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創炎のヒストリア ~転生執事の日常~  作者: 十本スイ
第三章 再会と卵編
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第六十七話 ソージと真雪の登場!

 真雪たちも地震を感じて戸惑っていた。刃悟たちと出会い、結果的に《チェスモモ》を取得こそできなかったが、それでも刃悟に良い情報をもらった。

 山の麓にいる商売関係に強い情報屋。その人に聞けばどこかに《チェスモモ》の存在を示す情報が手に入るかもしれないのだ。



 それにもっと心を掴んだ情報は、この近くにソージ・アルカーサがいるとのこと。ここにいるなら是非会いたいと思ったが、今は何よりミルの母親を病から救うべく《チェスモモ》の情報を得ることだった。



 刃悟から話を聞いて、山の麓へと駆け出していた真雪とセイラだったが、もうすぐ麓に辿り着こうかというところで地震が起きた。

 ただの地震なら何てことはないが、かなり大きくそのまま動けないほどの揺れだった。しかも地震が起きてからは、先程からも襲ってきていた妖霊族が一瞬にして姿を見せなくなっていた。



「どういうことだと思うセイラ?」

「わ、わかりません……えぅ」



 勉強家で頭の良いセイラでも地震の理由が分からないということは、自分がいくら考えても真実には辿り着けないと思い答えを見つけ出そうとするのは止めた。

 真雪は自分が考えるタイプの人間ではないと自ら分析できている。考えるより先に動いて結果を掴むタイプなのだ。というより考えて行動して良い結果を得た試しがあまり無いのだ。



 勘で動く真雪にセイラはいつもヤキモキさせられている事実があるのだが、そういう真雪も真雪らしいといってセイラは付き合ってくれている。



「とりあえず麓まで急ごっか?」

「そ、そうですね」



 二人で決めて足を踏み出そうとした時、また地震が起きる。しかも今度はかなり長く、さらに揺れが治まりかけた時に悲鳴が聞こえた。それは麓の方からだ。木の隙間からは麓の様子が見える。



 目を凝らして見てみると、何か大きなものが観光客を襲っているような感じだった。何かのアトラクションかなと最初は思った真雪だったが、どうにもそんな感じがしない。



 それに何となく先程の揺れの原因があの大きい何かにあると思い、真雪はセイラに向かって、



「早く行こっ!」



 と全速力でその場を後にする。













 山の麓では多くの人たちが喧噪の中だった。それというのも、突然平和が壊されてしまったからだ。地面が盛大に揺れ、その揺れの大きさに誰もが軽い悲鳴を上げたり驚きを表情に出したりしていたが、最初の揺れではそれだけだった。



 突発的な地震だと皆が思い、怪我をした者もいなさそうだったので安堵していた。しかし次に起きた揺れで状況が一変した。

 突如として地面に亀裂が走ったと思ったら、その中から言葉を失うほどの巨大生物が姿を現したのだ。



 その体躯は、人間が頭を上げて見上げるほどの大きさであり、体中がまるで膨大な手術でも受けたかのように縫い傷だらけだった。右眼も今現在縫われているせいで開かれておらず、口も同様に黒い糸で縛られてある。肌も薄い緑色をしている。



 何よりも驚くのは、その巨大生物が人型をしていることだろう。ヨヨはその姿を見てゴーレムと呼ばれる人型に近い岩石で構成されている生物だと思ったが、肉感を見ると、どう考えても人のそれと遜色ないほどに見受けられた。



 しかしヨヨの知識の中には、目の前に現れた謎の人型生物の情報は無かった。そもそも緑色の肌をしている人間をヨヨは見たことも聞いたこともないのだ。

 いや、すでにヨヨの数倍ほどもある体躯をしていること自体が驚愕ではある。よく見れば両手にはドリルが装着されてあり、恐らくそれを使って地中を移動していたのだろうと察した。



 地上に現れた巨人がドスドスと大きな足音を立てて、近くにいる者たちを踏みつけようとする。観光客たちは悲鳴を上げながら必死で逃げ惑う。

 幸いなのは動きが遅いことであり、そのお蔭で皆が巨人の被害に遭わずに済んでいる。しかし一人の小さな女の子が逃げる時に転倒してしまう。巨人がその少女の姿を捉えるとゆっくり足を上げる。母親であろう人がその子に慌てて駆けつける。

