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高校最後の試合なのに

切るところがなくて、長くなってしまいました。

ごめんなさい。


ピピー。

試合開始のホイッスルが鳴る。

コイントスが行われて、護が選択権を取ると、試合が始まった。

「詩織。元彼と今彼が闘ってるの見てても大丈夫?って言うか、先輩は知ってるの?」

里沙が、回りに気を使いながら言う。

「うん。護には、浅井君の事、話してあるよ。だから、大丈夫」

「もしかして、この間のあれがそうなの?」

「そうだよ。私と浅井君の関係も、どういう付き合い方をしてたのかも、話してあるよ」

「そっか…」

里沙の声で、佐久間君が。

「何が、そっかなんだ?」

私と里沙の間に割って入ってきた。

「何でもないよ」

私と里沙は、声を揃えて言う。

「それより、応援しなくていいのかよ。押されてるぜ」

私は、グランドを見る。

高陵学園に攻め込まれてる。

護も必死に防ごうとしてるんだけど、空回りしてるみたい。

「護、頑張れ!」

「ファイト!」

私達は、声を張り上げて応援する。

キャプテンの護が、回りを見ながら後輩に指示を出す。

ここぞとばかりに浅井君が、シュートを放つ。

それをキーパーが、セーブする。

そのボールが、前線に居るメンバーに渡る。

護が、すかさず指示を出してる。

そして、護と浅井君の一騎討ち。

「ファイト! 護」

護のサッカーセンスを改めて、凄いと思った。

サッカーをやってる護は、堂々としててカッコいい。

護が、フェイントをかけて、浅井君を交わそうとするけど、浅井くんも食らい付く。

護のフェイントに翻弄する、浅井君。

そして、浅井君を抜いて、ゴール前に持ち込んでいく。

ディフェンダーが、護の行くてを遮る。

護は、ボールを一旦戻して、ディフェンダーを交わす。

すかさずパスを貰うと、そのままシュートする。

それが、ゴールネットを揺らす。

「やったー!」

私と里沙は、手を採ってはしゃぐ。

護も、ガッツポーズを決めている。

「詩織ちゃんの彼、カッコいいー」

柚樹ちゃんが、大きい声で言う。

その横で、忍ちゃんも頷いてる。

「でしょ」

私は、得意気に言う。

「やっぱり、格好いいな」

拓人君が言う。

ウフフ…。

護が、誉められるのって、くすぐったいけど嬉しい。

「次、始まる」

誰が言ったかは、わからなかったがグランドに注目する。

うわー。

パス回しが、早い。

押されてるよ。

「ファイトー!」

「なぁ。さっきから、うちのキャプテンと相手校のキャプテンが競ってるんだけど…」

凌也が、不思議そうに言う。

私も、そっちを見る。

浅井君のマークに護がついてる。

技術面においては、わからないけど、体力面では護のが勝ってる。



ディフェンダーが、ボールを奪う。

それが前線に送られる。

護が、絶えず指示を出してる。

本当に的確の指示で、メンバーが動き出す。

後輩達が護の事を信頼してるから、動きが機敏だ。

護のマークに着いてる浅井君だけど…。

護は、浅井君の隙をついて、前線に上がって行く。

浅井君が気がついて追い駆けるが、護の瞬発力には敵わない。

護が、フリーになる。

そこにパスが通る。

そのまま、ドリブルで上がって、センターリングをあげ、フォワードに渡り、そのままシュートに持ち込む。

それは、ゴールキーパーに阻まれ、弾き返されるが、それを見越していた護が、捕らえて、ヘディングで押し込んだ。

「やったー!護、すごーい」

私の声が、大空に吸い込まれていく。

護が、私に向かってガッツポーズを見せる。

私は、笑顔で手を振る。

護の周りに後輩が集まる。

やっぱり、後輩にも慕われてるんだ。

「やべぇな…」

何処からともなく声が聞こえてきた。

私は、辺りを見渡したけど、わからなかた。

ピッピー。

前半終了の合図。

2対0で折り返す。

私は、ベンチに駆け寄る。

けど…。

「護兄さん。はい、タオルとスポーツドリンク」

雪菜ちゃんが、当たり前のように護に渡してる。

しょうがないか…。

彼女、マネージャーだし…。

「ああ」

護は、そっけなく返事して、それを受け取ると、ベンチに座る。

雪菜ちゃんが、そんな護に視線を投げ掛けている。

けど、護見向きもしない。



私は、その後ろ姿を見ながら。

「護…」

声を掛ける。

本当は、声を掛けるのを戸惑っていたのだけど。

集中してる時に声を掛けていいのか?

