぁ、そういえばそんな逸話があったな、「魔王のでべそは黒い団」ってのは盗賊団の名前だよ)
『何だその名前は? あぁん? ナメてんのか? ゴルァッ!!』
ティッペがガンを飛ばしてくる、俺に言うなよ。
(確か500年前の戦争時にこの辺りで戦ってた義勇軍の名前が「くたばれ魔王団」って名前だったんだ。
彼らは戦後、盗賊団に成り下がってしまったんだが、その時の伝統からだろうか? イスト大陸の盗賊団は魔王をバカにしたような名前をつける風習が生まれたらしい)
『よし勇者、捕まえた奴らを皆殺しにするぞ』
(とっくに司法機関のある国に移送されてるだろ)
「どこの国にも属していない旅人のお前達が盗賊団を倒してくれたおかげで、我が国が盗賊団捕縛のポイントをGetできた! 感謝しておるぞ」
うわぁ、この王様正直すぎ。
「褒美として我が国への永住権を与えてやろう」
そして褒美が全く嬉しくない。
「あの…… 光栄なお話なんですが、ボクたちは魔王討伐の旅の途中なのでその褒美を頂くワケには……」
「そうか、ふむ…… ならば仕方が無いな、ではせめて我が国を堪能していくがいい、もう下がっていいぞ」
「はぁ…… 失礼しマス……」
―――
パタン……
俺達は王城(民家)から出てきた…… まるで狐につままれたような気分だ。
「何だったんだろうね? 正直に言うと報奨金とかが貰えるんじゃないかって期待してたんだけど……」
「多分、報奨金自体は都市国家連合から出てるハズだよ、ただそれをあの王様がちょろまかしたんだ」
「ちょろまか……?」
「着服したんだよ、私たちに払われるハズのお金を」
「えぇ~? 仮にも王様がそんなセコイ事……」
あのみすぼらしい城を見れば、ちょろまかしたって不思議はない。
「……しそうだね、スゴく……」
「ですよね~」
しかし困った事になった、さっきの民家の玄関に張られてた地図を見る限り、最寄りの国までまだ結構距離がある、こんな小国からは乗合馬車だって出てないし徒歩で移動しなければならない。
「でも困ったね、そろそろ食料も買い足さないといけないし…… 下手したら次の国への入国料すら足りなくなるよ……」
「う~ん…… ちょっと稼がないといけないか……」
出来ればもっと大きい国で稼ぎたかったが……
「よし! こうなったらこの国で少しお金を稼ごうよ! ね?」
「仕方ないか……」
「でもこの国…… ギルドの支店あるかな?」
「出張所くらいはどの国にもあるハズだけど……」
ギルドは街の正門近くに置かれるのが通例だからそっちへ向かうことにする。
仮に正門近くに無かったとしてもこんな狭い国だ、チョット探せばすぐに見つかる。
「ん?」
いつもはウザいほど五月蝿い魔王が静かだと思ったら王城を睨みつけてる。
(どうした魔王、ここに永住したいなら好きにしていいぞ)
『誰がするか! 元の体を取り戻した暁にはこんな国滅ぼしてくれる!』
(この国を恨むのは筋違いだ、滅ぼすなら盗賊団にしろよ)
『それだけで済むと思うなよ! この大陸全てを灰燼に帰してやる!』
ヒドイとばっちりだ。
(ところで魔王)
『あぁ? なんだ?』
(お前のでべそってホントに黒いの?)
『んなワケあるかぁぁぁ! 我のへそは黒くもなければでべそでもない!!
我はパーフェクトシックスパックだ!! 見ろ!!』
(いや…… 見ろって言われても、そんな体毛に覆われた寸胴見せられても困る、へそがドコにあるのかわからん。
大体それお前の身体じゃないじゃん)
そもそもの前提として魔法生物にへそは存在するのだろうか?
