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創炎のヒストリア ~転生執事の日常~  作者: 十本スイ
第三章 再会と卵編
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第七十四話 驚愕告白

 屋敷に入ると、すぐさま客室へとヨヨに誘導を受ける帰って来たソージたち。そこにはテーブルに茶菓子がすでに用意されていて、席にはフェムとテスタロッサも座っていた。



「あ、まだいたんですねフェムさん」

「ま、まだって何よソージ! アタシのお蔭でフェニーチェの卵が手に入ったんだから、少しは感謝してよね!」



 椅子から立ち上がり、ビシッと指を突きつけてくるフェム。



「これは失礼をしました。確かにフェムさんの仰る通りですね。ありがとうございました」

「フン! 分かればいいのよ!」

「ところで卵はどちらに?」

「ああ、それならソージの部屋に置いてあるわよ?」



 答えてくれたのはヨヨである。ミルの家に泊まる際に、ヨヨに卵を預けておいたので、その居場所を一応把握しておきたかったのだ。



「お手数をおかけしました。ありがとうございますヨヨお嬢様」

「いいえ、さあ、二人もどうぞかけて?」



 ヨヨが所在無げに立ち尽くしている真雪とセイラを席へと促す。二人が席に座り、ヨヨが座る場所にソージが向かい、彼女が座り易いように椅子を引く。

 それを羨ましそうに真雪が見ているのだが、ソージはそれには気づいていない。ヨヨが着席してからソージも座れと命を受けたのでヨヨの近くの席に腰を下ろした。



「さてソージ、どうだったかしら? 久々の旧友との一時は」

「ええ、何だか胸のつっかえが取れたような気分でした。このような機会を下さり、ヨヨお嬢様には感謝しています」

「ふふ、あなたたちも楽しかったかしら?」

「はい! 想くんはやっぱり想くんでした!」

「と、とても優しい方で安心しました! え、えぅ……」



 真雪とセイラがそれぞれ感想を述べる。ヨヨは大人びた笑みを浮かびながらソージに視線を向けてきた。



「ソージ? 彼女たちとの関係、聞いてもいいのかしら?」

「そ、それはですね……」



 チラリとフェムの方に意識を向けるソージ。それに感づいたヨヨだが、



「あら、別にあなたのことをフェムたちが知っても、それを無闇に誰かに公言したりはしないと思うわよ? だってそんなことをすれば……ねえ?」

「う……な、何よ! い、言うなって言うんなら誰にも言わないわよ!」



 フェムはヨヨの射抜くような視線を受けてたじろぐように言葉を繋いだ。



「それに、私はあなたのことを知っているもの。そうでしょ、ソージ?」



 実はヨヨには昔、自分が前世の記憶があることを教えている。それはカイナにもなのだが、彼女たちはそれを知っても、全く態度を変えなかった。

 前世の記憶があるからといってソージはソージでしょと、二人して同じ言葉を投げかけてくれたのだ。あの時は正直嬉しかったのを覚えている。



「その子……なのでしょ? あなたが昔よく話していた笑顔が特徴的な女の子」



 ヨヨの視線がソージから真雪へと動かされた。真雪は「え?」となるが、ソージは頬をポリポリとかきながら言う。



「やはりお嬢様には筒抜けですね」

「ふふ、当然よ」

「お嬢様の仰る通り、彼女がオレの前世での幼馴染、天川真雪。こちらの世界では真雪・天川ですね」

「……やはりそうだったのね」



 納得気に頷くヨヨだが、ポカンとしてしまっているフェムがそこにいる。



「え? あ、ちょ、ちょっと待って? ぜ、前世? こちらの世界って……ど、どういうこと?」



 当然、こういう様子になることはソージにも分かっていた。



「落ち着いて下さいフェムさん。あなたを信じて、話しますから。まずは話を聞いて下さい」

「う……わ、分かったわよ」

「…………了承」



 フェムもテスタロッサも首肯してくれた。



 ソージはフェムに自分が前世の記憶を持っていること。そしてその前世とは、真雪とセイラがいた地球という世界だということ。そして真雪とセイラと自分の関係をソージは懇切丁寧に教えた。



