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創炎のヒストリア ~転生執事の日常~  作者: 十本スイ
第五章 クーデター阻止編
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第百二十一話 情報入手

新作投稿しました。趣味爆発のものですが、よければ一読下さい!

この夏休みの暇潰しにでもなれればいいかと思います。

「というわけで、ノビルさんに情報をお聞きしたいと思いやって来た次第なのですが」



 ソージはノビルに過激派魔族の統率者であるイエシンのこれまでの動きや、現在地などを聞きたいということを話した。



「フ~ン、なるほどネ~。ソージちゃんもいよいよ国との争いに関わっちゃったカ~」

「いえいえ、あくまでも私がするのはやり残しです」

「確かにそうだネ~、あの時きっちりソージちゃんがイエシンを倒しておけば問題なかったことでもあるシ!」

「面目次第もありませんが、だからこそ後始末は私がしなければなりません。後々ヨヨお嬢様の面倒事になりますから」

「オッケ~! ソージちゃんの言うことは分かったよ。でもやっぱり面白いことになってるよネ~。ヨヨちゃんが【ゾーアン大陸】に渡ったって情報が入ってきたから何事かと思ったけど、そういうことなら納得かナ? ヨヨちゃんにしても、【サフィール国】と繋がりが持てるのは嬉しいことだろうしネ」



 ソージはヨヨが今現在どこにいるのかなどは彼女に言っていない。それなのに、ヨヨが【ゾーアン大陸】に渡ったこと。それを手引きしたのが【サフィール国】だということもすでに知っている。相変わらずの情報収集の速さである。



「でもソージちゃん、確かにイエシンの情報あるけど、ちょ~っち高いヨ~?」



 キラリと守銭奴の瞳が光り輝く。



「承知しておりますよ。開き納めろ、紫炎」



 ソージは唱えながら右手を目の前にかざすと、右手から紫色の炎が出現し、、扉のような物体へと変化していく。この紫炎の特徴は、炎の中に生物以外ならほとんどのものを保管しておくことができるのだ。



 プッコロは驚いていたが、ソージは気にせずに腕を炎の中へと突っ込みゴソゴソと手を動かした。そしてそこから腕を引き抜くと、その手にはこの前来た時に出したようなケースが握られてあった。



「ワクワク」



 声にまで出さなくてもいいだろうと思うのだが、ノビルはケースをキラキラした子供のような瞳で見つめている。金のニオイでも嗅ぎ取っているのかもしれない。



「私が対価として差し上げるのは……」



 カウンターに置いたケースを開け放つと、ノビルはギョッとして目を見開く。



「ちょ……ちょっとソージちゃん……これまたビックリだヨ……」

「しっかり本人の許可もとってあるので安心して下さい」



 ケースの中にあったのは一つの小瓶。その中には白い粉末に少し力を入れると壊れそうな何かの欠片のような物体が幾つか見える。



「フェニーチェの卵の欠片です」

「……そっかぁ……これがそうなんだネ……」



 瞬きも忘れてノビルはジ~ッと小瓶を眺めている。



「ソージちゃんが卵を持ち帰ったって話は聞いてたけど、初めて見たヨ……フェニーチェの卵の欠片」



 どうやらその卵が孵ってシャイニーが産まれたことは知らないようで安心した。もし知っていればその情報もいずれ誰かに売られるかもしれない。そうすれば余計な面倒が生まれる。



 しかし、ソージは彼女に関しては、どうもソージたちを敵に回すつもりはないようで、クロウテイルの屋敷に関する情報を誰かに売る時も、相手を見て選び、伝える情報も選別しているようだ。



 だからもしシャイニーのことがバレても、無闇矢鱈に奇人などに情報を売ったりはしない。下手をすればクロウテイルを敵に回して、ソージの粛清にかかることを恐れている節がある。



 まあ、過去にソージがそういう情報屋を葬ったことがあるので、その情報が彼女にもいっているのだろう。少しくらい儲け話が流れても、ソージたちを敵に回すよりは良いと考えているのかもしれない。



 というよりも、常連であるヨヨ(金づる)を失うことに一番恐れを抱いているのかもしれない。

 しかしそれでもソージからわざわざシャイニーのことを教えるつもりなどは毛頭ない。そんな必要がないからだ。彼女が独自で調べる分には手は出さないが。



「偽物を持ってくるソージちゃんじゃないだろうけど、一応調べさせてもらうからネ!」

「ええ、当然ですね」

「おいで、モフスケ!」

「モッフフ~!」



 突然カウンターの上に魔法陣が出現し、そこから現れた茶色のモフモフの体毛で覆われた犬のぬいぐるみのような小さな物体。二足歩行をしてはいるが、愛らしいパッチリとした目をしていて、右眼にはモノクルをしている。尻尾が丸っこいのでつい触りたくなってしまう衝動にかられる。



