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創炎のヒストリア ~転生執事の日常~  作者: 十本スイ
第二章 新たな家族編
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第四十二話 フラグ製造機?

「フムフム、アナタたちが欲しいのは探し人の情報だト」



 オルルが中心になってここに来た目的をノビルに話した。ノビルは真雪たちを一人ずつ観察していき、途中で何度か目を細めていた。



「そんで? 四人全員が同じ人の情報?」

「いえ、違います。ここに私とあの方が探している人物の特徴が書かれております」



 オルルは視線をコーランにサッと送り、懐から一枚の紙を取り出しノビルに手渡す。彼女はそれをジ~ッと見つめて、「ナルホドネ~」と呟き、その視線を真雪の方に動かした。

 真雪もオルル同様に紙に赤髪執事の特徴を書いたものを渡す。それもノビルは目を通すが「え?」と今度は小さく声を漏らしていた。

 それを見逃さず真雪は追及する。



「も、もしかして知ってるんですか?」



 真雪がカウンター越しにノビルに詰め寄る。



「え~っと、まあ、うちは情報屋だから、こういう人物探しも得意っちゃ得意なんだけど……」



 奥歯に物が挟まったような言い方をするノビル。そしてノビルが視線を紙から真雪の方に動かすと、



「一つ聞いてもいいかナ?」

「あ、はい」

「もし答えられなかったら別に無理して答えなくてもいいんだけド~、この人とはどういう関係?」

「…………分かりません」

「……はへ?」



 ノビルは真雪の答えにポカンと口を開ける。



「わ、分からないって……え?」



 ノビルの気持ちは分かる。人探しに情報を欲しているというのに、真雪の解答は、その人との繋がりに意味を見出せないと言っているのだ。

 それじゃ、見ず知らずの他人を探しているのと一緒である。



(ま、まあ別に深い繋がりなんてなくても情報を得たい理由はあるけどサ……)



 例えば、その人物が誰かの探している者である可能性。つまり真雪が人探しを依頼され、ここに情報を買いに来ていること。またその人物を殺しのターゲットとして情報を得ようとしている可能性。

 こういう理由の者たちは、今までにも何度か世話をした経験があるノビル。しかしどうにも情報屋の勘として真雪がそんな理由でここに来ていないと思った。



 彼女の必死さは今の一連のやり取りで理解できる。この紙に書かれた人物と、どうしても会いたいという想いが伝わってくる。そこには後ろめたさなど感じず、ただ自身が会いたいと思っている感じだ。

 それなのに紙には名前も、自分との繋がりも書いてはいない。これはどういうわけか……。



(何かすっごいワケアリっぽいネ~)



 本来依頼主のプライベートに突っ込まないノビルなのだが、今回の件に関しては、かなり好奇心が疼いてしまっている。

 何故ならその紙に書かれている特徴……赤い髪、燕尾服、使用人、オレンジ色と白い煙のような魔法を使う…………それらを見て、瞬時にしてノビルの脳裏にある人物が描き出されていた。



(これって、どう考えても――――――――――――――ソージちゃんだよネ~)



 ノビルは自分の思い描いている人物でほぼ間違いないだろうと予想してはいる。



(赤い髪だし、燕尾服来てるし、使用人というか執事だし、それにこのオレンジ色と白の煙って多分ソージちゃんの『創炎』魔法のことだろうシ……一体どういう関係かナ?)



 顔には出さずにチラリと真雪を見るノビル。



「あ、あの……な、何か知ってるなら教えて下さい! お願いします!」



 真雪は地面につく勢いで頭を下げる。

 別にノビルにとって金さえ払って貰えればどんな情報だって売るつもりでいる。しかし結構親しく付き合っている人物に関する情報については、ノビルもその情報の扱い方が気になったりはするのだ。



(もしワタシが流した情報でソージちゃんを困らせたりしたら、ヨヨちゃんの報復とかが怖いシ……しないと思うけど、もしこの子がヨヨちゃんを傷つけたら、恐らくその一端を担ったワタシも身を隠さないとソージちゃんに殺されちゃうかもだシ……)



