表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/47

母の想い

私は、護に抱かれながら、幸せを噛み締めていた。

「護…」

私は、護の顔を見上げる。

「どうした?」

護が、怪訝そうに言う。

「私、やっぱり、護が一番好き」

私は、護の首に腕を回して、キスをする。

「こら、またそんな事を…」

顔を赤くする。

「それより、お前。やっぱり、痩せたな」

「そっかなぁ…」

「うん。文化祭の時に倒れそうになってた時よりはな」

よく覚えてるな…。

「それ以上、痩せるなよ。ぶっ倒れられても、オレが困る」

「善処します」

私は、笑顔でそう答えた。

脱ぎ散らかった服を集めて、それを着ようとしたら。

「まだ、いいじゃん」

護に抱きすくめられる。

「でも、誰か来たらどうするのよ」

その時。

コンコン。

ドアがノックされる。

私は、慌てて服を着る。

「はい…」

護が返事する。

「俺だけど、入ってもいいか?」

優兄が、遠慮がちに言う。

「ちょっと待ってろ」

護は、返事をするが慌てる事もなく、服を着ていく。

余裕な表情で、私の方を見て確認してから、ドアを開ける。

「何してたんだ?」

優兄が、護に聞く。

私を見ると、察しが付いたようで…。

「狼…」

って、小声で護に言う。

「お前…」

護が、顔を赤くしながら、優兄を部屋に引っ張り込んだ。

「何か、用があったんじゃないのか?」

護が、話を変える。

優兄が、私を見る。

これは、私が邪魔なんだね。

「私は、退室します」

「そうしてくれると助かる」

優兄が、笑顔で言うから、私はそのまま部屋を出た。

なんか、珍しいな。

優兄が、悩んでるなんて…。

普段、悩みがなさそうに思うのに…。

「詩織」

自分の部屋に向かう途中で、お母さんに呼び止められた。

「何?」

不思議に思ってる私に。

「一緒に買い物に行こう」

って…。

何だろう?

「うん。じゃあ、着替えてくるから…」

「わかった…」

お母さんの様子が、おかしい。

部屋に戻って、カジュアル系の服に着替える。

コートと鞄をもって、お母さんが待つリビングに…。

「行こう、お母さん」

私が声をかけると、何か考えてる風なお母さん。

「そうね」

って、ソファーから立ち上がると鞄を持つ。

私達は、玄関を出た。



「詩織…」

「うん?」

「護君の事、本当に好きなんだね」

「うん、大好き!」

私が、笑顔で返すと。

「でも、これだけは言わせてね。学生のうちは、避妊してね」

お母さんが、心配そうに言う。

「エッ…」

「護君が、ちゃんと責任を取れるようになるまでは、ちゃんとして。お母さんの時は、それで大変な目に遭ってるから…。詩織には、苦労して欲しくないの」

お母さんが、恥ずかしそうに言う。

「お父さんもこの間、少し話してたと思うけど、学生結婚して、すごく大変だったて言ったでしょ」

「うん」

「その時は、お父さんもお母さんも大学生でね、ちゃんと仕事していた訳じゃないの。でも、お父さんは、お母さんの中に新しい命が宿ってる事を知って、逃げずにちゃんと守ってくれて、しかも、大学行きながら仕事して、大変だったけど、お母さんは幸せだった。今だって、幸せだよ。お父さんはお母さんを大切にしてくれてるし、子供達も元気に育ってくれた」

お母さんが、嬉しそうに言う。

「若いうちに苦労してるお母さん達の二の舞にはしたくないって、お父さんと約束してるの。だから、詩織にはお母さんみたいになって欲しくないの。大好きなのは、わかってるから…。護君にも苦労させたくないから…」

心配してくれてるんだ。

そうだよね。

今の私達は、学生であって責任が取れる立場じゃない。

「お母さん…」

「詩織から、護君に言ってもらえるかな?じゃないと、お母さん達の二の舞になっちゃうよ」

おどけて言うお母さん。

「うん…」

「さて、今日の夕飯は何にしようかなぁ?」

お母さんは、気を取り直して、話を変えてきた。

「じゃあ、餃子と麻婆豆腐がいいなぁー」

「詩織が手伝ってくれるなら、それでもいいけど」

お母さんが、冗談交じりで言う。

「食べ盛りの男が四人も居るから、結構量が要るしね」

そう言いながら、お母さんは、牛豚合わせのミンチと格闘中。

その間に私は、椎茸、玉葱、ニンニク、人参、キャベツと豆腐をかごに入れる。

「お母さん、後は?」

お母さんに聞くと。

「後は…。卵と牛乳と食パン、餃子の皮…」

と、返ってきた。

「重いのばっかり…」

私が文句を言うと。

「それが、仕事だからね」

って、お母さんが笑って言う。

「普段から、こんなんだからね。詩織が一緒に来てくれると本当に助かるんだよ」

お母さんが言う。

「ゴメンね。手伝えなくて…」

私が、落ち込み気味に言うと。

「あらあら、どうしたの。いいのよ、詩織は、学校の事で忙しいでしょ。時間がある時にたまに手伝ってくれるだけで、お母さんは助かるんだからね」

お母さんの笑顔が、眩しい。

やっぱり、お母さんは凄いや。

「私も、お母さんみたいになれるかな?」

「なれるよ。詩織ならね。私でもなれたんだからさ」

嬉しいよ。

お母さんにそういう風に言ってもらえて…。

「さぁ、早く帰って、下ごしらえしちゃわないとね。お兄ちゃん達、お腹空かしてるだろうし…」

お母さんと二人で家路に着く。

私は、お母さんに色々と教わった。

そして、二人でたわいの無い話をしながら帰った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