表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/47

勘違い

翌朝。

ヤバい。

目が覚めたら、九時前だった。

私は、慌てて支度をする。

肩だしニットのワンピースに黒字にハートがらのレギンス、黒のソックス。

それから、ブレスレットは外せない。

鏡を覗き込んで、髪をとかす。

グロスをつける。

コートを着て、昨日作り上げたマフラーを紙袋に入れて、財布と携帯を鞄に入れ、慌てて部屋を出る。

玄関に出して置いたブーツを履くと。

「行ってきます」

言い残して、駅まで走った。



息を弾ませて駅まで辿り着くと、柱に凭れるようにして護が立っていた。

相変わらず、格好いいな。

そんな護に見とれていたら、ちひろさんが現れて、護と話し出した。

その様子を遠くから見ていたら、ちひろさんが護の腕を引っ張って行こうとする。

エッ…。

護も、満更でもなさそうだ。

どうして?

私が、遅刻したから……?

私が、いけないんだよね。

私は、その場から動けなくなった。

その時、護の視線が私の方へ向いた。

あっ…。

その瞬間、護がちひろさんの腕を振り払った。

私は、反射的にその場から逃げ出したくて、走り出してた。

何だろう?

何で、私は、今逃げてるんだろう。

護の彼女として、堂々としてればいいはずなのに…。

何で、こんなに動揺してるのかな?

自分に自信が無いから、直ぐに逃げ出したくなるんだよね。

臆病な自分が居る。

涙が溢れてくる。

大好きなのに、自信が持てない。

こんな私を好きになってくれるわけ、無いよね。



何処をどう走ったかわからないうちに、公園のベンチに座ってた。

私、何やってるんだろう。

折角のデートだったのに…。

あんなに楽しみにしてたのに…。

何で、逃げ出したんだろう?

自己嫌悪に陥る。

護も変に思ってるよね。

たぶん、ちひろさんは、私に見せつける為にわざとやったんだと思う。

それを護は、断ろうとしてたんだ。

ちゃんと見てたら、わかったはず。

なのに、私ったら、逃げ出して…。

戻ろう。

私が、ベンチから立ち上がろうとしたら、手が差しのべられた。

顔を上げると、私が昨日編み上げたマフラーを首に巻いて、息を切らしてる護がいた。

「あっ…」

私、逃げる時に落としたんだ。

「詩織。これ、ありがとな。忙しい中で編んでたんだな。嬉しいよ」

護の優しい笑顔。

私は、言葉を返す事が出来なかった。

「全く。また、オレから逃げ出すなんて…」

あり得ないって顔をする。

「お前は、何回オレの前から逃げ出せば気が済むんだ。あっちこっち探し回ったぞ」

苦笑する。

「ごめんなさい。私、てっきりちひろさんと何処か行ってしまうんだって思い込んで…」

「うん。だから、逃げ出したんだろ。オレは、詩織を待ってる間に何かあったんじゃないかって、心配してたら、ちひろが“水沢さんが、事故に遭った“って言うから、言うがままに足が動いてた。そんな時に視線を感じて振り向くと、詩織がこっちを見てたから、ちひろの腕を振り払って、お前を追いかけようとしたら、鞄と紙袋を落としていったから、紙袋の方だけを覗いたら、手編みのマフラーが入ってて、オレ、嬉しくて、詩織を見つけないとって探し回ってた」

心配してくれてたんだ。

「ほら、早く水族館に行くぞ。オレも楽しみにしてたんだからな」

「うん!」

「そうだ。オレからはこれをやるよ」

そう言って、箱を取り出す。

私は、それを受け取ると。

「開けていい?」

遠慮がちに聞く。

「いいよ。気に入ってくれるといいんだが…」

護が、不安そうに言う。

その箱を開けると、中にはハートに型どられた枠に小さな宝石が三つ並んだトップレスのネックレスだった。

「嬉しい。ありがと」

「着けてやるよ。詩織、髪あげて」

そう言われて、自分の髪を持ち上げる。

護が、私の後ろに回り込み、ネックレスを着けてくれる。

その指が、私の首筋を触る度にくすぐったくて。

「くっ…」

身をよじってしまう。

「動くなって…」

「だって、くすぐったいんだもん」

私が言うと、護が、私のうなじに唇を這わせる。

「つっ…。やめてよ」

「そんな声出すなよ。襲いたくなる」

耳元で言う。

私は、顔をあげる事が出来なくなる。

「詩織、顔真っ赤」

私は、照れ隠しで振り返ると護の胸を軽く叩く。

それを護は優しく受け止めて抱き締めてきた。

「今日の服に合ってるな」

優しい声で言う。

「本当?」

「詩織には、シンプルなのが似合うな」

護の腕に包まれながら、幸せを感じてる。

「じゃあ、行くか」

「うん」

「ほら、鞄」

護に差し出されて、それを受け取ると手を繋いで、駅まで走り出した。



ハァー、ハァー…。

私が、息を切らせてるのに、護は息切れしてない。

流石だな。

私が、関心してると手が離れた。

そして自動販売機に向かうと、何かを買ってきた。

「ほら、スポーツドリンク」

そう言って、手渡してくれた。

「エッ…」

「公園から、ここまで走り続けてきたから、喉が渇いただろ?だから、水分補給」

って、笑顔で言う。

「ありがとう」

私は、ペットボトルの蓋を開けて、一口飲む。

ゴクリと喉が鳴る。

カラカラだった喉が、潤う。

「詩織、それもらうぞ」

そう言って、私の手からペットボトルを奪うと、そのまま飲み出す。

あっ…。

間接キス。

って、今さらか…。

「熱い。久しぶりに走ったから、疲れた」

いいながら、皮ジャンを脱いで腰に巻く。

「残り、飲む?」

私は、首を横に振る。

「一口しか飲んでないじゃんか。飲んでおけ」

そう言って、私の手に再び戻される。

私は、一度ペットボトルを見つめて、口にする。

うーん。

やっぱり、恥ずかしいかな。

間接キス…。

「どうした? 顔が赤いぞ」

護が、覗き込んできた。

「何でもないよ」

慌てて言う。

「ならいいが…」

護が、心配そうに言う。

「そろそろ来るな。ホームに行くぞ」

私は、ペットボトルを鞄に仕舞い、護を追い駆けた。


相変わらず、弱虫な詩織でしたね。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