 あんぐりと、信じられないものを聞いているかのように口を開けたまま聞き入っていたフェム。



「え~っと…………それじゃ何? ソージは元々そこのマユキとセイラって子が住んでる異世界にいたってこと?」



 フェムにとっては地球が異世界なのだ。



「そうですね。先程も言いましたが、そこで私は十六年間過ごしました。ある事件で私は命を落とし、気づいたら赤ん坊、つまりこちらの世界へと転生していたというわけです」

「……そ、そんなことってあるの……?」

「…………驚愕事実」



 フェムだけでなく、表情には出していないがテスタロッサも驚いているようだ。



「まあ、だからといって何かが変わるわけではありませんが、オレはソージ・アルカーサであり、想二・朝倉でもあるのです」



 ソージはピンと人差し指を立てながら説明口調で口を動かしていた。それを唖然としながらも必死に思考を回転させて聞いているフェムに追い打ちをかける。



「あ、ちなみに真雪と星守さんは、【英霊器召喚】でこちらの世界にやって来た英傑ですよ?」

「え……ええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」



 その告白には、大声を出したフェムほどではないがヨヨも驚きを表していた。



「それは初耳ね。私はてっきりソージと同じように転生を受けたのだと思ったのだけれど……」



 そう言えばヨヨにも真雪たちが何故この世界にいることを説明してはいなかった。この屋敷へと来る前に、彼女たちには説明の許可を受けていたのでここで話したのだ。



「そうなの……あなたたちが今代の【英霊器】…………ということは一応出身国は【ラスティア王国】になるのかしら?」

「あ、はい、そうです」

「あら、マユキ、それにセイラね。敬語は不要よ。同じ年頃なのだから」

「え、でも……」

「それにあなたたちが【英霊器】なら、今の世の中ではあなたたちの方が立場は上よ。こちらこそ敬語を使わなくてはならないわ」

「そ、そんなの止めて下さい! 何だかヨヨさんに敬語を使われると恐縮しちゃいます!」

「ふふ、ならマユキも敬語を止めなさい」

「あ、はい……ううん、分かったよ!」



 ニッコリと真雪は微笑みを返す。その笑顔を見たヨヨは微かに頷きを見せる。



「なるほどね、確かに良い笑顔だわ」



 ヨヨが今度はセイラの方にも同様のことを言うが、彼女は普段から誰にでも敬語だということで、それが本質となら仕方無いということになり、セイラは敬語のままになった。



「う~ちょっと待ってよぉ~。ソージが転生者で、前世の記憶を持ってて、マユキとセイラは【英霊器】? 何かここにいる面子濃くない~?」



 フェムが頭を抱えてしまうのも無理はないだろう。転生者なんて言われても普通は信じられないはずだ。しかし実際にヨヨがそう言っている以上、それは正しいとフェムは思っているのだろう。



 何故なら彼女が意味も無くそんな嘘をつくわけがないからだ。仮に嘘だったとしてもメリットがまるでない。もし研究者か何かに嗅ぎつけられて面倒なことになるというリスクがあるだけだ。



 だからこそ、フェムは今のソージの発言に偽りが無いと判断せざるを得ないのだ。そしてさらに驚愕なのはやはり【英霊器】だろう。



「ねえ、本当にあなたたち【英霊器】なの? だって【英霊器】よ? 過去の英雄や勇者、つまり英傑の魂をその身に宿した超人なのよ? しかも異世界人よ? …………本当なの?」



 恐らくフェムの思考は今パニック状態であろう。それだけこの場に二人も【英霊器】がいることが異常なのだ。

 正直ソージには【英霊器】の凄さを十分に理解できているわけではないが、フェムの様子を見るだけで、とんでもないということだけは理解できた。



「う~ん、でも証拠ならありますよ?」



 真雪がそう言うとフェムは目を見張る。



「しょ、証拠? それってもしかして《覇紋(はもん)》のこと?」

「あ、よく知ってますね!」

「あ、別にアタシに対しても敬語じゃなくていいわよ」

「え? あ、でも想くんの話だとフェムさんは王侯貴族で偉いとか……」

「偉いのはアタシじゃなくて家よ。それに不愉快な奴はともかく、あなたは別に不愉快じゃないもの」

「あ、そ、そう? じゃ、じゃあ敬語無しの方向で……」

「名前もフェムでいいからね。コッチはテスタロッサよ。呼びにくかったらテスタでいいから」



 ペコリと頭を軽く下げるテスタロッサに、真雪とセイラも思わず同じ仕草をする。



「えっと、それで、《覇紋》よ、本当にあるの?」

「うん、見る?」

「見せて!」



 フェムが好奇心に負けて真雪に詰め寄っていく。



「あ、いいですね。オレも見せてくれよ真雪」



 ソージもただ好奇心に突き動かされただけなのだが……



「想くんのエッチィッ!」

「何でっ!?」





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