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創炎のヒストリア ~転生執事の日常~  作者: 十本スイ
第四章 闇の人形師編
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第九十一話 頼もしい仲間たち

 ネオスが屋根に開いた穴を見下ろしていると、そこから白炎が立ち昇ってきて再びネオスに襲い掛かってくる。ネオスは舌打ちをしながら空間に穴を作り即座にそこに飛び込んで別の場所へと回避した。他の建物の屋根の上だ。



「やはり、あなたの魔法は空間系の魔法……しかも恐ろしいまでに洗練されていますね」



 ネオスの目の前にプカプカと浮いている白炎が、蛇の口のようにパックリと大口を開ける。するとその中には平然と立っているソージの姿があった。ソージはヒョイッと屋根の上に下りると、涼しい顔でネオスを見つめていた。



「なるほど。自らの力には殺されない……か」

「それはマヌケでしょう?」



 そう、ソージの攻撃魔法、赤炎であったり白炎はソージの意志が強く反映している。例えば赤炎を使って自分を燃やそうと思えば可能だが、無論普段使用している時は自分には効果がないように設定して創り出している。白炎もまた同じだ。



「……ちっ、面倒な奴だ」

「初めて悔しそうな顔が拝めましたね。その調子で次は絶望に歪む顔でも見せて頂ければいいのですが?」

「赤髪……」

「それに見て下さい」



 ソージは下で戦っている真雪、セイラ、刃悟の戦いを促す。



「彼女たちの戦いにも決着がつきそうですよ?」

「…………」



 見れば巨人の《自動人形(オートマタ)》は残り二体になっており、刃悟の方もアクアラプトルを優勢に先程から攻撃を当て続けている。勝負が決するのも時間の問題に見えた。



「あなたが虫と称する彼女たちの強さ。どうやらあなたが作り出した人形たちは……虫以下だったみたいですね」

「赤髪ぃ……」

「と、いうことは……それを作り出したあなた自身も虫……以下ですか?」



 ギリッと歯を噛んだ音がネオスの口から漏れ出て、ソージが口上では優位に立っていることが明らかになった。



「あなたのような危険な虫は、悪いですが駆逐させて頂きますよ?」



 ソージは両手から白炎を生み出し殺気を膨らませた。











「セイラ! そっちの一体お願いね!」

「は、はいっ!」



 真雪は頼れる親友であるセイラに一声をかけると、目の前に立っている一体の《自動人形(オートマタ)》を注視し、地面に手を触れる。



「召樹っ! 樹厳(じゅごん)っ!」



 真雪の前方にある地面に亀裂が走り、そこから木で形を整えられたジュゴンのような物体が人形に突撃をするが如く飛び出してきた。

 人形はガシッと両手で掴み吹き飛ばされないように努めるが、



「甘いよ! 樹縛(じゅばく)っ!」



 真雪の言葉をきっかけに人形に掴まれた木の物体が突如として変形し、(つた)のように人形の身体に巻き付いていき動きを奪う。



「最後だよっ! 樹撃(じゅげき)っ!」



 人形の足元にピキキッと亀裂が走ったと思った刹那、目にも止まらない速さで大木が突き上げてきた。下からの衝撃で空へと吹き飛ばされた人形はそのまま地面へと頭から落下して身体に纏わりついている蔦が徐々に大きくなり始め地面と一体化して完全に拘束することに成功した。



 そしてセイラの方だが、彼女の目の前には小さな物体が彼女を守るようにして立っていた。忍者装束を着込んでいて、手には忍者刀を持ち露わになっている目元は猫のような瞳をしていた。



「お願いします、ジコクさん!」



 セイラの声に応え、ジコクはコクンと頷き、



「任せるでごじゃる……ござる!」



 噛んだのを言い直したジコクは残像すら生み出すほどの速さで動き、もう一体の《自動人形(オートマタ)》に向かっていき刀を素早く喉元へと突き刺す。



「……む?」



 しかしジコクの身体も刀も小さいせいか、人形には致命傷にはならず刺したところであまり効果は見当たらなかった。人形がジコクを捕まえようとするが、ジコクは持ち前のスピードでその場からすぐさまセイラのところへ舞い戻った。