って…。

でも、声を掛けずにいられなかった。

「詩織」

護が、私の所に来る。

「護、凄くカッコいい。惚れ直しちゃった」

私が言うと。

「…また、そんな笑顔で言ったら、反則だって」

護が、照れて顔が赤くなる。

「集中してる時にゴメンね」

「大丈夫だ。今は、雑談してた方が、後半戦に持ってきやすい」

護が、私を抱き寄せる。

護の鼓動の音が聞こえる。

「護…」

「ここでキスするわけにはいかないからな。今は、このままで居て…」

私は、去れるままでいた。

「応援しすぎて、声からすなよ」

「うん。浅井君には、気を付けてね。彼、ここぞとばかりに延びるタイプだから…」

「ああ、わかった」

私は、護から解放されて、元の場所に戻った。



「何、話してたの?」

戻って、直ぐに里沙に聞かれた。

「浅井君の事」

冷静に答える。

その答えに、里沙の目が点になる。

「彼、試合して延びるタイプだから、護に注意してたの」

「そっか。詩織は中学の時に浅井君と同じ部だったから、センスの事知ってるもんね」

「うん。だから、後半の方が動きがよくなるはずだから、気を付けてって伝えたんだ」

そんなやり取りを見ていた、佐久間君が。

「なぁ、水沢。相手校のキャプテンとも知り合いな訳?」

って、聞いてきたから、何て答えようか考えていた。

「あいつ。さっきから、水沢の方を見てる」

エッ…。

私は、言われて浅井君に目を向ける。

確かに、こっちを見ていた。

何だろう?

