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Alice to Teles ~外道勇者と親バカ魔王と魔王の娘とそのペット~  作者: 群青
イスト大陸編 ~グランディア王国~
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第14話 選択


「すこし…… 考えさせて欲しいんだけど?」

「あう…… そ…… そうですか…… わかりますた……」


 フィロは物凄く落ち込んでしまった、たぶん「考えさせて欲しい」って言った人たちは、最終的に断ったんだろう。

 俺も断りにくい時は考えさせて欲しいって言うかもしれない。


「あの…… 今晩どこにお泊りになりますか?」

「ん? まだ決めてないけど」

「だったら! 宿泊代! ボクが出します! ボクが泊まってる宿に来てきださイ!!」

「えぇ…… 見ず知らずの方にそんな……」

「イイですから、イイですから! どうぞどうぞ!」

「あの…… ちょっと……」



 ズルズル……



 フィロに強引に宿屋へ引っ張ってかれた…… ナンパ男みたいな真似するようになってお兄ちゃんは悲しいよ。



―――


――




『ずいぶんと強引な娘だな』

(恩を売って断わりにくくしたいんだろ、更に逃げられないように自分と同じ宿へ泊める、部屋も隣同士だからなきっと今頃壁に耳をつけて聞き耳を立ててる)

『………… やはり勇者にマトモな人格を求めるのは間違いだったか』


「…………」


 右側の壁から圧力を感じる、てか壁からオーラみたいなモノが漏れてきてる気がする、イメージ映像だろうか?

 聞き耳を立てられるとイジワルしたくなっちゃうんだよなぁ……


「ふぅ…… あの人…… ちょっと怖い……」


 小声で呟いてみる、聞こえたかな?


「…………」


 ズゥゥゥゥゥン……


 おぉ! オーラがドス黒い色に変わった気がする。


『それでどうするんだ? 我は勇者パーティーに入るのは反対だ』

(なんで?)

『精神だけで我を殺そうとする勇者が既にいるのに、更にもう一人増えたら気の休まる時が無くなる』


 物凄く個人的な理由だった。

 もともと魔王の意見を採用する気はないが……


(勇者とパーティーを組む、これにはメリットとデメリットがそれぞれある)

『ほぅ? どんなメリットが?』

(勇者の立場は人類圏ではかなり高待遇が保証されてる)

『例えば?』

(立ち入りが制限されてる古代の霊廟とか宮殿とか危険地帯とか……

 そういった場所にフリーパスで入れる)

『それはメリットなのか?』

(魔王を殺すための武器とか手に入ったりするんだよ、俺はそんなものに頼らなかったけどな)

『ふん、危険地帯に入って死ねばいいのに……』


(後は金銭面でかなり助かるな)

『金?』

(勇者はイスト大陸でなら回復薬なんかを半額で買えるし、武器防具の購入金額の3割に補助が付いた)

『勇者ズルくね?』

(魔王をぶっ殺すっていう全世界の人たちの希望を背負ってたからな)

『我…… そんなに世界中から死を望まれてるの?』


 今頃気付いたのかよ?


(この勇者特権の中で、最も大きいのは渡航費用の免除だ、この先アム大陸とエスト大陸へ渡る際にどうしても船に乗らなきゃならない、だが一般冒険者は莫大な渡航費用が必要になる)

『それってどれくらい?』

(イスト⇔アム間は1人50万程……

 アム⇔エスト間は1人500万だ)

『高すぎだろ!! 10倍ってどういう事だ!!』

(お前がそれを言うのか?)

『へ?』


(25年前、魔王プラトンが現れてから全ての海路が航行不能になった。

 毎年毎年、海ではクラーケンが大量発生して暴れまわってる、今使われてる海路も護衛船団を組んで命懸けの航海をしてるんだぞ?

 50万・500万でも安いくらいだ、どーせお前が元凶なんだろ?)

『ぬ…… 濡れ衣だ! 我はそんな命令を出したことは…… あ』


 ほ~らな、やっぱり。

 何か心当たりがあるらしい。


『もしかして…… 25年前にポセに出したあの命令か?』

(なに命令しやがった?)

『あ…… あの日は確か我の2代目魔王就任記念祝賀会をやってて…… 四天王に何か命令した気がする……

 酔っ払っててよく覚えておらんが、ポセには…… 確か…… 海を支配しろって言っちゃった気がする……』

(へ~~~)

『え? 嘘だよね? 25年も前の酒の席での命令を未だに守ってるの? あいつら?』

(最後に四天王を見たのって何時だ?)


