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創炎のヒストリア ~転生執事の日常~  作者: 十本スイ
第五章 クーデター阻止編
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第百四十四話 真雪との再会

「マユキっ!」

「……え? あ、ヨヨッ!」



 突如【サフィール国】に来訪したのが【英霊器】と聞いて、ヨヨは真雪たちだと思っていたが、やはり【ラスティア王国】によって異世界から召喚された天川真雪だった。

 真雪は最初は驚きで目を丸くしていたが、すぐに嬉しそうに駆けつけてヨヨの手を取った。ヨヨも微笑を浮かべながら元気な真雪の顔を見て変わらない彼女の様子に安堵していた。



「驚いたわマユキ。まさかあなたがここに来るなんて」

「それはコッチのセリフだよ! 何でヨヨがここにいるの?」

「仕事でね。それよりあなたがここへ来たということは……クーデターの件かしら?」



 すると真雪ではなく、その傍にいた以前に屋敷へ真雪を迎えにきたコンファが目を鋭くさせる。



「クーデターのことを知っているということは……クロウテイル殿も何か関わりが?」

「はい。ですがもう仕事は終わりまして、これから帰宅しようとしたところだったのです。そこへマユキたちが来ているかもしれないと聞いて顔を見たいと思った次第です」



 だがヨヨは顔を動かしてキョロキョロとある人物を探すが見当たらず眉をひそめる。



「……セイラはどうしたのかしら? 一緒に来てないの?」



 真雪に尋ねると彼女の笑顔が崩れる。これは何かあったのだと思い、ヨヨもまた真剣な表情を作る。



「……何があったのマユキ?」

「……実はね」



 真雪から、この場にセイラがいない理由を聞く。



「……そう、セイラは元の世界に戻るかどうか迷っているというわけね」

「うん……」

「確かにおいそれと口を出していい問題ではないわね。私だってセイラのことを家族だと思っているけれど、セイラの両親や兄弟などは別の世界にいるものね」



 それはどうしようもない問題。どちらかを選べば、必然的にどちらかを捨てることになる。究極の選択だろう。セイラもこちらの世界にいたいと思うが、簡単に親たちを捨てられるわけはないだろう。今セイラは恐らく人生で最大の選択に悩まされているはず。



 だがそれはセイラ自身が答えを出さなければ必ず後悔する。だからこそ、下手に言葉などかけられないだろう。



「でも、あなたはいいのマユキ?」

「うん、私は想くんやヨヨの傍にいたいもん。お母さんたちにはもう謝れないけど、私はこの世界を選ぶよ」

「……分かったわ。あなたの覚悟、私も家族として背負いましょう」

「ありがとヨヨ」



 そこへノウェムがやって来て咳払いを一つする。



「そろそろいいかのうヨヨ?」

「あ、申し訳ありませんノウェム王」



 ヨヨは放置してしまったノウェムに謝り一歩下がる。彼女の姿を見てコンファたちは膝をついて礼を見せた。



「よいよい、そう畏まらなくてよいぞ」



 だがコンファとナナハスは膝をついていたが、和斗はポカ~ンとして、



「幼女だ……ま、まさかロリ魔王が実在したなんて……! やっぱり異世界は凄いな」



 そんな失礼なことを呟くが、ロリ魔王ことノウェムの耳には確かに届いてしまっており、彼女の額に青筋が立つ。



「ほほう、お、お主今何と言ったんじゃ?」



 ゴゴゴゴゴとノウェムの背後から怒りの権化とも思える炎が見える。



「え!? あ、そ、その……」

「誰が……幼女じゃと? それにロリ魔王? まさか余を侮辱しとるのかのう?」



 すると慌てたコンファが、右拳で和斗の鳩尾を貫く。



「がほぅっ!?」



 そして彼の頭を掴んでドゴッと床になすりつけて無理矢理謝罪させる。



「まことに申し訳ございませんでしたノウェム王! この者は常識が疎く、これは決して【ラスティア王国】の意ではございません!」

「うぅ……腹がぁ……」

「も、もしお気に召されぬのなら、この者の首を差し出しましょう! 是非とも一思いにスパッとやって頂きたい!」

「ちょ……それはシャレに……ならない……」



 和斗が腹の激痛に顔を歪めながら絞り出すように声を出す。コンファは、ここで和斗を始末できるのなら本望だと思っているようだが、ノウェムはその行為が真摯な態度に感じたのか、ノウェムの怒りが治まった。