「知り合いって言うか。中学の友達だよ」

間違ってないよね。

佐久間君には、関係ない事だから、伏せておいても大丈夫だと思っていたが。

「それだけじゃないだろ。あいつの眼差し、物凄い熱い視線だぜ。俺に似てるんじゃないのか?」

鋭い指摘に。

「観念したら、詩織。これ以上、ごまかしきれないよ」

里沙が、耳打ちしてきた。

「そうだね」

私も小声で答えた。

「…相手校のキャプテンは、中学に時の彼氏です」

私は、素直に認めた。

「マジで!!」

佐久間君が、大声をあげる。

私は、慌てて口を押さえる。

「道理で、視線が熱いわけだ」

彼は、一人で納得してる。

「アイツは、俺と同じってか…」

何て言いながら去っていく。

そうしてるうちに、後半戦が始まった。



やっぱり、浅井君の動きが、前半戦よりもよくなってる。

護も、浅井君を抜く事が出来なくなってる。

「護。ファイトー!」

私は、人一倍大きな声をあげた。

その声に浅井君が一瞬だけ、隙をみせた。

すかさず、護が浅井君を抜く。

…が、直ぐに追い付かれてしまう

頑張れ、護。

私は、護を信じてる。

護なら、浅井君のディフェンスなんて、簡単に抜く事が出来るよ。

心の中で囁く。

味方は、前線に走り込んでいる。

護と浅井君との攻防戦は、私にとっても、ハラハラドキドキしっぱなしだ。

私は、護の事だけを応援してる。

護は、一瞬の隙をついて、浅井君の裏をかいて走り出した。

それには、浅井君も反応しきれなかった。

そこに、護へのパスが通る。

護は、ドリブルで上がって行く。

その間にも、護の周には、ディフェンダーが集まる。

護は十分に引き付けてから、センターリングをあげて、後輩に渡すと、ゴールキーとの一対一に…。

護が、上げたボールをチャンスに変えて、お願い。

シュートするが、キーパーに弾かれる。

そのボールを他のメンバーが押し込んだ。

「やったー!! 三点目」

私は、護を見る。

だけど、何か変だ。

なんか、顔を歪ませてる。

どこか、怪我したんだ。

護の歩き方がおかしい。

私は、慌てて雪菜ちゃんのところへ行く。



「雪菜ちゃん。護の様子が変。もしかして、足を怪我したかも…」

雪菜ちゃんは、怪訝そうな顔をして。

「そうですか? 別に普段とかわらな…」

雪菜ちゃんが言い掛けて止まる。

「本当だ。コーチ、玉城先輩が…」

「ああ、わかってる。でも、今は交代出来ない。誰かが、わざとボールを外に出さない限りな」

相手校のキックオフ。

護が、足の痛みを堪えながら走ってる。

無理しないで。

相手高に攻められてる。

護の指示が出る。

でも、護の動きが、ぎこちない。

「護…」

メンバーの誰かが、クリアするためにボールを外に出す。

すかさず、コーチが動いた。

「No.11アウト、No.23イン」

のコールを審判に告げて、護を外に出す。

私は、護がベンチに戻ってきたのを見て。

「大丈夫?」

「まあな」

冷や汗をかきながら言う。

コーチが、手早く処置していく。

「いつやられた?」

「センターリングを上げた直後に相手の足が当たったんです」

護の脹ら脛が、紫色になっていた。

うわー、痛そう。

「生徒会長。手伝ってもらえますか?」

雪菜ちゃんが私を呼ぶ。

「いいわよ。何すればいい?」

「少しの間、これで冷やしておいてもらえますか?」

氷水の入った袋を手渡された。

「わかった」

私は、それを持って、護の腫れている部分に当てる。

「こんなに腫らして、本当に大丈夫なの?」

「………」

返事が、返ってこない。

「無理しちゃダメだよ…」

「ああ……」

「そんなに痛みが酷いなら、この後のデート無しにしよ」

心配して言ってるのに。

「デートはしたい」

って、小声で返してきた。

「でも、痛むんだよね」

護は、無言でいる。

「私は、護の事が心配なの。デートは、何時だって出来るから、今は、この腫れが引くのが先でしょ」

「だけど…」

この期に及んで、言い淀む護に。

「だけどじゃない!この腫れが引かないと、歩けないでしょ。それじゃあ、デートどころじゃないよ。途中で腫れが痛みに変わるかわからないんだからね」

強めに言う。

「……わかった。今日は、大人しくしてる…」

護が、諦めたように言う。

「その代わり、詩織の家に行ってもいいか?」

「いいけど、何で?」

「隆弥さんに用事」

なーんだ。

私と一緒に居たいからじゃないんだ。少し残念。

護の足に当てていた袋の面が熱くなっていたので、面を変える。

「…つっ…」

痛がる、護。

試合も気になるけど、護の事が気がかりで集中できない。

「詩織、悪いな」

護が、私の頭を撫でてきた。

「何が?」

