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ダンスパーティー

テストが終わり、生徒会室でクリスマスパーティーの打ち合わせを始める。

「毎年恒例のクリスマスパーティーの事なんだけど、佐久間くんが、ダンスパーティーにしようと言ってるんだけど、皆はどう思う?」

恒例だったとは、知らなかったよ私は…。

「賛成!」

「意義なし!」

「じゃあ、どういう風にする?」

「体育館で行う事にして、配置とかは?」

「軽音部にバックミュージックを流してもらうとか?」

「ディップ形式で、壁側に机を並べて置くとか?」

「その前に、日時はどうする?」

「日時は、クリスマスイブにでもヤるか…」

イブか…。

って、ちょと待ってそれはまずいかも…。

「詩織、どうかした?」

里沙が? 顔を覗き込んできた。

「何でもないよ。時間は、夕方の五時ぐらいからでいいかな?」

自分から提案しながら、明らかに動揺してる。

ヤバイかな。

準備とか有るから、デートどころじゃないよね。

「そうだな…。そのくらいの時間からでいいんじゃないか」

「詩織も歌わないとね」

里沙が言う。

「エー。私も歌うの? 何で…」

「今年の学祭で歌ってたんだから、その延長でね」

「それって、優兄達に迷惑じゃ…」

私がいいかけて。

「大丈夫。優基さんには、あたしから頼むから…」

って、里沙が自信満々に遮った。

ハァー。

私、音合わせしながら、パーティーの準備しなきゃいけないじゃん。

「とりあえず、ポスター書くから、用紙頂戴」

柚樹ちゃんが言う。

私は、席を立って用紙を七枚取りに行く。

それを渡すと、柚樹ちゃんと凌也は、その用紙に決まった事柄をマジックで書いていく。

「後は、制服で、ダンパはつまらないよなぁー」

「そうだね。ちょっとおめかしでってことで、派手にならない感じの服装でって、付け足しておいて。それから、学校側にも許可をもらわないとね」

私が言うと。

「俺、今から聞いてくるな」

そう言って、佐久間君が生徒会室を出ていく。

「予算どうかな?」

山本兄妹に振ると。

「立食と飾りつけだけなら大丈夫だよ」

笑顔で帰ってくる。

「そっか…」

「オードブルとケーキは買うとして、サンドウィッチぐらい手作りする?」

柚樹ちゃんが提案してきた。

「そうだね。手作りパーティーにしようか。家庭科室を使わせてもらえたらいいのだけど…」

「じゃあ、それも先生に聞かないとね。あたしが行くよ」

里沙が、勢いよく席を立って出ていく。

「後は、手伝ってくれる人を集めないとね」

「体育館の使用許可もらってきた」

ドアが勢いよく開いて、佐久間君が大きい声で言う。

「よし。それじゃあ、後は軽音部にお願いするだけでいいよね」

私は、そう言うと立ち上がった。

時間もそこそこ来てたので、今日はここで解散することにした。

私は里沙が戻ってくるまで、生徒会室で待っていた。

どうそようかな…。

護になんて言おう。

「ただいま。って、あれ皆は?」

「今日は、もう解散にしたの。で、どうだった?」

「OKもらえたよ。火の取り扱いだけ気を付けなさいって」

「よかった…。じゃあ、帰ろっか」

私達は、それぞれ鞄を持つと部屋を出た。

部屋を出ると、護と優兄が待っていた。

「あれ、二人で待っててくれたんだ」

里沙が、二人を交互に見て言う。

私は、部屋に鍵をかける、

「ああ。他のメンバーが出て行ったのを見たから、終わったのかと思って、来てみた」

優兄が、里沙の頭をポンポン叩く。

「じゃあ。私、鍵を返しに職員室に行くから…」

その場を後にしようとしたら。

「こら、待て。オレも一緒に行くから…」

護が、追ってきた。


どうしよう。

顔が、あげられない。

でも、言わなきゃいけないよね。

楽しみにしてたんだから…。

「護、ごめんなさい。クリスマスイブのデートなんだけど、出来なくなっちゃった」

「うん。なんとなくわかってた」

エッ…。

「詩織は知らなかったみたいだけどな。オレ毎年誘われてたから、クリスマスパーティーに出てた。生徒会企画だから、詩織は、一日中準備で追われるのもわかってるから…。でも、クリスマスは、デートしような」

