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恋に燻る

作者: 宮乃

こちらでは初めまして。

拙い文ではありますが、過去の恋愛を思い出す「いい」きっかけになれば幸いです。


 私は恋をしてみたい。

 思い返せば、今までの私は、恋愛に関しては色々な体験をしてきたように思う。

 比較対象がいないから、もしかしたらあまり特筆すべきことではないこともあるかもしれないけれど、少なくとも私自身にとっては、という前提をここに述べておく。


 一つ一つを詳細に語るには時間が無駄なように思えるから、ここでは事実だけを述べていこう。恋、といってもそれが実ったのかどうかで話は変わってくるから、「付き合った」ことだけに焦点をあてようと思う。


 初めての彼氏へは、恐らく恋とは呼べない淡い感情を抱いていた。もしかしたらあれも恋だったのかもしれないけれど、話をしていて楽しい、共通の趣味があって嬉しい、など、同性の友人に対する想いと酷似していたように今なら思う。

 言いそびれていたけれど、私は異性愛者だ。

 彼との終わりは自然消滅だった。彼が突然私の前から言葉の通り、姿を消したのだ。

 当時は携帯電話のメール機能でのみやりとりが出来た彼が、私からの連絡に何の反応も示さなくなった。毎日メールを送っていたように思うけれど、その頃の私は自己満足に生きていた。返信がなくても送り続けるなど、相手の事情も考えずになんと迷惑な話だろうか。

 もう残ってはいないものの、彼から「もう構わないで」といった内容のメールが送られてきて初めて私は自分の愚かさに気付いたのだ。

 学生らしい、清いお付き合いだった。唯一の彼との思い出は、文化祭でカップルが交換すると……というようなジンクスにあやかって交換した一点のみであるし、彼のメールアドレスはまだ残っているけれど、それはきっと、もう使うことはないと思う。彼と付き合ったのは一月足らずだった。それでも、この時は私は確かに楽しかった。


 それから約一年が経った頃だろうか。

 人として最低なことである自覚が後から芽生えたのだけれど、好きでもない人に告白をしてしまった。若気の至り、その場のノリ、言い訳は何でもできる。けれど、その告白にOKの返事を貰ってしまって、どうしようと困惑したことははっきりと覚えている。きっとその頃の私はただ「彼氏がいる」という肩書きが欲しかっただけのように思う。

 相手への罪悪感から、そのまま付き合うことが苦しくなり、メールで別れを告げた。彼に対しての贖罪として付き合いを続けることも一瞬考えたけれど、その人を恋愛対象として見ることはこれからも出来ないと確信を持って言えたからだ。

 別れようと送信したメール。その返信には何故、と当然聞かれたけれど、私がなんと答えたかは覚えていない。今でも彼とは共通の趣味の話で連絡を取り合うものの、あの日、私が好きでもないのに付き合ってと言ってしまったことは私が墓場まで持っていく。

 自惚れかもしれないけれど、彼は私を好きでいてくれた。


 それから数ヶ月が経ち、私はインターネットの某SNSで知り合った人と付き合うことになった。それまでは情報発信ツールなどで知り合うことはあっても、その場で話すだけでそれより一歩踏み込んだ関係になることなどなかった。相手は私より一つ下の学生だった。学生時代の年の差というのは思いの他大きい。

 当時の私が兎にも角にもインターネットに疎く、せいぜい自分のサイトを作ったりSNSで呟いたりと、自分の手が行き届く極々狭い匣庭で生活していたせいもあった。彼は私の知らないことを沢山知っていたから、その「知」の一面に惹かれたのだろう。

 けれど、あくまでその一部分だけに惹かれたのだと気付いたのは付き合い始めて少し経った頃だった。彼とは結局一度も会うことはなかった。けれど、体よく私がふられたようになっている。不満はないけれど、彼から私は好きでもない人にフラれてもなんだか心が痛むのに、好きな人にフラれたら一体どれほど辛いのか。

