やきもち?
その後、私は裏方に撤していた。
飲み物が足らなくなり、私は近くのコンビニに出ようとしてた。
他のメンバーは、サンタの格好のままなので外に行きにくいだろうと思い、自分からすすんで行く。
「詩織。その格好で外に行くと寒いよ」
そう言って、里沙がコートを差し出してきた。
「ありがとう」
私は、それを受け取って着ると、体育館を出て買い出しに行く。
ジュースにお茶、お水をかごに入れる。
ニリツトルのペットボトルを十二本分。
領収書を書いてもらい、戻ろうと歩き出す。
流石に重いなぁ。
と思っていたら、いきなり軽くなる。
あれ?
私は、顔をあげると護が軽々と荷物を持っていた。
「女の子が、こんな重い物持って…。買い出しに行くなら、声を掛けてくれれば良いのに…」
「だって、楽しんでもらいたかったから…」
「あのなぁ。お前が居なかったら、楽しめないだろうが…」
護が、呆れたように言う。
「だって、今日の私は、ホスト役だよ。一緒に居るわけにはいかないじゃん」
「わかった。でも、帰りは一緒に帰るからな」
「うん」
学校まで、護と手を繋いで戻った。
時計の針が、八時を指そうとしていた。
私は、再びマイクを持って、ステージに上がった。
「皆さん。今宵のパーティーは、楽しんでもらえましたか? 三年生の皆さんは、息抜き出来たでしょうか? また、一・二年生の皆さんも楽しめたでしょうか? クリスマスは、まだ終わってはいませんが、本日のパーティーは、これにてお開きにさせて頂きます。皆様、お気を付けてお帰りください」
私はそう告げて、お辞儀をしステージを下りて、出口に向かう。
出口の所で、役員は並んで見送る。
それぞれの役員が、お礼の言葉を掛けていく。
「ありがとうございました。お気を付けてお帰りください」
私は、笑顔で挨拶する。
「生徒会長。この後、一緒に何処か行かない?」
って声が掛かる。
「ごめんなさい。私達、まだやることがあるので、行けないです」
やんわりと断ってる横を護とちひろさんの姿が、目に入ってきた。
ちひろさんが、これよがしに護の腕に絡み付いている。
私と目が合うと、ちひろさんがニヤツいてる。
そして。
「玉城君は、頂くわね」
って、小声で私に告げる。
ハァー。
今日は、仕方ないか…。
私は、肩を落とすした。
本当は、今すぐ言い返したかった。
でも、こんな所で、大声を出すのは、お門違いだ。
私は、自分の気持ちを押し殺しながら、笑顔を絶やさなかった。
生徒が居なくなった体育館の後片付けを始めた。
黙々と片付けをこなしていく私達に優兄が。
「今日は、楽しかった。これからも頑張れよ」
って、言葉に私達は、笑顔になる。
よかった。
付け焼き刃でやったから、不安だったんだよね。
「優兄、こちらこそありがとう。忙しいのに演奏してくれて」
「こんな楽しい事に参加させてもらえない方が、悲しい」
「そう言ってもらえて、よかった」
「じゃあ、お先にって言いたいけど、里沙ちゃん、外で待ってるから」
優兄は、里沙に手を振りながら言う。
「里沙にベタ惚れだね」
私は、里沙に耳打ちする。
里沙の顔が赤くなる。
可愛いなぁ。
粗方片付いたところで。
「反省会しようか」
私が言うと頷く。
「今日のイベントの感想、どう思った?」
「皆が楽しそうに踊ってるのを見て安心した」
「意外と、皆食べるんだなと思った」
「そうだね。追加で飲み物買いに行った分も無くなってたもんね」
「初めてのイベントだったけど、何処か直した方がいいところとか、こういうところが良かったってこと、何かある?」
「そうだな。セッティングの細心部のチェックの甘さかな」
「後、連携が取れていなかったよね」
「そうだね。密に連絡取れなかったよね」
「今後の連携の取り方を考えないとね」
「後は、何かある?」
一同は、首を横に振る。
「何か思い付いた事があったら、随時言って。今日は、遅いので解散ね」
私は、皆を見渡し。
「お疲れ様でした」
最後に照明を落として、出口に向かう。
暗闇なので、目が慣れてなくて壁伝えで歩く。
ハァー。
やっと、終わった。
体育館を出て、鍵を閉める。
他の入り口の鍵もかかってるか確認する。
職員室に行こうとして、自分の持ち物を体育館に置きっぱなしなのに気づいて、再び戻ることに。
鍵を開けて、中に入る。
暗闇にも馴れて、ステージまでで行き、袖に置いていた紙袋を見つけ、それを持って再び出口に…。
その時、目の端に人影見えた。
エッ。
誰?
