第二話 もう1つの世界
青空が広がる。鳥が群れを成して数多の地を目指して飛んでいる。空とは対象に大きな山脈が顔を出す。「シーディア大陸」と呼ばれる、地続きである。その大陸にちらほらと村が見える。少しばかり行くと、クレイビア山脈が名をはせている。その山脈を超えると、一つの村がある。ベルアージ村だ。そこからは幼い声や、低く勇ましい声が聞こえてくる。村の中心部は賑わいを見せている。祭りをしているらしい。村人たちの多くの大人の男は昼間というのに、酒やつまみを暴飲暴食している。まるで、飢えた獣の様だ。通りに出れば、鮮やかな装飾を施した店が立ち並ぶ。 賑わっている為、いつも以上に騒がしい。
騒がしさによって目覚めてしまった。時刻は5辰刻である。いつもより寝てしまった。ベットから降り、寝ぼけた顔を起こそうと井戸へと向かう。外に井戸から水をくまなければ。
裏口から出て、慣れた手つきで水を汲む。古びた木材の滑車は悲鳴を上げたかのように、高い音を出して回る。井戸の中から、桶が水に当たった感触が紐を通じて伝わってくる。紐を引き上げると、ずっしりとした重みがある。水の入ってることがわかる。桶を井戸の外にやり、手を入れて水をすくい顔を洗う。水面が鏡の役割を果たす。水面をのぞき込み顔を入念に確認する。けして、ナルシストではない。ただの、綺麗好きだ。
家の窓が開いていて白いカーテンが風によってなびいてる。その窓から若い透き通った声がする。「アルディー。ごはん。」アルディーと呼ばれる青年は本名を『アルデバラン・アルシア・アルチェルト』。若い透き通った声の主はアルーの姉の『メイ・アルチェルト』である。アルディーは今、姉と二人暮らしである。母は7年前の獣の襲撃によって亡くなった。父は7年前に、その襲撃を食い止めるために部下とともに出陣したが・・・帰っては来なかった。それ以来、姉と二人で生活している。収入はあり、昼間に姉が町へ出向き仕事をしている。彼は、戦士育成学院へ通う生徒だ。
ここ最近、忙しくアルーと一緒に食事も出来なかった。今日は仕事が休みなので久しぶりの一緒に朝ご飯。
メイは一緒に朝ご飯を食べれるという思いが強く、いつも以上に腕を振るう。何時もであったら、彼はパン1枚で十分という。足りない気もするが、彼にとってそこのところはどうでもいい。家に入り、ダイニングを見る。そこには、多くのおかずが並ぶ。目玉焼きとベーコン、ウインナーにヴァアラーの炒め物と豪華な朝ごはんである。アルディーは量の多さに、動きも思考も停止してしまってる。メイがフリーズの世界から彼を、引っ張り出す。席に着き、手を合わせる。彼は粗食であるので、沢山食べることはない。それなのに身長が179CMもあるのだ。どうしたら彼は、粗食の割に背が伸びるのか不思議だった。メイは「漢なんだからーいっぱい食べなさい。」とアルーに向かって言っている。彼はそんな事はどうでもいいように無視をする。そして、食事が終わり手を合わせて、席を立つ。食卓の上にはこれでもか、というほどにおかずが残っている。「あちゃー。やっぱ作り過ぎたか・・・」今頃気づくメイを背にしてアルは支度をしている。アルは戦士育成学校に通う身だ。こんなにもひょろひょろなのに、戦士が出来るのか……。なんて思う人も多い。しかし、その学校で首席を取るほどの実力が有るのだ。
しかし、人見知りも酷く、周りからは『冷たいのっぽ』なんて呼ばれている。彼は気にしない。実力さえあればそれで良いらしい。彼は学校に行く準備を終えて、外に出る。メイは「いってらっしゃい。いつも言ってるけど、無理はしないでね。」といつもの日課となっている。「わかった。行ってくる。」といつも通りの返事をする。アルは街へと向かう。
街は祭りで騒がしい。肩が他の人の肩とぶつかる。
当たり屋に会わずに済んだのは奇跡である。街の中心部に建てられた戦士育成学校が見えてくる。少しばかり古いが国内外有数の学校である。特に、彼の通う学校は国内で最も歴史があるのである。
アルはその学校の大きな門をくぐり抜ける。そして校舎にはいる。
そして、授業をうける。
今日も授業を終えて、外に出る。夕日が綺麗だ。アルは急いで家に帰る。メイが居るからだ。
家に付くと彼女はいつも通り迎えてくれた。
「アル、ご飯にする?お風呂にする?」「飯食べたい。」といつも通りである。ダイニングに行くと既に夕食の支度が済んでいた。
アルはあることに気がつく。「今日の朝飯だよね‥‥」「えへへへ‥‥お昼も食べたんだけど、食べきれなくて。」朝食時の3分の1?10分の3?位まで減っていたが、かなりの量だ。あくまでも、彼からはそう見えた。
夕食が済み、風呂にはいる。温かい。丁度良い温さである。今にも寝そう。ここで寝てしまってはいかん!と、ばかりに湯船からでて体を洗う。風呂から上がり、メイに声を掛けてベットへと向かう。今は、14辰刻である。アルはベッドに倒れ込むとそのまま寝てしまった。