 しかし巨人の足がすぐそこまで迫ってきている。



「ユーッ!」



 ヨヨは近くにいるユーに視線を促すと、ユーもヨヨが何を言おうとしているのか察したのか、身体からバチバチッと放電現象を起こしている。



「いくのっ! 《電攻石化(でんこうせっか)》っ!」



 ユーの身体から巨人に向かって電流が迸る。ユーの魔法は電流を当てた対象を石化できるという効果がある。ヨヨは、ユーの魔法ならこの場をどうにか治められると判断したのだ。



 真っ直ぐ向かう電流が巨人の足に当たるが、石化したのは巨人の足首までであり、全身の動きを奪うまでにはいかなかった。

 まだユーの魔法がそこまで強力ではなかったことと、巨人の身体の大きさのせいで魔法の効果が半減してしまっているのかもしれない。

 だがそのせいで巨人の足はそのまま親子に向かう。



「いけないわっ!」



 ヨヨもその状況を考えていなかったことを悔やみ、ただ叫ぶことしかできない。今にも巨人の足が親子を踏み潰そうとした瞬間―――――――



「――――――――――樹縛っ!」



 突然聞こえてきた甲高い声。そして一瞬のうちに地面から現れた蔦のようなものが巨人の全身を絡め取り、拘束して動きを奪った。

 スタッと上空から身体を回転させて現れたのは一人の黒髪少女だった。そしてもう一人、茶髪の少女が彼女の背後に陣取る。



「乱暴はさせないよっ! よく分からない巨人さんっ!」



 黒髪の少女。ヨヨは見覚えがあった。それは《シンジュ饅頭》を購入した時に邂逅した少女だった。綺麗な黒髪と吸い込まれるような黒目が印象的だったので覚えていたのだ。そしてその時も背後には茶髪の少女がいた。



「セイラ! 二人を安全なところに!」

「分かりました真雪さん!」



 そのやり取りで彼女たちの名前が判明する。セイラと呼ばれた少女は親子に駆け寄り、身体を抱きかかえるように立ち上がらせるとその場からヨヨがいる場所まで来ようとしている。



 そして真雪と呼ばれた少女は、巨人を睨みつけながら地面に手を触れようとしゃがみ込むがその時、またも地震が起こる。

 思わず真雪も体勢を崩しているようだ。逃げようとしていた親子とセイラも足を止めて転倒しないように互いを支えあっている。



 だが揺れが徐々に大きくなると、突如として先程のように地面に亀裂が走る。しかも彼女たちを囲うようにだ。そしてそこから同時に二体の巨人が姿を現す。



 どれも巨人だが、やはり最初に現れた巨人のように痛々しそうな身体を持っている。片腕が無い巨人(肌の色が黒)もいれば、一つ目の巨人(肌の色が青)もいた。合計三体。その迫力は言葉を失うほどのものだった。



 周りを巨人で囲まれた真雪たちもさすがに度肝を抜かれたように固まっている。だが巨人はまずセイラと親子に向かって一つ目の巨人が手に持っている棍棒のような武器を振り下ろそうと棍棒を振りかぶる。



「さ、させないよっ!」



 真雪が再度地面に手をついて何かをしようとした時、彼女の背後にいた拘束されている巨人が身体を震わせ、蔦を引き千切って自由を得てしまった。



「――――えっ!?」



 真雪もそう簡単に抜け出せないと思っていたのか慌てて後ろを確認する。すると今度は自分自身に足が迫ってきていたのを知り慌てている。咄嗟にその場から横に跳び、回避には成功するが、セイラの方は依然として危機は回避されていない。



 急いで駆けつけようとするが、巨人の棍棒を振り下ろすスピードの方が速い。このままではセイラと親子は――――――



 ―――――刹那、驚くことに巨人の棍棒が消失する。いや、棍棒だけではない。よく見るとその棍棒を持っていた腕ごと失われていた。



 巨人に囲まれている誰もがキョトンとした様子で、何が起きたのか分からず立ち尽くしていたが、ヨヨたち一行は、その状況を生んだ人物が誰か知っていた。

 上空から黒い人影がスタッとセイラの前に降りてくると、目の前にいる巨人に対しその人物が言い放つ。



「女の子に乱暴はいけませんよ、巨人さん?」



 ヨヨの頼れる執事、ソージ・アルカーサの登場だった。





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