「せっかくの試合の応援に来てたのに…。オレの手当てなんかさせて…」

弱気な護。

「気にしなくていいよ。それに、護の活躍も沢山観れたしね」

私は、笑顔で言う。

「本当は、最後までピッチに立っていたかったんだがな」

「アクシデントなんだから、仕方ないじゃん」

本当は、私ももっと観たかった。

高校最後のユニフォーム姿。

目に焼き付けておきたかったなぁ。

私が、ガッカリしてると。

「そんなにガッカリするな。大学に行ってもサッカーは続けるつもりだから…。試合の時は、ちゃんと呼ぶから…」

護が、微笑む。

「本当?」

「本当だ。オレ、サッカー好きだしな」

その言葉に、私も微笑んだ。

私は、押さえていた処を少しずらして、腫れを診る。

さっきよりは引いてはいたけど、熱を帯びてる。

「雪菜ちゃん。氷、まだある?」

「ちょうど今、切らしてて…」

雪菜ちゃんが、申しわけ無さそうに言う。

そっか…。

職員室に行けばあるかもしれないけど…。

「忍ちゃん」

私は、近くに居た忍ちゃんに声を掛ける。

「何? 詩織ちゃん」

「悪いけど、職員室に行って、氷貰ってきてくれないかなぁ?」

「うん、いいよ」

忍ちゃんが、走って職員室に向かう。



そして。

「詩織ちゃん、貰ってきたよ」

大量の氷を抱えて戻って来た。

「ありがとう」

私は、それを受け取ると、今冷やしてる袋の水をほかり、そこに氷を入れる。

熱を持っているところに氷を当てる。

「どう?」

「冷たくて気持ちいい」

護が、ホッとしたように言う。

「腫れが引かなかったら、隆弥兄呼ぶからね」

私が言うと。

「それは、遠慮したいとこだなぁ…」

護が、苦笑する。

「だけど…」

「大丈夫。それより、詩織の手、赤くなってる」

「気にしなくていいよ。これくらい、なんともないから…」

私は、笑顔を返す。

ピッピッピー。

試合終了のホイッスル。

結果は、三対二で勝ったみたい。

「勝ったみたいだね」

「そうだな」

ピッチでは、挨拶を交わしてる。

それが終わると相手校が、こっちに来る。

整列をすると。

「ありがとうございました!」

と挨拶する。

本当は、立って挨拶を返した方がいいんだろうけど、流石に無理だ。

相手校に挨拶しに行ってた選手が、戻ってきた。

そして、護の所に駆け寄ってくる。

「玉城先輩、大丈夫ですか?」

心配そうに訪ねる後輩達に。

「ああ、大丈夫だ。心配するな」

心配かけないように言う。

本当は、物凄く痛いはずだよね。

「無理矢理、引っ張り出して、すみませんでした」

二年生のキャプテンが言う。

「いいよ。オレも楽しめたしな」

もう、無理してそんな笑顔見せて…。

「それから、生徒会長。応援、ありがとうございました。会長の声援で、皆のヤル気が出せました。本当にありがとうございます」

「勝ててよかったです。これからも、頑張ってくださいね」

私は、笑顔で答える。

「では、俺達片付けがありますんで、失礼します」

そう言って、チリジリになって、片付け始めた。

「玉城。足見せてみろ」

監督に言われて、冷やしていた箇所を見せる。

「酷くやられたな。立てるか?」

言われるがままに動く護。

「その場で、足踏みしてみろ」

何度かやっているうちに護の顔が歪む。

「これは、かなり酷いな。念の為、病院に行った方がいいな」

「これぐらい、大丈夫です」

護が、言うが。

「駄目だ。病院に行ってこい。君、玉城の事頼むな」

監督が、私に向かって言う。

「わかりました」

私は、そう返事して護に肩を貸す。

「詩織、鞄」

里沙が気をきかせて、私の鞄を取ってくれる。

「ありがとう」

私は、鞄から携帯を出す。

「隆弥兄を呼ぶからね」

護の有無を聞かずに電話を掛けた。

『どうした、詩織?』

「隆弥兄、護が負傷して動けないから、迎えに来て欲しいんだけど」

私が言うと。

『俺は、お前専用のタクシーじゃないぞ!』

隆弥兄が言う。

「じゃあ、妹が、大の男に肩を貸しながら、病院に連れていけばいいのかな?その途中で、倒れてもいいの?」

半分脅しだよね。

『わかった、わかった。そう、脅すな…。ったく、学校でいいんだな?』

「うん。ありがとう」

そう言って、電話を切る。

「隆弥さん、何だって?」

「来てくれるって。そうだ、護の制服どうする?取りに行ってこようか?」

「後で取りに来れば…」

「取り合えず、正門まで移動しようか」

「そうだな」

私達は、正門に向かった。

ちなみに

隆弥兄の「お前専用のタクシーじゃないぞ!」


前に父が、弟に言ってた言葉です。

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