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創炎のヒストリア ~転生執事の日常~  作者: 十本スイ
第五章 クーデター阻止編
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第百六十七話 強さを目指して

 【鬼灯島】へ調査に向かった《裁軍》が消息を絶ってから《五臣》は慎重をきする意味で下手に近づかずに優秀な情報屋を使って《鬼》についての情報を得ることにしていた。



 また【サフィール国】の魔王ノウェムが雇ったノビルという情報屋から、非常に興味深い情報を聞いた。

 それは千手童子が眠りについたという情報だった。どうやら目覚めたのが少し早かったらしく、力を蓄える意味でもある程度の眠りが必要になるらしいということ。



 その情報を聞き、《五臣》が裏を取るために動き情報収集に動いた。どうやらノビルの情報に間違いなどないようで、他の情報屋からもそれらしい情報も聞けた。

 人々にとってそれは好機に思えた。相手の王が動けない今、恐らく彼らは本格的に動くことはしないだろうことが推察できた。



 故に今のうちに《混沌一族》全てを滅ぼすことが第一だとし、【鬼灯島】への集中攻撃を行うことを決めた。

 しかしその考えは期待を裏切ることになった。何故なら以前島があった場所へ向かってみると、そこには何もなかったのである。



 忽然と姿を消した【鬼灯島】。無論情報屋たちを総動員してその消息を追ったわけだが、何故か見つからない。

 皇帝を含めた《五臣》も困惑に包まれて、今後どういう対策をしたらいいか戸惑いを覚えたのだ。全力をとして島の捜索を始めることとなる。



 そして件の【鬼灯島】。



 それは深い深い海の中。当初島があった場所から遥かに離れた深海。そこに【鬼灯島】は沈んでいた。



「おい阿弥夜? 王子のためにもクソどもの魂を集めなくていいのかよ?」



 不動我が不機嫌さを露わにして台座に座っている。



「ああ、今この場所を知られるわけにはいかん。動くのは血文殊だけに任せる」

「何でだよ?」

「お前はハデ過ぎる。今は奴らに我らの存在を知られないように魂を集める必要がある。それともお前は誰にも見つからずに任務をこなせる器用さがあるというのか?」

「う……そ、そりゃ俺様はそういうのは苦手だけどよォ」

「なら我慢しろ。王子が目覚めるまでだ」



 阿弥夜の眼の先には階段がありその上には玉座があるはず。しかしその玉座には大きな繭が一つある。千手童子が眠りについた時に形成された繭だ。



「これからは《九鬼衆》復活をメインに動く。それでも動くのは血文殊だけだ。時間は少しかかるだろう」

「おいおい、ずっとこんなじめ~っとした場所で閉じこもってろってのか?」

「退屈ならお前も眠りに入ったらどうだ? 王子復活の前に魂を集めておくとなると、それなりに時間はかかる」

「ヒマだぜそりゃあよォ」

「不動我、あなたの行動が王子を危険に晒すことになるのですよ?」



 他の台座に立っている愛染が口を開くと、不動我は反論できないようで舌打ちを一つ。



「……多面童、お前なら血文殊とともに動いても大丈夫だろう。行ってくれるな?」

「承知」



 同じように台座の上で座禅を組んでいた多面童がその場から立ち上がると、その場から去っていく。それを羨ましそうに見つめている不動我。余程外に出掛けたいらしい。



「不動我、お前は少し我慢というものを覚えろ。何百年も復活を待ったのだ、今更数年が待てない道理はないはずだろ?」

「……ちっ、分かったよ。んで? 王子の復活はどれくらいかかるんだ?」

「さあな、そればかりは王子にしか分からない。我々は王子がいつ復活しても大丈夫なように態勢を整えておくだけだ」

「……了解だ。なら俺様も眠る。王子が復活しそうになったら起こせ」

「ああ、良い夢をな」

「けっ、嫌味かそりゃ」



 するとボンッと不動我が煙に包まれたかと思うと、カランコロンと台座の上に一本の角が落ちた。



「……阿弥夜、あなたも眠りに?」

「いや、眠らん。お前は眠っておけ。起きた時が我らが世界を支配する時だ」

「…………分かりました」



 阿弥夜が繭をジッと見た後、静かに瞼を閉じる。



「人間ども、しばらくは平和を噛み締めるといい。そのうち我ら《混沌一族》が貴様らを恐怖に落としてやる」











「え? 招集に応じる?」



 驚き声を上げたのは【ラスティア王国】のお抱え召喚魔法士であるラキだ。ラキが驚いたのは目の前にいる星守セイラが予想だにしない言葉を言ったからだ。



「はい、セイラもその……【オウゴン大陸】へ向かいます」

「ちょ、ちょっと待って下さい。もう送還の準備はできているんですよ? 今から招集に向かうとして、帰ってくる時間も計算して恐らく間に合いませんよ?」



 ちょうど三日後に送還ができる状況が全て整うのだ。もし時期を逃せば今度はいつ送還の儀式ができるか分からないのだ。つまり今を逃せば下手すれば十年以上も元の世界に戻れないかもしれない。