『……………………』

(…………)


『25年前……』

(お前、魔王失格だよ)


 このアホが25年前に酒の勢いで下した命令で、世界中の人が大迷惑を被った…… こいつマジで死ねよ。


『えぇ~ウソだろ? もう何年も忘新年会とか運動会とかお誕生会に出てこないから、我、嫌われてるのかと思ってた』


 魔王城って俺が思ってたより平和なのかな?

 だが断言できる、魔王は嫌われてる、コイツがとんでもないカリスマでも持ってるなら話は別だが、25年も部下を放置する魔王が好かれる要素はない。

 だいたいお前はナチュラルに人に嫌われるコトをする傾向がある、それはアーポーペンのケースからも明白だ。


『どうしよう、すぐに魔王城へ呼び戻して昇進させて、給料も上げて、3ヶ月位休暇も上げた方がイイかな?

 許してくれるかな? どうかな?』


 知るか


(早く魔王城へ戻りたければ勇者とパーティー組むのはアリだろうな)

『だ……だが、デメリットもあるんだろ?』

(他人がいれば正体がバレる可能性が上がる。

 それに勇者は魔族に狙われるから危険も増える。

 後は元の体に戻れたらお前は勇者2人を相手に戦わなきゃいけないな、俺には関係ないけど……)

『ぐぬぬ……!』


 更にもう一つ問題がある。

 女の子歴の浅い俺はきっとどこかでボロを出す、その時上手く誤魔化せるかどうか…… そこはもう賭けだな。


 まぁ魔王を殺すだけなら俺一人でも事足りるんだが……


(色々言ったが最大のメリットは国境越えだな)

『は?』

(勇者パーティーなら国境もノーチェックで通れるハズだ)

『悩む理由がないじゃないか! パーティーを組め! そして一刻も早く魔王城へ帰るのだ!! 多少のデメリットなら目を瞑ろう!!』


 今さら焦っても手遅れだろ? 気づくのが25年遅い。

 ただ早く魔王城へ戻るって意見に依存はない。



―――


――




 翌朝、宿の一階で朝食をとる、フィロがその分の代金も払ってくれているのでありがたく頂く。

 ここまでカネを出させておいて断ったらどんな顔するだろう? チョットやってみたい……


「おはよう…… ございます……」


 ヒドイ顔色をしたフィロが降りてきた、昨日は眠れなかったのかな?


「あ、おはようございます」

「そう……ですね…… へへっ……」


 笑顔がちょっと怖い、朝っぱらからさわやかさ皆無だ。


「それで答えはどうですか? ボクと一緒に魔王を討つかどうか? ダメなら一思いに止めを刺して欲しい……」


 声に覇気が無い、イジワルしたらそのまま泣いて逃げそうな雰囲気だ。


「一晩考えた結果…… アナタの旅に同行しようと思います」

「…………え?」


 手を組み目をキツク閉じ、まるで一世一代のプロポーズの答えでも待ってる様なフィロに同行する旨を伝えた。


「ほ…… 本当?」

「はい、ただし条件が幾つかあります」

「な…… なに? お金はあんまり……」

「私とパーティーを組む以上、後で何かあっても文句は受け付けない。

 私のコトを必要以上に詮索しない」

「うんうん、OK大丈夫です!」

「そして一番重要なコトだけど、やるからには一番早く魔王城へ到達するコト」

「一番……はやく?」

「具体的には他の勇者より先に到達する」


 最後のが最重要課題だ、コレが飲めない様なら利用するだけ利用した後ポイ捨てする事になる。

 できればフィロにそんな真似したくない。


「それはつまり…… ボクたちで魔王を倒すってコト?」


 魔王がいま倒せる状態かどうか分からないけど、魔王をぶっ殺すって所には異存は無い。


「ん…… そういう事になる」

「はぁぁぁ~! はい! がんばって魔王を倒しましょう! よろしくお願いします!!」


 ガシッと手を掴まれブンブン振り回される、痛い痛い、腕取れる。


『不遜なる小娘め、我を倒すだと? 思い上がりも甚だしいぞ! 魔の王に逆らった者がどうなるかその身に刻みつけてくれよう! 代償は汝の命だ! フハハハハハハ!!』


 そして魔王は早くもラストバトルの前口上の練習をしている。

 そう言えば俺の時もこんな感じのコト言ってたな…… 後から入って来たアリスが顔を赤くしてた、父親が大ハッスルしてるの見て恥ずかしかったんだろう。

 そんなアリスを見て魔王は青ざめてたけど…… コイツ全然反省して無いな。




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