「いや、余も大人げなかった。もうよいぞ」

「いえ! これは侮辱罪そのものです! どうかこの男に断罪の刃で貫いて下さい!」

「え……あ……いや、もうよいぞ?」



 コンファの剣幕にさすがのノウェムも気圧されていた。

 何とかナナハスがコンファを宥めて和斗の首の皮が繋がることになったが、コンファは和斗を見て舌打ちをすると「もう喋るな」と厳命してから一歩前に出た。



「この度は謁見の場を設けて頂き感謝致します」

「よい。理由は分かっておる。クーデターのことであろう?」

「はっ! 今回のクーデター阻止に、是非とも我々も助力させて頂きたいと馳せ参じた次第であります」

「ふむ、それは助かるのじゃ。戦力は大いにこしたことはない。しかもその中に【英霊器】がいるというのじゃから、断る理由はないのじゃ」

「それでは……」

「うむ、【ルヴィーノ国】を攻め落としにかかるのは三日後じゃ。それまでこの城でゆるりとすればいいのじゃ」

「ありがたき幸せにございます」



 コンファに倣ってナナハスも頭を下げる。








 謁見が終わり、ヨヨは再び真雪と顔を突き合わせていた。そしてその傍にはノウェムもいた。彼女もヨヨの知り合いに興味を持ったようだ。




「ほほう、まさかヨヨの知り合いが【英霊器】の一人だったとは驚きじゃな」

「ノウェム王、知り合いではなく家族ですよ」

「おお、すまんすまん。そうじゃったな」

「でもヨヨ、ヨヨはどうしてここに?」

「それはね、こちらにいらっしゃるノウェム王に雇われていたからよ」

「うむ!」



 ヨヨは真雪に仕事内容を話すと、「ふんふんふん」と相槌を打ちながら聞いていた。



「そっかぁ、ヨヨはそんなことをしてたんだ。それに想くんも、そのクーデターの人たちを倒したんだね」

「うむ! ソージは見事じゃぞ! 奴のお蔭でこの戦争は必ず勝てるのじゃ!」



 まるで自慢するように薄い胸を張りながら高笑いをするノウェム。



「で、でもいいのかな、一国の王様に気軽に話しかけたりして……」

「よいよい、余は確かに国王じゃが、それは公の場でのみじゃ。今はただの魔族の一人だと思って接すればよいぞ」

「は、はぁ」

「考えるだけ無理よマユキ。ノウェム王はそんな小さいことは欠片も気にはしないから。まあ、側近のジャンブ様はまた胃を痛めるでしょうけど」



 こういう態度の王だから、側近が苦労するのは明らか。だがノウェム王は民や城の者たちから大いに慕われている。それはひとえに彼女の人柄によるものだろうが、少しぐらいは自由行動も自重すればいいとヨヨも思う。



「でも困ったわね」

「む? どうしたのじゃヨヨ?」

「いえ、マユキがクーデター阻止に参加するのに、家族である私たちが指を咥えて待機……というわけにはいきませんから」

「だ、大丈夫だよヨヨ! これは王様からの最後の頼みだし、これが終わればまた屋敷に戻れるから私は引き受けたんだもん!」

「あなたは戦争の怖さを理解しているのかしら?」

「え……それは……」

「戦争は何が起こるか分からないわ。驚異的な力を持つ【英霊器】でも、まだあなたは発展途上だもの。戦いで傷つき、下手をすれば命を奪われることだってあるのよ?」



 ヨヨはそれが何よりも心配だった。身体に怪我を負うだけならまだいい。それくらいならソージが治癒できるし、ヨヨだって力になれる。しかし命を奪われてしまったらどうしようもない。それだけは何があっても避けたいのだ。



「本当なら戦争になんか参加してほしくないけど、これはあなたが決めたこと。それに国を背負っているということもあるわ。だから止めろとは言えない。でもそれを黙って見ていられるかといえば決してそんなことはないのよ」

「ヨヨ……」

「だって、あなたは私の家族だもの。ソージだって必ずそう言うはずだわ」

「……うん、ありがと」



 真雪はヨヨの心遣いに安堵しているような表情を浮かべる。ヨヨはしばらく考え込むと、顔を上げてノウェムを見つめる。



「ノウェム王、この場にソージを呼んでいいですか?」

「む? よいぞ。なら使いを……」

「いえ、その必要はありません」

「へ?」



 ヨヨの言葉に呆けたような声を出して固まるノウェムを放置して、ヨヨはネックレスを取り出して優しく両手で握り目を閉じる。そのネックレスは、ソージからもらったものであり、黄炎で刻まれた紋様が描かれてある。



(ソージ……来て)



 心の中で強く念じる。他の二人はヨヨの仕草を黙って見守っていると、突如としてヨヨの持つネックレスが淡い光を放った。そしてヨヨの前方に驚くべき光景が現れる。



 そこには何もなかったはず。だが一瞬――――――その場に一人の人物が姿を現した。



「お呼びですか、ヨヨお嬢様」



 赤髪の執事――――――――――ソージ・アルカーサの登場だった。




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