―――
冒険者協会・ハオネス出張所
またしても普通の民家で思わず通り過ぎてしまった。
玄関の横に町内会の掲示板みたいなのがあり、そこにクエストの依頼書が張り出されている……
町内会新聞か何かだと思っちゃったよ……
「うわ~…… こんなギルドもあるんだね?」
「私も始めて見た……」
「ま…… まぁギルドは見た目じゃないよね? 仕事をこなして報酬が貰えれば良いんだから!」
フィロは前向きだなぁ、俺は報酬がちゃんと貰えるのか不安になってきた。
「え~っと、どんな依頼があるのかな~?」
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採取依頼Lv.E(常駐)
「薬草の採取」
薬草を採取してきて下さい。
最低枚数10枚、以降1枚につき150ディルにて買い取ります。
依頼者:国営クスリ師協会
達成報酬:2000ディル
:ハンドタオル
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採取依頼Lv.E
「ハチミツの採取」
フラービーの蜜を採取してきて下さい! 妹が死にそうなんです!
依頼者:妹の兄
達成報酬:500ディル
:妹の生写真
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捕縛依頼Lv.C
「魔王の鼻毛5センチメートル団の捕縛」
ウチの息子が「家業を継ぐのは嫌だ」と言って国を飛び出した、その後どういうワケか魔王の鼻毛5cm団に入ってしまったようだ、頼む息子を無傷で連れ戻してくれ!
※ ONLY ALIVE ※
依頼者:養鶏家・デニス
達成報酬:100000ディル
:卵1年分
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討伐依頼Lv.C
「魔王はホーケー団の討伐」
あいつらに財布を盗られた、殺してもかまわないから取り返して欲しい、報酬は一割で。
※ DEAD OR ALIVE ※
依頼者:正義の味方
達成報酬:300ディル
:正義の味方カード№11
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討伐依頼Lv.C
「魔王がヅラで何が悪い団の討伐」
あいつらに盆栽を壊された、殺してもかまわないからやり返して欲しい、報酬は一割で。
※ DEAD OR ALIVE ※
依頼者:正義の味方
達成報酬:1000ディル
:壊れた盆栽
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「…………」
「…………」
ビックリするほどロクな依頼がないな……
『おい勇者、盗賊団絡みの依頼を全て受けろ、さすればお前は魔術の深淵に触れることが出来るであろう!』
(嫌だよメンドクセー)
『金が必要なんだろ!? 鼻毛のやつを受けろ!』
(鼻毛…… お前の鼻毛って5cmもあんの?)
『ねーよ!! お前、我と顔を合わせたじゃねーか!!』
(いや…… 1本だけヒョロっと伸びてたら気付かないかなと思って)
『1本だけヒョロっと出てる鼻毛を放置するヤツがこの世にいるかぁぁぁ!!』
ごもっとも
(どっちにしても盗賊系はダメだ、危険はともかくアジトを見つけるのが大変過ぎる)
『こんな誹謗中傷盗賊団を放置しなければならないのくわぁぁぁぁぁ!!』
(え? 魔王ってホーケーじゃないの?)
『な、な、な、なっ、んなワケあるか!! ズズズズル剥けだわ!!』
なんかちょっと怪しくなかったか?
(じゃあカツラ被ってるってのは?)
『タワシ並みの剛毛だ! 白髪1本ねーよ!!』
(へ~、そ~なんだ~、でも魔王が悪いイメージを持たれるのは覚悟の上だろ?)
『悪いの意味が違うだろ!』
(あ、でも見ろよ、コレはお前の本質を捉えた名前だ)
『あ?』
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討伐依頼Lv.C
「魔王は幼女で興奮するロリコン団の討伐」
世界の害悪、誰でもいいから殺してくれ。
※ DEAD OR ALIVE ※
依頼者:正義の味方
達成報酬:100ディル
:鋼の剣
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『ロリコンじゃねーって言ってんだろぉが!!!!』




