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彼の手料理

駅に着くと、凄い人混みだった。

私達は、満員電車の中に居た。

ギューギュー詰めで、あっちこっちから押される。

「詩織、こっち」

護が、出口に近い所で、私を囲むように壁に手をついて、守ってくれる。

「ありがとう」

私は、護に優しく微笑む。

「やっぱり、一本送らせた方がよかったかな」

護が呟く。

「うーん。それだと、帰る時間が遅くなっちゃうよ」

せっかく、護の家に行けるのに…。

ワクワクしてる自分が居る。

「そうだな。もうすぐ駅に着くしな。我慢するか」

護も納得してるようだ。



自宅のある最寄り駅に着くと、そのまま護の家に向かう。

「ちょっと、散らかってるけど…」

と言いながら、玄関を開けて入るように促される。

「お邪魔します」

私が玄関を一歩踏み入れると、意外と片付けられているのに驚いた。

「床が冷たいから、これ履きな」

護がスリッパを出してくれる。

「ありがとう」

私が言うと護は。

「こっち…」

って、通されたのは、リビングだった。

「そこに座ってて。直ぐに夕飯作るから…」

護に言われたけど、なんか落ち着かないよ。

「護、私も手伝うよ」

私は、コートを脱いで護の居るキッチンに行く。

キッチンでは、護がエプロンをして準備していた。

カッコいい!

エプロン姿に見とれていた。

普段から想像できない格好だたから、視線が釘付けになる。

視線に気づいた護が。

「どうかしたか?」

手を動かしながら言う。

その声に我に返る。

「私も何か手伝うよ」

と、慌てて言う。

「それじゃあ、サラダを作ってもらっていい?」

「うん」

私は、石鹸で手を洗うと、レタスを水洗いして、一口大に千切る。

ツナ缶を開けて、余分な水気を切る。

貝割れやトマトの下処理をする。

その間も護は、テキパキとこなしている。

その姿が、格好よすぎでしょってくらいだ。

「どうした?」

「エッと…。サラダを盛り付けるお皿はどれかなっ…」

私は、またもや誤魔化していた。

「ああ、それなら」

護がお皿を出してきた。

「そのお皿に盛ってくれるかな?」

「わかった」

言われた通りにサラダを盛る。

サラダを盛り付けたところに護が、フライパンを片手にこっちに来る。

私が盛り付けたお皿に、ハンバーグが乗る。

「すごーい。これって、護が最初から、作ったんだよね」

「ああ、そうだよ」

照れ笑いする護が居る。

「本当に凄いね。私なんて、ちゃんと作った事無いよ」

「これぐらい簡単だよ。詩織なら、直ぐに作れるよ」

「そうかな…」

簡単にいきそうに無いんだけど。

「ほら、冷めないうちに食べるぞ」

護に促されて、私は席に着いた。


「ご馳走さまでした」

「お粗末様でした」

「片付けは、私がするよ」

私は、テーブルの上のお皿を片付け出す。

「いいよ、オレがするから。今日は、詩織はお客様なんだから…」

「…でも、悪いよ。夕御飯ご馳走になったんだから、片付けはやらせてください」

「じゃあ、お願いしようかな」

護が、エプロンを貸してくれる。

私は、そのエプロンを着けると、食器を洗い出した。


ある程度洗い終わったところで、護が後ろから抱き締めてきた。

「護。洗いづらいから、放して」

「やだ。このままがいい」

そう言って、首筋にキスを落としていく。

「くすぐったいから、やめてよ」

「止めない」

「ちょっと本当にやめてよ。お皿落としちゃうよ」

「うん、そうかもね。でも、このままがいい」

珍しく甘えてる。

「どうしたの?」

「うん。今、この状態って、新婚みたいだなって思って…」

エッ…。

「オレさぁ、早く詩織と一緒に暮らしたい。だから、頑張って条件をクリアして、同棲が出来るように…。信頼できる男になるからさぁ。詩織も、オレ以外の男に触らせるなよ」

「うん、気を付けます」

私の返事を聞いて、満足そうな護。

「詩織、愛してる」

そう言って、護の唇が重なる。

その口付けが、首筋…鎖骨まで注がれる。

「護…。くすぐったいよ」

「うん…。でも、止まんない」

護のキスが、だんだん深くなる。

その時だった。

ガチャッ…。

玄関の開く音がした。

護が、私から離れる。

「ただいま、護。誰か来てるのか?」

エッ……。

まさか。

護のお父さん。

心の準備が整う前にリビングの戸が開く。

「親父、お帰り。今日は、早いんだな」

そう言って、父親を迎い入れる護。

私は、どうしたらいいかわからずにあたふたしてると。

「護。そちらのお嬢さんは?」

護のお父さんが、優しい眼差しで私を見る。

「水沢詩織さん。この間話しただろ。オレが、結婚したいと言ってた子」

「始めまして、水沢詩織です」

緊張しすぎて、頭の中が真っ白だ。

「始めまして、護の父です。護が、迷惑をかけてすみません」

「いいえ。私の方こそ、護さんに迷惑かけているので…」

私は、慌てて言い返す。

「親父。オレ、彼女との事、真剣なんだ。だから、詩織の親父さんとの約束を果たした時、直ぐにでも婚約したいんだ」

はっきりとした口調で言う護。

護のお父さんは、少し困惑気味で。

「詩織さん、本当に護と居たいのでしょうか? 母親を亡くしてから、男親で育ててきたので、我が儘し放題の息子ですが、本当によいのでしょうか?」

心配そうなお父さんに対して。

「護さんだからいいんです。私は、護さんの一生懸命に打ち込んでる姿を見て好きになったんです。だから、護さんの事をそんな風に言わないで下さい」

自分の思ってる事を正直に言う。

認めて欲しいから、自分の存在を…。

「そうですか。詩織さんがそう言うなら、護に課せられた条件をクリアした時には、婚約を認めましょう」

護のお父さんは、納得まではいかないまでも、私の気持ちを汲んでくれた。

「ありがとうございます」

私は、笑顔をで頭を下げる。

「家に女の子が居るだけで、華やかになるな」

って、お父さんが言う。

「親父。詩織はダメだからな。オレのだから!」

護が、慌てて私を抱き寄せる。

「なんで、息子の好きな子を取らなきゃならんのだ」

って、笑いだした。

私もつられて吹き出す。

「なんだよ。詩織まで、笑う事無いじゃん」

護が、不貞腐れる。

「護。食器洗い終わったら、送ってね」

私は、護から離れて、洗い物の続きをする。

「ああ…」

護は、考え深げに言うのだった。

父親に対して嫉妬って…。


どんだけ、詩織の事好きなのか…。

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