そう言って、私の頭を抱き寄せる護。

「うん」

飛びっきりの笑顔を護に見せる。

「…で、今年は、何するんだ?」

「エッと…。ダンスパーティーだよ。音楽は、軽音部に任せようと思ってる。そのせいで私も歌う羽目になったけど…」

「マジかよ。オレも、出ないといけないじゃん」

「心配?」

「そりゃあ、心配だよ。詩織が歌うとなると、結構な人数が集まるんだろうし。告知するのか?」

「それはしない。そんな事したら、私が楽しめないじゃん」

って言うか、多分裏方の方で忙しいと思うけど…。

「じゃあ、詩織が歌ってる間は、壁際にでも居るか…」

エッ…。

「可愛い彼女のが、頑張ってる姿を見ないとな」

護が笑顔で言う。

そんな護に抱きついた

「オレにとっては、高校最後のパーティーだしな」

そっか…。

最後のパーティーか…。

じゃあ、思いっきり楽しんでもらわないといけないな。

「それに、心配なんだ。詩織にここぞと寄ってくる奴が居るからな」

護が、聞き取りにくい声で言う。

「その日は、朝から準備なのか?」

「そうなると思う」

飾り付けにサンドウィッチ作り、テーブルのセッティング、ステージの準備。

ハァー。

気が重いけど、三年生には、楽しんでもらいたいから、頑張らないと。

改めて、気合いを入れる。

「詩織。気合い入れ過ぎて、倒れるなよ。それだけが、心配」

護が、優しい声で言う。

「うん。気を付ける」

「本当か? 前みたいなことになるなよ」

「アハハハ…」

乾いた笑いを浮かべる。

「じゃあな」

軽く唇を重ねて、護は帰っていった。



自分に部屋に入って、鞄を置くと優兄の部屋に行く。

コンコン。

ドアをノックすると。

「入れば」

優兄の声が響く。

私は、ドアを開けて入ると。

「里沙から、話は聞いたよ。まぁ、息抜きになるから、受けるよ。って言うか、面白そうだって、他のメンバーも言ってる」

って、部屋に入るなり言ってきた。

「それから、後輩達には、俺から言っておくよ。時間、何時から? 俺等、最近楽器触ってないから、その前に音合わせしたいから…」

「17時始まりだから、16時ぐらいから音合わせでいいかな。私もその前に準備があるし…」

「OK、その時間で、皆に伝えておくよ」

「優兄、ありがとう」

私は、優兄に抱くつく。

「いいよ。たった一人の妹の為だし、里沙も、俺の演奏が聞きたがっていたしな」

って、私の頭をポンポン叩いた。

後半の方が、メインだろうな。

何て思いながら。

「本当にありがとう、優兄」

もう一度、お礼を言う。



準備に忙しく動いていたら、あっという間に当日を迎えることになった。

私は、朝から忙しく動き回っていた。

会場の準備は、昨日のうちにある程度、仕上がっていた。

細かい部分を残して……。

私は、その所を細かくチェックしていく。

暗幕を下ろして、照明の点検をする。

天井を見上げて、球切れしてるところはないな。

証明を切り、暗幕をあげる。

後は、飾り……。

ステージには、ツリーを飾り付けて、机には、テーブルクロスを敷、紙ナプキンや紙皿、コップを重ねて並べてある。

オードブルが届くのは、十六時半。

その間に、サンドウィッチを作らなきゃ。

「佐久間君、後頼んでもいい?」

「OK、やっとく」

私は、体育館を佐久間君に任せて、家庭科室向かった。


家庭科室では、クラスの女子に頼んで、里沙、忍ちゃん、柚樹ちゃんがサンドウィッチ作り奮闘中。

「お疲れさま。皆ごめんね。せっかくの休みなのに手伝わせちゃって…」

「いいよ、どうせ暇してたから」

「こういうの楽しいから、大丈夫だよ」

「皆、ありがとう。感謝してます」

「皆が、頑張ってくれるから、僕達も益々頑張らないと行けないと思わされたところだよ」

柚樹ちゃんが、笑顔で言う。

「ホントだよね。何人来るか、わからないから、結構な数要るし、皆に手伝ってもらえるだけでも、ありがたいよ」

里沙が言う。

「詩織。今日の舞台挨拶頑張ってね」

「って言うか、歌うんだってね。そっちも楽しみにしてるから」

あれ、そんな話したっけ…?

私が、首を傾げてると、里沙が舌を出す。

「里沙、喋ったの?」

「だって、今日の事だし、言っても大丈夫かなって思って…」

しょうがないな。

「歌う曲って決まってるの?」

「それは、まだ。これから音合わせするから、その時に決めると思うけど…」

「そうなんだ。衣装とかは?」

「それは、内緒だよ」

私は、口に人差し指を当てて言う。

「楽しみにしてるよ」

「うん。この事は、他の人には話さないでね。サプライズにしたいから」

何て、話ながら、サンドウィッチを作り上げていった。



十六時前に体育館に戻ると、優兄達が、スタンバイしていた。

私は、慌ててステージに駆け寄って。

「今日は、本当にすみません。皆さん忙しいのに…」

挨拶すると。

「いいよ。楽しそうだし、息抜きにもなるから、逆に誘ってくれてありがとう」

皆が笑顔で言ってくれて、一安心して音合わせをした。

私達の音合わせは、時間ギリギリまで続いた。

なにせ、久し振りだっただけに、感覚を取り戻すのに時間がかかった。

「詩織、そろそろ時間だよ」

里沙の声で、練習を終わらせる。

「早く、着替えてきて。会長が入り口を開けるって、決まりがあるんだから」

里沙が、催促する。

そんな決まりあったの?