「いつものように鑑定頼むヨ!」

「モフモフ~」



 小瓶をその小さな手でノビルから受け取り、右眼だけでモフスケはジ~ッと見つめた。



「モフモフモフモフモフモフ~」



 モフスケが鑑定しているところをプッコロが珍しそうに見つめながら、



「これは素晴らしいですな~。魔法生物の作り手ですか」

「はい。モフスケさんはノビルさんが魔法によって創り出した魔法生物です。その能力は鑑定。こうして物の価値などを見定めることができるので、情報屋であるノビルさんにとってとても頼りになる能力持ちですね」

「他にもおられるのですかな?」

「ええ、あと二体ですよ」

「ぶ~こらソージちゃん! 無料でワタシの情報喋っちゃダメだヨ~!」

「あはは、すみませんノビルさん」

「モッフ~! モフット鑑定終了~!」



 そうこうしているうちにモフスケの鑑定が終わったようで、



「コレ本物モフ! 問題なしモフ~!」



 頬に両手を当てながら頭を可愛らしく動かしながら喋るモフスケは、とても見ていて和みを感じる。



「ありがとモフスケ。んじゃソージちゃん、イエシンの情報だけでいいんだよネ?」

「はい、お願いします」

「うん、オッケ~。出てきてフワキチ」



 またもカウンターに魔法陣が出現し、そこから今度は羊のようにフワフワな真っ白の体毛に覆われた、これまた二足歩行するぬいぐるみが出てきた。ただしお腹にはタンスのように取っ手が幾つもついている。



 チョロンと巻かれている尻尾が可愛い。しかもこちらはお腹に取っ手のようなものが付いている。しかも何故か日本の警察がするような敬礼をしていた。



「情報は鮮度が命でありますフワ!」

「ヨシ! んじゃお腹開けるヨ~」



 ノビルがフワキチのお腹の取っ手を引っ張ると、引き出しみたいにスライドされて出てきた。中に入っているのは数枚の紙だった。

 その紙を取り出し、ソージに手渡す。



「そこに書かれてある情報は今現在の情報だけど、すこ~し困ったことがあるのヨ」

「何です?」

「イエシンってのはね、結構慎重派で、一つのところにあまり長く滞在しないらしいのヨ。つ・ま・り、倒すんだったらお早めにってことかナ!」

「なるほど。注意しておきます」

「ほほ~この情報収集能力……とても一介の情報屋とは思えないほどのクオリティですな。欲を言えば我が国お抱えとして手腕を揮ってもらいたいですが……」

「ゴメンね小人サン~。ワタシは一人のオトコに縛られたくないのよネ~」

「お、男って……」



 プッコロはノビルの発言に頬を引き攣らせる。まあ、国お抱えになると、いろいろ制限もかかってしまうので、幅広く商売をするノビルにとっては窮屈だろう。



「あ、でもでもいち情報屋としてはお役に立ちますヨ~。もっちろんそれなりのものを頂きますけどネ!」



 ウィンクをしながら指でコインの形を示すノビル。



「あはは、プッコロさんが目を丸くしてますよノビルさん」

「ノビルは、人をからかうのがスキ過ぎるモフ~」

「拘束して喜ぶほど伸びるはドMではないですフワ!」



 ソージの言葉に反応してモフスケとフワキチがそれぞれ感想を述べる。



「……言い過ぎじゃなイ……?」



 ジト目でソージたちを睨みつけてくるので、ソージたちは目を逸らしてそっぽを向いた。そしてソージは思い出したように、



「あ! これから用事があったのを思い出しました! さあプッコロさん参りましょうか!」

「え? この後そのような用事がありましたかな?」



 ここは空気を読んでほしかったが、プッコロはどうやら苦手のようだ。そしてガシッと肩を掴まれる感触を感じる。……ノビルだ。



「ソージちゃん、泣いちゃうゾ?」

「う……も、申し訳ありませんでした」

「ま~ったく、ソージちゃんは乙女心が分かってないよネ~。だからマユキちゃんやセイラちゃんも心配させちゃうんだヨ」

「え……ええ!?」



 思わず息を呑みノビルを見つめたが、すぐにハッとなって気づくものがあった。



「あ、そっか……真雪たちがある情報屋を訪ねたって聞いてましたが……ノビルさんのことですね?」

「正解で~ス! どうどう? 二人は元気だった?」

「元気でしたよ。今はちょっと出かけてますけど」

「知ってるヨ! 【ラスティア王国】に一時帰国してるんだよネ?」

「…………本当に何でもご存じなのですね?」

「ウフフ~すっごいよネ~ワタシ~」



 自画自賛しているが、そこに違和感などはない。彼女は間違いなく超一流の情報屋なのだから。



「あはは、ノビルさんには負けますよ。それでは私はさっそくこの情報をもとに動いてみることにします」

「ウンウン。何か分からないことがあったらまたおいでヨ」

「お、その時は無料ですか?」

「は? 何言ってんノ?」

「ですよね~」



 そこは譲ってくれないノビルだった。





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