 ノビルは基本的には平和主義者でもある。特に喧嘩を売ってはいけない人物リストを常に持ち歩いており、その中には「クロウテイルの屋敷の者」と記載している。



 クロウテイルの当主は、屋敷の者に手を出す輩には容赦が無い。一度他の情報屋がヨヨの屋敷の者についての情報を流したことで、屋敷の者に被害が及んだ時、当時執事長だったバルムンクとソージが二人がかりで屋敷の者を傷つけた者を殲滅したことがあった。



 そしてその情報を流した情報屋は、それっきり姿を見せなくなった。情報界から足を洗ったのか、それとも……。それを考えると、クロウテイルに関する情報を扱う時には慎重を期する必要があるのだ。

 頭を下げたままである真雪を見て、とりあえず一呼吸置く意味でも、安心を確信するまで話を聞こうと思った。



「とりあえズ~、アタマ上げてくれるかナ?」

「は、はい……」



 彼女の顔は不安でいっぱいだった。そこでハッとなり、あることを尋ねてみた。



「もしかしてだけド……」

「な、何ですか?」

「アナタ、この人のこと……スキ?」

「ええっ!? あ、そ、それは……その……あの……えと……うぅ」



 何だこの可愛い生き物はとノビルは思ってしまった。身長が小さいせいもあるのだろうが、モジモジと身体を動かして顔から湯気を出している真雪の姿は、思わず愛でたくなるほど破壊力抜群だった。



「……も、もしかしてそっちの子もスキ……とカ?」



 真雪の背後で同じように顔を真っ赤にしているセイラにも聞いた瞬間、ボフッと頭から盛大に真雪以上に湯気を出し、



「しょ、しょしょしょんにゃ、おしょれ多いことっ! えぅ……えぅ…………えぅ」



 もう二人とも身近に置いておきたい衝動にかられるほど可愛かった。というよりも……



(ソージちゃん、アナタ、この子たちに何したノ……?)



 彼女たちの身形を見るに、着ているローブはそれなりに汚れているので旅をしてきたのだろう。ソージを探してだ。

 恐らく幼い頃、ソージがバルムンクと共に世界中を旅して回っている時にでも彼女たちと会って……



(恋愛フラグを立てちゃったか……?)



 ここにはいない赤髪いつもニコニコ執事の見境なさに思わず溜め息が漏れ出る。

 しかしこれなら別に情報を当てたとしても、問題無いと判断できる。恋愛関係なら、それはソージが何とかする問題だし、何よりも……



(ヨヨちゃんの反応が面白そうだしネ!)



 心の中でほくそ笑むノビル。普段はキリッとしていて、完璧人間のようなヨヨも、ソージのことになるとその表情を見事なまでに崩すことがある。それはピンクな雰囲気になると決まってだ。



(まあ、当主とは言っても、ヨヨちゃんもまだ十代の女の子だしネ~)



 だがそこで一つ問題が出てきた。別に教えることはこれで良くなったが、彼女たちに情報を買えるかどうかだ。無論無料で提供するつもりは無い。いくらノビルが情報を教えた先に興味が向かっていても、ノビルの優先事項は金が払えるかどうかなのだ。



「ねえお嬢ちゃン?」

「え、あ、そ、その……違うんですよ! 好きとかじゃなくて、あ、でも決して嫌いとかでもなくてですね……あの……」

「ああいやいや、それはもういいかラ?」

「……ほへ?」



 真っ赤な顔で言い訳をする真雪を正気に戻し、話を進めていく。



「いいかナ? この人の情報は確かにあるヨ」

「ホ、ホントですかっ!?」



 彼女の目に希望の光が見える。



「良かったですね真雪さん!」



 セイラも嬉しそうだ。その近くにいるコーランたちも、真雪の喜びにつられて笑っている。



「だ・け・ど! ワタシは情報屋、オッケー?」

「あ、そ、それは……はい」

「つまりネ、情報を買うにも対価が必要なのヨ」

「……ど、どれくらい……ですか?」



 真雪が恐る恐る聞いてくる。ノビルは楽しそうに口角を上げると――――――――――――――




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