サンタ服に着替える。

このスカート、丈短すぎだよ。

こんなの護が見たら、また怒るかも…。

何て思いながら、急いで体育館の入り口に向かう。

「遅い!皆、待ってる」

拓人君が怒鳴る。

「ごめん」

私は、一言謝って、息を整え皆の顔を見渡し、頷く。

それと同時に体育館の入り口を開けた。

私は、頭を下げて。

「いらっしゃいませ!」

笑顔で、向かい入れたのだった。


結構な人数が集まったんだな。

オードブル、足りるかな?

飲み物、足りてるかな?

私は、そればかりを気にしていた。

「詩織ちゃん。そろそろ挨拶」

忍ちゃんが、私の肩を叩いて言う。

私は、マイクを持ってステージに上がる。

「今日は、生徒会主催クリスマスダンスパーティーに足を運んでくださり、ありがとうございます。今宵は、皆様楽しんでいってください」

私は笑顔で挨拶を済ませて、舞台袖に引っ込むと、直ぐに着替えに向かった。

今日の衣装は、オフホワイトのシャツに赤のチェックのネクタイを緩く結び、黒のショートパンツ。黒のハイソックスにパンプス。

腕には、お守り代わりに護からもらったブレスレット。

髪は、サイドアップにして、星形のイヤリングをつける。

鏡で、最終チェックをする。

今日は、ゲストがメインなので、こんな感じかな。

私は、自画自賛しながらステージ横に戻った。


「詩織。さっき、護が怒ってたぞ。足見せすぎだって…」

優兄が言う。

「って、その格好も護が怒るもと?」

「それは、大丈夫だよ。前もって、護に見せてるし、許可もらってるから」

「それならいいんだが」

「詩織ちゃん、可愛いよ」

結衣さんが、いきなり抱き締めてきた。

エッと…。

「ありがとうございます。結衣さんも綺麗です」

私も結衣さんに言い返す。

綺麗すぎて、見とれていたのだ。

「ありがとう」

結衣さんが、クスクス笑う。

「ほら、出番だ。行くぞ」

健さんが、私達に声を掛けてから、ステージに出て行く。

私も、ステージに出ようとしたら。

「お前は、最後で良いよ。イントロが流れてからも十分、間に合うしな」

優兄はそれだけ言うと出て行く。

それぞれが、ポジションに着いたところで、健さんがカウントを出した。

私は、それに合わせて、大きく深呼吸して、ステージに出た。

歌いながら、護を探す。

壁にもたれながら、私の歌を聞いてる。

中央でも、それに合わせるようにして、ダンスしてる。

私は、ステージ上で皆が楽しんでいるのを見ながら、歌う。

良かった。

楽しんでもらえてる。

私は、安心して歌い続けた。

もう一度、護の方を見ると、いつの間にか女の子に囲まれていた。

一年から三年生まで入り交じって…。

やっぱり、モテモテだね。

妬けちゃうな。

でも、私は、もてなす方なので、文句は言えない。

とりあえず、今は歌に集中した。


ステージが終わり、着替えに行こうとしたら。

「詩織、着替えてる暇ないよ。手伝って!」

里沙が、私の腕を引っ張る。

そして、そのままフロアーに向かって、裏方に専念しようとしたのだが、よりにもよって、チークタイムになってしまい、男子生徒が、こぞって私の所に来て、一緒に踊って欲しいと囲まれてしまった。

「エーっと…」

どう、断ろうかと言葉を選んでる時だった。

いきなり腕を引っ張られて、バランスを崩し、その胸の中に納まる。

顔をあげると護の姿が目に入る。

「悪いが、こいつはオレのだから」

護が、私の肩を抱きながら、その場から連れ出してくれた。

「護、ありがとう」

「良いよ。今のうちに見せびらかせておかないとな」

護が笑顔で言う。

「ついでに踊るか」

そう言って、護のエスコートで、中央に出向く。

「護。私、踊れないよ」

小声で言うと。

「大丈夫。オレに体を委ねてくれれば」

護の手が、私の腰に回される。

私は、護の厚い胸板に手を置く。

「それでいい」

護が、耳元で言う。

「サンタの格好も可愛かったけど、他の男共の目が足に注がれてたのが気に入らない」

膨れっ面で言う護に対して。

「仕方ないじゃんか。生徒会メンバーで決めた事なんだから……。それに今日はもうサンタの格好はしないから…。でも、裏方の仕事しないとね」

クスクス笑いながら、私は答えた。

「そうか…。ならいいけど」

護が、私の額にキスを落とす。

「護?」

私が、顔をあげると目線が合う。

そして、唇に柔らかい感触。

護の唇が、重なってる。

皆が見てる前で、長い口付け。

「ん……」

息苦しくなって、護の胸を軽く押す。

唇が、ゆっくりと離れる。

「護…」

「お前は、オレのなんだからな。よく覚えておけよ」

護が、笑いながら言う。

「はい。重々承知してます」

クスクス笑いながら答えた。

「愛してる、詩織」

護の腕の力が込められる。

「私も、愛してます」

私は、護の唇にそっとキスをした。



周りに居るのにお構いなしとは…。


これで、いいのかなぁ…。

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