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自分の想い

放課後。

私は、グランドに足を向ける。

護を近くで見たかったから…。

でも、雪菜ちゃんが邪魔をしてくる。

「練習の邪魔です。向こうに行ってください」

凄い剣幕で言うから、仕方なく教室に戻った。

あからさまに、嫌われてるなぁ…。

そりゃあ、そうだよね。

雪菜ちゃんからしたら、恋のライバルだもんね。

恋敵に塩を送るのは、当たり前か…。

結局、何時もの様に教室の窓からグランドを見る。

護と、目線が合う。

護、私はここから、応援してるから…。


「詩織、帰ろー」

護が、教室まで迎えに来てくれる。

「うん」

笑顔で頷く。

廊下を下駄箱に向かって歩きながら、護が。

「さっきは、ごめんな。雪菜が、追い払うような事して…」

申し訳なさそうに言う。

見てたんだ。

「ううん。何となく、わかってたから」

心配させないように笑顔で言う。

本当は、近くで見て居たかったんだけどね。

「何で、そんなに物分かりがいいんだよ。少しは怒ってもいいんだぞ」

「そうかもしれない。だけど、雪菜ちゃんの気持ちわかるから、怒れないよ」

私がそう告げた時だった。

「そんなのわかってもらわなくても、結構です」

何処からも無く声が、飛んできた。

「…雪菜」

護が、呆れたように言う。

いつから居たんだろう?

まさか、護を待ってたんじゃ…。

雪菜ちゃんが私達の間に割り込んできて。

「護兄さんに送ってもらおうと思って、待ってました」

そう言いながら、護の腕に絡み付き睨んでくる。

私の不安を裏切らない行動をしてくれる、雪菜ちゃん。

もう、なんでこうなるのかなぁ?

あんな強気に出られたら、引き下がるしかないか…。

って、弱気になってる自分が居る。

「詩織先輩は、一人で帰れますよね。だから、護兄さん、私を送ってください。親にも、“護さんに送ってもらいなさい“って、言われてますし…」

護に甘えるようにして、雪菜ちゃんが言う。

親まで出てきたら、何も言い返せれない。

その言葉だけで。

「…わかった。一人で帰ります。また、明日ね」

私は、踵を返して歩き出した。

その手を不意に捕まれた。

「駄目だ!」

護が、私を引き寄せる。

エッ…。

「エーッ、何で? 護兄さん送ってよ」

雪菜ちゃんが、可愛くねだる。

あーあ、負けてるなぁ。

「護、そうしてあげなよ。私は、大丈夫だから。家も近いし、電話一つするだけで、妹思いの兄が迎えに来てくれるし…ね」

私はそう言って、護の手を振りほどこうとしたが。

「だから、嫌だって言ってるだろ。なぜ、オレの気持ちを無視するんだ。オレは、詩織を送って行く。雪菜は、一人で帰れるだろ。お前の家の方が、詩織の家より近いしな!」

護が、苛立った様に言う。

「そんなぁ。護兄さんに送ってもらわないと、私が困ります」

半泣きになって言う雪菜ちゃん。

そんな雪菜ちゃんを見ていられなくて。

「じゃあ、三人で帰ろ」

と、口からこぼれた。

それを聞いた二人が驚く。

私だって、自分で言って驚いてるんだから、仕方が無いよね。

「だって、ここでこのまま言い合ってても帰れないよ。だったら、一緒に帰った方が、早いよね」

笑顔で言う。

「確かに、その方が早いが、詩織は、それでいいのか?」

護が、確認してくる。

私は、黙って頷く。

雪菜ちゃんの顔が、膨れっ面になる。

雪菜ちゃんにとっては、面白くないよね。

「ヤダ!」

雪菜ちゃんが、駄々をコネだした。

「嫌ならいいぜ。雪菜、一人で帰れ!」

護が、突き放す。

「わかった…」

雪菜ちゃんが、渋々了承する。

「雪菜、腕放せ。オレは、詩織のだ」

護が、雪菜ちゃんに強く言い放った。

私はその言葉が、嬉しかった。

雪菜ちゃんは、絡めていた腕をほどいた。

護が、私の腕を放して手を握りしめてきた。

エーッと。

雪菜ちゃんには、悪いけど嬉しい。

護が、力一杯握ってくる。

私は、握り返していた。

「ほら、帰るぞ」

護が言うと、雪菜ちゃんが我に返るように動き出した。


「まずは、雪菜の家からだな」

護が言い出した。

「最初は、詩織先輩の方からです!」

雪菜ちゃんが、主張しだす。

「ここは、雪菜の方が学校から近いし、オレも遠回りになら無いからな」

護が、決める。

まぁ、私が口出せることじゃないし…。

「そんなぁ…」

落胆する雪菜ちゃん。

私は、雪菜ちゃんの家知らないし、護に任せるしかない。

私達は学校を出ると、雪菜ちゃんの家に向かう。

当然、会話は無い。

何を話せばいいんだろう?

