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隆兄からの試練

護、大丈夫かなぁ…。

私は、自分の部屋で護の事を考えてた。

護、相当堪えていたよね。

私から、電話してみようかなぁ…。

携帯を取り出して、かけようとした矢先。

不意に携帯を取り上げられてしまった。

「隆弥兄…」

「詩織には悪いが、暫くの間、護との電話禁止な」

「そんな…」

「わかってくれ。今のままじゃ、護も駄目になる。少しの間、せめて、受験が終わるまでは、連絡も顔も会わすな。俺は、詩織の事を大切にしてくれる奴にならって言ったが、護はそれに値する。だけど、今のままでは、護も詩織も駄目になるのが見えてる。だから、詩織。これは、試練だと思って待ってな」

隆弥兄が、頭を撫でてくれる。

「護には、優基が話してる。まぁ、バイトの迎えは、俺か、勝弥がやるから気にするな」

そっか。

今が、我慢のしどころなんだね。

だから、私は護の事を信じて待っていよう。

私は、護が迎えに来るのを待っていれば良い。

その間に私は私で、出来る事をするだけ。

「わかった。隆弥兄の言う通りにする」

「いい子だ、詩織。俺は、護に一皮むけてもらいたいんだ。あいつなら、詩織を任せられるって、一度は思えた奴だ。詩織に何かあっても、絶対に待っていられる奴だと思うから、あえて距離を置かせてもらうことにした。まぁ、受験に合格しちまえば、言う事無いんだろうが…な」

優しい目を向ける隆弥兄。

隆弥兄は、護の事認めているんだ。

だからこそ、試練を与えているのだと気がついた。

「じゃあ、お休み」

「お休みなさい」

隆弥兄が部屋を出て行く。

入れ替わるように優兄が入ってきた。

「詩織。護に伝言があるか? メールしてやるから…」

優兄の優しい声。

「そうだなぁ。暫く会えないけど、期限付きだから、それまで受験の事だけに集中してって、伝えて欲しい。隆弥兄が決めた事だから…。後、隆弥兄も私も護の事を信じてるからって伝えて」

「わかった。護には、改めて俺から説明しておくから、納得いかなくても、護の為なんだって伝えとくよ」

「ありがとう、優兄」

「お休み」

「お休みなさい」

優兄が出て行った後に私は、護宛に手紙を書き始めた。



Dear 護。

突然の手紙でごめんなさい。

今頃、隆弥兄に対しての怒りで、爆発してるよね。

でも、隆弥兄は、護の事を見下してるわけじゃないよ。

護に一皮むけて欲しくて、あえて護に枷を与えてるんだよ。

だって、隆弥兄は護の事、認めているから…。

でも、今のままでは、駄目になるのが見えてるって言ってた。

だから、暫くの間、距離をおいた方がいいって思ったみたいだよ。

私は、護の事を信じて、待ってるから、頑張って欲しい。

愛してます。 詩織


P.S. 私は、もう一度片想いをしていた頃に戻って、護からの告白プロポーズを待っています。



封筒に宛名を書き、裏面に自分の名前を書いて、手紙を入れて封をした。

私の今の気持ちを綴った手紙。

護は、受け止めてくれるだろうか?

隆弥兄の思いを汲み取ってくれるだろうか?

不安が入り交じってる。

愛してるからこそ、護には頑張ってもらいたい。

期待しすぎてはいけない事も、わかってる。

護の負担にはなりたくない。

だから、今は私の事を忘れて、護のすべき事に打ち込んで欲しい。

護は、それが出来る人だから…。

応援しか出来ない私だけど、頑張って。

私は、封筒を胸に抱きながら、思いを込めた。



翌朝。

バイト時間より早めに家を出る。

手紙を護に届けるために。


護のマンションに着くと、ドアポストに手紙を入れる。

音に気づいた誰が、玄関に近づいてくる。

私は、慌てて柱の影に隠れる。

カチャッ…。

玄関の開く音がする。

私は、そこからそっと覗いてみる。

護が、ドアから顔を出して、キョロキョロしてる。

よかった。

吹っ切れてるみたい。

私は、安心して階段を下り始めた。

「詩織!」

呼び止められる。

聞きなれた声。

振り返らなくてもわかる。

足音が近づいてくる。

「詩織」

肩を掴まれる。

「ありがとう。オレ、頑張るから。そして、もう一度、詩織に告白させてくれ。そして、必ず迎えに行く。オレにとって、詩織は一番大切な存在だから…」

護に抱き締められる。

私は、護の背中に腕を回す。

「本当は、隆弥兄に護には会うなって言われてるの。だけど、どうしても今の私の気持ちを伝えたくて、手紙を書いて置きに来たんだ。護に会わずに帰るつもりだったんだけど、昨日の事もあったから、顔を見てから帰ろうと思って、影に隠れてた。見つかっちゃったけどね」

私は、舌を出して微笑む。

「詩織の笑顔を守る為にも頑張るから。もう、泣き言は言わない。だから、安心して待っててくれ」

護が、私の耳元で囁いた。

「うん」

私達は、静かに唇を重ねた。


「じゃあ、もう行かないと。バイトに遅刻しちゃうから…」

私は、護の腕から離れて、笑顔で言う。

「うん」

護は、静かに頷く。

「頑張ってね」

笑顔のまま、手を振って私は、バイトに向かった。

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