「ジコクさん! やはりその人形も刀だけでは倒せないみたいです!」

「主の言う通りでござるニャ。ニャら!」



 ジコクが刀を背中の鞘に納めると、両手を合わして印を組む。



「我がニャン法……忍法を受けてみりゅでござる!」



 ジコクが空へと跳び上がると、ちょうど人形の真上にまでくるという跳躍力を見せた。そしてジコクは右手の人差し指を立てて真上に向ける。

 すると上空に浮かぶ雲から驚くことに雷がその人差し指目掛けて落ちた。バチバチバチィッと凄まじい放電が周囲に起きて、その身を雷に包まれるジコク。



 そしてジコクが刀を抜いてそのまま身体をクルクルと回転させながら人形目掛けて落下していく。しかもその落ち方がまさに落雷そのものであり、真っ直ぐではなくジグザグに人形の頭上へと落ちていく。



「ニャニャニャニャニャニャニャニャニャニャァァァァァァァッ!」



 バチチチチチチィッとジコクの回転する身体が人形の身体を真っ二つに斬り裂き、苛烈な電撃を生み人形を黒焦げにしてしまった。

 そして人形がパタリと地面へと倒れ戦闘不能を確認したジコクは再び刀を納めると、決めセリフを吐く。



「ニャン法……ニャン法…………ニャン……法…………稲妻(いなずま)落としでごじゃる……ござる」



 忍法と一発で言って決めたかったのか、悔しそうにプルプルと身体を震わせている。

 真雪とセイラの戦いが終わった時、刃悟の戦いもまた終結に向かっていた。



「オラオラオラオラァッ!」



 激烈とも思えるほどの足技による連撃が、アクアラプトルの身体を殴打していく。すでにアクアラプトルの右腕は刃悟の技によって切断されていた。



「今度は足でももらってやらぁっ!」



 刃悟は水面蹴りの要領でしゃがみ込み蹴りをアクアラプトルの右足に向けて放つ。



「《火ノ原流・(かたな)》っ!」



 閃光のような蹴りがアクアラプトルの右足をいとも簡単に断ずる。支えを失ったアクアラプトルは地面に盛大に倒れる。



「もう遊んでないでトドメさしなさいよ刃悟ぉ」



 刃悟の近くでつまらなさそうに立っている彼のパートナーである善慈。彼は刃悟に手を出すなと言われてジッと佇んでいる。



「わ~ったよ! もう終わりだ!」



 








「おや? もう終わりのようですね」

「…………」



 ソージは真雪たちの戦いが終わり、あとは刃悟のみだということに満足気に微笑む。あのアクアラプトルも常人には決して倒し切れない相手ではあるが、さすがは【火ノ原流】を修めた刃悟だと感心している。



「こちらもそろそろ決着をつけますか?」



 ソージは冷たい視線をネオスへと送ると、意外にもネオスの表情は平静だった。まるでもう壊れて使い物にならなくなった玩具でも見るような視線でアクアラプトルや人形の残骸を屋根の上から見下ろしている。



「……使えないな」



 ネオスは不愉快そうに溜め息混じりに言葉を吐き、そしてある場所へと視線を巡らせた時、そこにいる存在に気づき微かに頬を緩める。

 ソージもそれに気づき怪訝に視線をネオスが見ている方向へと動かしてギョッとする。そこにはシャイニーをその腕で抱いたヨヨがいた。屋敷の門の近くでこちらの様子を見ていたようだ。シャイニーが起きてしまって屋敷の外へと出たところをヨヨが発見したのかもしれない。



(まさかっ!?)



 そう思った瞬間、ネオスは瞬時に空間に穴を作りそこに飛び込む。だがソージもまたヨヨのもとへ即座に移動するために、



「送り飛ばせ! 黄炎(おうえん)!」



 右手から黄色い炎を創り出しその身を包み込む。屋根の上にいた二つの存在が一瞬にして消失した。




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