 恋愛に初心、などとは言えなくなっていたその頃、私は昔付き合った彼に対して漸く自分のしてしまった過ちに気付いたのだ。


 それから数日後、だっただろうか。

 二人からほぼ同時に告白のようなものをされた。

 一人は十年ほどの付き合いになる先輩、もう一人はSNSで知り合った年上の男性だった。

 先に述べると、私はSNSで知り合った人とお付き合いをすることになる。私が学生の頃に一度告白をして断られた人がいるのだけれど、それが先輩だった。だから酷く狼狽してしまったことを覚えている。けれど思い返せば、断られた時に「学生とは付き合えない」と言われていたのだ。先輩にとっては、私が卒業するまで待っているという意志表示だったのだろう。時折メールでやりとりをしたり、会ったりもしたけれど、今では先輩にも彼女が出来たようだし、これで良かったように思う。

 そして付き合うことになった先輩とは、片手で数えるほどしか会ってはいないけれど、半年ほど付き合いは続いた。毎日が楽しかった。

 別れは私から切り出した。

 好きでも、遠い。

 これからも、これ以上近付くことはないだろう。

 漠然と、そう思ったからだ。彼の方が、私よりもその辺りは考えていたようで、将来性がないこともあり、そこで、終わった。別れてからも一度会って遊んだけれど、一緒にいれば楽しいけれど、付き合うというには少し、違うように感じた。


 その後に付き合った人には、結婚を前提にお付き合いを申し込まれた。

 ここで言っておきたいのは、私の両親が離婚していることだ。今は母親と同居している。私自身、父親とは時折連絡をとりあい会っているけれど、それも子供の頃には考えられなかったことだ。私の親戚や知人は半分以上離婚をしている。そういうものを幼いころから見てきたせいか、私は結婚願望があまりない。付き合いたい、という欲はあれど、結婚したいと思ったことは一度としてなかった。そんな私が付き合うことに了承してしまったのは、「付き合いたい」と思ったからの一言に尽きる。結婚そのものを重く考えていなかった私の、いうなれば、落ち度、だった。

 付き合いが長くなるにつれて我儘になり、彼女としてというよりは人として駄目になっていく私と過ごしていれば、私に結婚願望がないことは嫌でも相手に伝わっていただろう。別れを告げられたのは突然だったし、当時は酷く泣いた。

 けれど、いま思えば、当然の結果だったように思う。

 結婚と一言で言っても、事実婚や週末婚、少し種類が異なるが夫婦別姓などの選択肢も私の中にはぼんやりあった。しかし相手は、結婚したら一緒に住む、そうなれば当然自分の家に来てほしい、という考えだった。住むことには特別異論はなかったものの、それでも私の中での結婚はどこか雲のようにふわふわと浮いて、手では掴めないものであることに代わりはなかった。いつかは結婚できればいいなと考えることはあっても、考えるだけだった。

 そんな彼も今では結婚の一歩手前までいっている相手がいると風の噂で聞いた。彼には幸せになってほしいと切に願う。


 それから一年程が過ぎて、私は幼い頃からの友人と付き合うことになる。

 結果を先に言うと、もう彼とは別れたのだけれど、酔った勢いというのは怖い。今でもご飯や映画に行く仲だけれど、友人として大好きな人に交際を申し込むなどという暴挙は二度としたくないものだ。



 同じ失敗はしたくないと言っても、人間という愚かな生き者はそう簡単には変わることが出来ない。

気付いた時には既に遅い。

 恋をしたい人間と、結婚をしたい人間とでは、見るものが異なる。「すすめ」の信号を見て「緑」という人と「青」という人がいるのとでは訳が違うのだ。

 そのことに漸く気付くことが出来たというのに、私はもうあの頃から大分年を重ねてしまった。


 私は恋をしてみたい。

 心穏やかな恋を、「昔」と比べるなどということをしない恋を、激しい恋を。

 けれど、こうしてみたい、ああしてみたい、と願えば願うほど、現実はそれとは真逆に進む。恋をしたいと私が思う限り、恋は出来ないのであろう。

 恋は落ちるもの、恋はするもの、恋はされるもの。

 色々な声があがる中、私は「恋に恋をする」という少し前に流行した言葉に、やっと首を縦にふるのだ。


お読みいただき、ありがとうございました。

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