頭の中で、色々と考えていた。

「雪菜の家、この角を曲がったって直ぐだから…」

護が、ボソッて言う。

「そうなんだ。本当に近いんだね」

って、私達と帰る方向が、まるっきり逆ってこと?

それって、私を送ってってから、護と一緒に長く居たかったって事になる。

数分前のやり取りを思い出す。

中々の策士だ。

私は胸の中で、苦笑いする。

「じゃあな」

突然、護が言うから、雪菜ちゃんの家に着いたのがわかった。

やぱっり、この距離なら、一人でも十分なんじゃ…。

そう思ってると。

雪菜ちゃんが、護の頬にキスをしてた。

なっ……。

私が、言葉を失ってると。

「送ってくれてありがとう」

満面の笑みを浮かべて言う、雪菜ちゃん。

したり顔で、私を見る。

でも、護が嫌そうな顔をして、制服の袖で拭き出した。

「やめろよ! そういうの。迷惑だ!」

本当に、嫌そうな顔をしてる護。

それを見ていた雪菜ちゃんの悲しそうな顔。

今にも、泣き出しそうだ。

「詩織、行くぞ」

そう言って、私の手を引っ張る。

私は、引っ張られるまま歩き出した。


「護。雪菜ちゃんって、いつもああなの?」

しばらく歩いて、私は聞いてみた。

護は、振り返りながら。

「さっきにあれか? いつもって訳じゃないけど…」

そっか。

あれは、私に見せたかっただけなんだ。

「じゃあ、私がここでキスしていいって聞いたらどうする?」

「して欲しい。って言うか、オレからするかも…」

って言いながら唇を塞ぐ。

優しいキス。

護の想いが、伝わってくる。

そっと唇が離れる。

「何も、本当にしなくても…」

私は、恥ずかしくて抗議する。

人の往来がある、こんな所で…。

「ずっと、したいの我慢してたから」

護が、堂々と言う。

全く。

これじゃあ、私が出来ないじゃんか。

私は、剥れた。

「詩織どうしたんだ?」

護が、私の顔を下から覗き込むように伺ってきた。

「ん、もう…」

私は、その頬にキスをする。

「エッ…」

護が、慌て出す。

次第に顔が赤くなっていく。

そして、雪菜ちゃんの時と違い、頬が緩む護。

「やっぱり、嬉しいな。されるのも悪くない」

って、笑顔を見せる。

「ほんと?」

「うん。好きな子から、なおさら嬉しい」

「なら、もっとしてあげようか?」

私が、照れながら言うと。

「要らない。大切にしたいから」

って、断られた。

そうだよね。

私が、残念そうに思ってると。

「そうだ。次の試合の時間九時からなんだけど、大丈夫か?」

急に、思い出したかの様に言う護。

「うん、大丈夫だよ。お弁当、用意するね」

「マジで」

私の言葉に、嬉しそうに喜ぶ護。

「嫌いなのある?」

「オレは、無いよ」

好き嫌い、無いんだ。

「楽しみにしててね」

「わかった。じゃあな」

護が、私の頭を軽くポンポン叩く。

話してるうちに家に着いちゃったんだ。

寂しいけど、しょうがないよね。

「また、明日ね」

私は、護の唇に自分の唇を重ねた。

護が、大きく目を見開き、驚く。

「ああ…」

驚きすぎて、一言しか返してくれなかった。

そんな護の背中を見送った。


今日一日の事を振り返った。

護を初めて、怒らせてしまった事。

護に愛されて、愛した事。

あの時は、本当に嬉しかった。

雪菜ちゃんの存在も、大きいのかな。

一番わかったのは、護が私にとって一番大切な人だと認識したこと。

ずーっと、傍に居たい。

そう思った。

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