仕事をください
ぼけーーーーーーー
なんもやるきおきねぇ
勇者が魔王倒したとか、その勇者や仲間が実はクラスメイトだとか、俺一人だけ三年遅れて召喚されてたとか、
情報のインパクトデカすぎ。
笑いしかでてこねぇ。
朝遅くに起き、なんもせずぼーっと外の景色を眺める。気づくと夕方になっていて、腹が減ったから外にある食堂に行き、飯を食って酒をひたすら飲みまくる。ベロベロになって深夜、宿に戻って寝る。
もう一週間こんな感じだ。
えっ?高校生がなんで酒飲んでるかって?
この世界では、お酒は16歳から。
むこうじゃアウトだが、こっちじゃセーフなのだ。
特段うまいってわけじゃないが、
飲まなきゃやってらんねぇ。
ずっとこのまま怠惰な生活をおくっていたいのだが、そうもいってられない。
手持ちの金がもうすぐ尽きてしまう。
当初の計画では、一ヶ月はもつはずだったのだか、
こんな生活をしていたら金の減りは必然的に大きくなる。
何か仕事をして金を稼がなければならない。
働かざる者食うべからずってやつだ。
とりあえず、街に出て雇ってもらえるところ
を探しにいこう。
「ここで働かせてください!」
最初に訪れたのはパン屋さん。
店長はとても優しい顔をしたおじいさんだった。
店長さんは、見かけ通りの優しい声で
「全然構わないよ。最近は人手不足でねぇ…
本当に助かるよ!」
といってくれた。
この様子だとOKをもらえそうだ。
1軒目で採用されるなんてとてもついてる。
そんなことを考えていると、
「最後に、君の職業を教えてもらえるかな?」
職業?俺は無職だからこうして仕事を
探してるんだが……あーあれか!
ステータスにのってるやつのことだな!
すっかり忘れてた
「魔導師です‼︎」
少し自信を持ってそう答えた瞬間、
おじいさんの顔が豹変した。
先程の優しさなど少しも感じられない
孫の仇でも見ているかのようだった。
「魔導師じゃって⁉︎この話はナシじゃ!
さっさと帰ってくれ!二度とそのツラをみせるな!」
そう言われ、何かを言う暇なく店から叩き出されてしまった。
魔導師ってだけで不採用になるだけじゃなく、
出禁をくらうとは…
まぁまだ一軒目だ。ここの店長が偶然、魔導師に恨みを持つ人だったに違いない。
次の店で、俺は仕事を手に入れるんだ!
薬草屋
「魔導師にやる仕事はないよ!帰った帰った!」
喫茶店
「悪いけどうちで魔導師の人を雇うことはできない。
他を当たってくれ。
八百屋
「魔導師だってぇ?てめえケンカ売ってんのか⁉︎」
郵便局
「あなたたち魔導師が手紙配達なんてするわけないじゃない!馬鹿にしに来たんなら早く帰ってよ!」
………何十軒と店を訪ねたが、すべて不採用
しかも、理由はみんな
「魔導師だから」
異常だよ
魔導師嫌われすぎだろ
てかあれはもはや、嫌ってるって次元を超えてる 気がするぞ…
お前ら一体なにやらかしたんだ?
俺が魔導師で、仕事を探してるという情報が
広まってしまい、肩身がせまいことこの上ない。
街の人々から向けられる視線がとても痛い。
特に頭が痛む。ゴチゴチしてマジで痛い。
おかしいと思って後ろを向くと、俺に石を投げてる人達がいた。そりゃいてぇわ。
宿にも戻りづらくなり、途方にくれて歩いていると
とある看板が目に入る
冒険者ギルド 泡沫の魔女猫
この道を右に曲がるとすぐ見えます
冒険者ギルド
そうだよ!これがあったじゃん!
別に普通の仕事につかなくたっていい。
魔物を狩って、その報酬をもらい生活すれば
いいのだ!
俺の職業はそういうのにとても向いてる。
なんでもっと早く気づかなかったんだろう!
全速ダッシュで右に曲がる。
しかし、
「なんじゃこりゃ…」
そこに、冒険者は誰一人見られず、騒ぎ声はもちろん
話し声すら聞こえない。
目の前にあったのは、
泡沫の魔女猫 という看板は掲げているが、
ボロボロになり、今にも崩れてしまいそうな
廃墟寸前となっている建物だった。