 真雪と話をしてセイラは、確かに送還をしてもらうかどうか自分で決めようと思っていた。そしてやはり元の世界に帰ることに心が傾いていたのだ。



 しかしそんな時、真雪がこれから戦う存在のことを聞いた。《混沌一族》と呼ばれる存在。一国をあっさりと滅ぼすほどの力を持つ者たちと真雪が戦うと聞いてセイラはゾッとするものを感じた。



 もしかしたら真雪が殺されてしまうかもしれないという考えが脳裏を過ぎる。それからはもうダメだった。彼女が命をかけて世界のために戦うのに、自分だけが素知らぬふりで帰ることなど選択できなかった。



「……本当にいいんですかセイラさん?」

「はい。もちろん向こうにいる家族には会いたい……です。ですが……真雪さんももう家族なんです!」



 そう、それはソージから聞いた言葉でもあった。クロウテイルに住む者たちは例外なく家族だと。少しの間だったが、セイラはソージや真雪と家族として過ごしていたのだ。

 そして真雪はセイラのことを想い、突き放してくれた。自分が決断できるようにだ。そんな彼女に危険が迫っているかもしれないと聞いて見過ごすわけにはいかない。



「ラキさん……セイラは………………ここに残ります!」



 自分の答えを見出したセイラだった。









 ヨヨからソージからの手紙を受け取った真雪。それを見てせめて直接顔を見せてくれたらいいのにと思いつつも、ソージらしいと感じて自然と頬が緩む。



「そっかぁ、想くんも頑張って強くなろうとしてるんだね」



 ソージは強い。だがそれでも今度の相手には届かないということ。



「だったら私も強くならなきゃね」



 ソージと戦って勝てる気がしない。それは今のソージよりも弱いということ。つまり《鬼》と対峙しても呆気なく殺されてしまう可能性が高い。

 幸い《鬼》の動きが止まった。再び動くにはまだ時間がかかるということ。



「その前にできることをするんだよ!」



 自分に対して喝を入れる真雪。

 ソージに置いて行かれないように、この世界に住むと決めた時点からずっと隣にいようと決めた。そこでふとセイラのことを想う。



「セイラ……もうすぐ向こうに帰っちゃうんだよね」



 ラキに聞いていた日時が近づいてきている。本当は一緒にこのい世界で暮らしたかったが、セイラにはセイラの人生があり、待っている家族もいる。強制はできない。

 見送りくらい行きたかったが、もう別れは済ませてある。



「バイバイ、セイラ……元気でね」



 真雪は一滴だけ涙を流すと、その涙を無造作に拭った後、笑みを浮かべる。



「よ~し、頑張るぞぉ~っ!」



 ソージに負けないため、そして親友のセイラに誇れるためにも真雪はさらなる成長を心に誓った。











 誰かの声が聞こえた気がしてソージはふと境内から空を見上げた。



 空は澄んだ気持ちの良い青が広がっている。これから先何度も見上げる光景。待っているヨヨや真雪のためにも必死で強くなることを決めた。



「腕が止まってるよ! 何やってんだいっ!」

「は、はいィィィッ!」



 雑巾を片手にぼ~っと突っ立ていたソージに、師匠である多音からの激が飛ぶ。慌てて床磨きを始める。



「うぅ~でも何で掃除なんだよぉ~」

「あ? 何か言ったかい!」

「い、いえ! 何もありません、サーッ!」

「何がサーだい! さっさと動きなっ!」

「はいィィィッ!」



 本当にこのままずっと掃除が修業だったらどうしようと心底思ったソージ。



(でもま、強くなったところを皆に見せたいしな。頑張るしかないか!)



 ソージはチラリと再び空に視線を一瞥してから、「よし!」と気合を入れて身体を動かしていった。





この後、少し構成を練る期間を設けさせて頂きたいと思います。

なるべく早く復活しますのでしばしお待ちを! すみません!!

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