怖い…。
動けずにいた私を誰かが、抱き締めてきた。
「詩織、心配したよ。何時までたっても出てこないから…」
その声を聞き、安心して体を委ねる。
振り返らなくても、わかる。
大好きな人だもの。
「ごめんね。片付けと反省会してたんだ。今日しておかないと忘れてしまいそうだったから…」
「本当に?誰かに誘われてたとかじゃないのか?」
護の心配そうな声。
「誘われたけど、断ったよ。って言うか、怖い兄達が居るし。それに、体育館を閉めてから、忘れ物に気付いて取りに来たてたんだ」
「そっか…」
護の安心した声。
「ほら、早く閉めて帰るぞ」
私は護に促されて、体育館を出る。
鍵を閉めると職員室に鍵を返す、先生にお礼を言って出る。
「お前、本当に徹底してるな」
護が、苦笑する。
そうかな?
「さぁ、帰るか。明日の待ち合わせの時間も決めないとな」
護が、さりげなく手を繋いできた。
「そうだね」
明日は、護と久し振りのデート。
って、さっきの聞かないと…。
「護、さっきちひろさんと出てきたよね」
「あぁ。それがどうかしたか?」
どうかしたかって…。
私が、黙り込むと。
「何? 気になるのか?」
私は、黙って頷く。
「帰り際に掴まっただけだ」
「本当にそれだけ?」
「疑ってるのか?」
「だって、ちひろさん帰り際に私に“玉城君は頂くわね“って…」
私が、不安げに言うと。
「確かにちひろに誘われたが、断ったよ。オレが今ここに居ることで立証されるだろ」
真顔で返される。
「嬉しそうにしてたよね」
私の言葉に。
「それって、妬きもちか?」
って、嬉しそうに聞いてくる。
「……」
私は、何も言えなくなる。
「ハァ、全く…。ちひろとは、門の所で別れた。詩織が居るのに誘いに乗るわけ無いだろ」
呆れながら私の頭を撫でる。
「クラスの奴等にも誘われた。でも、先約があるからって、断った」
護が、耳元で言う。
「ありがとう」
嬉しくて、お礼を言ってしまった。
「当たり前だろ。こんな可愛い彼女を一人で帰すわけないじゃん。それに、おれ自身も詩織と一緒に居たかったしな」
照れ笑いする護。
私は、護に抱きつく。
「何?」
護の驚いた顔。
「嬉しいな。こんなに想われているんだなって、改めて思った」
「ハハハ。それより、その格好寒くないか?」
「大丈夫だよ。護に包まれてるから、暖かいよ」
「それならいいんだが…」
私は、護の顔を覗き込む。
「護は、心配性なんだから…」
「仕方ないだろ。オレは、お前が一番大切なんだから」
真顔で答える護に、私の方が照れる。
「顔、赤いぞ」
「誰がさせたんですか、誰が…」
私は、膨れながらそっぽを向く。
「そんな顔するなよ。可愛すぎて、食べたくなるだろうが…」
護が、耳元で囁く。
その言葉で、更に熱くなる頬。
「あれ、さっきよりも顔が赤いぞ」
護が、頬に触れてくる。
護の手が、冷たくて気持ちいい。
私は、その手に自分の手を重ねた。
「詩織」
ゆっくりと護の顔が近付いてきて、唇に軽いキスが落とされる。
「詩織、愛してる」
甘い囁きと共に、唇を塞がれた。
「明日、九時半に駅で待ち合わせな」
そう言って、護は帰っていく。
私は、その背中を見送った。
「ただいま」
家に入ると、何時もなら怒濤のようにやって来る兄達が来ない。
何で?
私は、リビングに顔を出すが、兄達の姿は、どこにもなかった。
「お母さん、兄達は?」
リビングで寛いでいた、お母さんに聞いてみる。
「隆弥はバイト、勝弥は彼女とデート。優基は、部屋で勉強してるよ」
と返ってきた。
そっか。
出掛けてるなら、うるさくないはずだ。
私は、自室に行く。
机の上に置いておいた作りかけのマフラーを仕上げる為に、編み出した。
護、喜んでくれるかな?
そう思いながら、一生懸命編み上げた。