表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/47

緊張の生徒総会

帰り道、手を繋ぎながら歩く。

「…で、昼間の続きだが、なぜ佐久間あいつが入ってるんだ?」

少しだけ不機嫌な護。自分が悪いのは、わかってる。

「話すと長くなるんだけど、護が倒れる前日に生徒会からの呼び出しがあったのは、知ってるよね?」

「あぁ」

「あの時に会長役を仰せ使って、自分で役員を決めろと言われたんだ。クラスに戻って里沙と話していたら、立候補してきたの。邪険に扱うわけもいかないし、その時の里沙、私が彼に告白されてる事なんて知らなかったから、直ぐに副会長に納まっちゃたの」

「よりにもよって、アイツが副会長になぁ。心配だなぁ。オレが卒業したら、あいつ、ちょっかい出すだろうし…」

護が、不安そうな顔をする。

「大丈夫だよ。私には護だけだから…。何があっても、護の所に戻るよ」

「本当だろうな?」

「約束します、私は、あなたのものです」

私は、誓いをたてる。

「じゃあ、昼間みたいにキスしてくれ!」

護が、悪戯っぽく言う。

私は、護の首に腕を回し、背伸びをすると、好きって気持ちを込めて護の唇を重ねた。

そっと、唇を放す。

「気持ちの籠った口付けをありがと。絶対に詩織を守るし、幸せにする。約束だ」

今度は、護からキスが降り注がれる。

優しくて、温もりのあるキス。

愛してる、護。

大切なものを一杯くれて。

唇がゆっくりと離れたかと思うと、私の首筋に唇を這わす。

「護。そこはダメだって…」

私が、抵抗する。

「ダメじゃない。オレのって印を付けてるだけ」

私は、護のものだという印をあっちこっちにつけられる。

「くすぐったいよ」

「我慢しろ」

護が、次から次へとキスを施していく。

「ちょっと護、やめてよ。そんな事したら、明日の生徒総会の時に私が、恥ずかしい」

「エッ…」

護の動きが止まる。

「明日の生徒総会の時に、新メンバーで、挨拶することになってるの。生徒会長の私が、こんな目立つところにキスマークなんかつけて、壇上に上がれないよ」

「それを早く言えよ」

護が、戸惑い出す。

「髪の毛で隠せないか?」

護の慌て振りが可笑しくて、吹き出しちゃった。

「何、笑ってるんだよ」

って、困惑気味に言う。

「何って、そんなに焦らなくても…。明日に朝までには消えてる事を願うしかないね」

私は、明日までに消えてくれる事を願った。

「そう言えば、隆弥さんってS大だって…」

「うん、そうだよ。隆弥兄も護と一緒で、教師目指してるんだよ。だから、解らない箇所は、隆弥兄に教えてもらってる。教え方も上手だしね」

「そっか。オレも、隆弥さんに教えてもらいたい…」

「今日は、バイトも休みのはずだから、家に居ると思うよ」

「本当か?お邪魔させてもらおうかな」

「そうしなよ」

私が言うと、護は頷いた。


「ただいま」

玄関から、私が言う。

「お邪魔します」

その後ろから、護が言う。

「早速く来たな」

勝弥兄が、リビングから顔を出す。

「勝弥兄。隆弥兄は?」

「部屋に居るはずだぜ」

勝弥兄の言葉を聞いて、部屋に向かう。

隆弥兄の部屋のドアをノックする。

「誰?」

「私、詩織だよ。護が、隆弥兄に教えて欲しいことがあるんだって」

「入れば」

部屋にドアを開ける。

隆弥兄は、机に向かって何やら、睨めっこをしていた。

「お邪魔します」

護が、遠慮がちに入る。

「そこ、座れば」

隆弥兄は、振り返りもせずに言う。

「私が居たら邪魔だろうから、部屋に行くね」

そのままドアを閉めて、自分の部屋に入る。

制服を脱ぎ捨て、着替える。

Tシャツに短パンという、ラフな格好に…。

「詩織、手伝って」

下から、お母さんの声。

「はーい」

部屋を出て、キッチンに向かう。

「何すればいい?」

「ジャガイモと玉葱を切って」

「何に使うの?」

「今日は、肉じゃがにするから、それ用に切ってくれる」

お母さんは、次から次へと動く。

私は、言われた通りに切る。

ジャガイモを鍋に入れて、水を注ぐ。

それを火にかけた。

「後は?」

「味噌汁を作っといてくれる?」

「はい」

私は、冷蔵庫から揚げとほうれん草を出して、準備する。

鍋に水を張って、火にかけた。

その横で、お母さんが肉じゃがに味付けしてる。

「お母さん。今日は機嫌がいいね」

私が聞くと。

「だって、護君がちゃんと約束を守ってくれたから、嬉しいの。それより、詩織。ここにキスマークついてるよ」

お母さんが、首のところを指す。

指摘されて、顔が熱くなる。

「犯人は、護くんでしょ?」

私は、頷く事しか出来ない。

「やっぱり、男の子だね。詩織は、オレのものって印な訳でしょ。これぐらいなら、明日の朝には消えてるわね」

「本当?」

「うん。薄く着いてるだけだしね。嬉しそうだね。そんなに消えて欲しいわけ?」

お母さんの疑問に。

「うん。明日、生徒総会があって、新役員の挨拶しないといけないから、消えて欲しいなって」

私が答えると。

「ちょっと待って。それ、聞いてないよ。新役員って何?」

お母さんが、慌てて詰め寄ってくる。

「あれ、話してなかった?私、生徒会長に任命されたの」

私が言うと、お母さんが呆然としだす。

「本当なの?」

「嘘ついてどうするのよ。前役員一致で、私が会長をすることになったの」

「何で、早く言ってくれないのよ。流石、わたしの娘ね。わたしも高校時代に生徒会長をやったって言うか、押し付けられた形になるのかなぁ…」

「エッ…。私もだよ。生徒に人気があるって事だけで、押し付けられた感じだよ」

「あら、理由も一緒なんだね。何かあったら話してね。力に成れるかもしれないからね」

ビックリだなぁ。

まさか、お母さんも生徒会長をやってたなんて。

「知名度があるだけで、面倒なことを押し付けられるのは嫌だろうけど、学校の為に頑張りなさい。自分に自信が付くはずだから」

お母さんが、私の背中を軽く叩く。

「さっさと、夕飯の準備しちゃおう」

お母さんが言うと、私も気合いを入れて、手伝った。


食卓にはお父さん以外が揃う。

「頂きます」

全員で合掌する。

「お兄ちゃん達知ってた? 詩織が生徒会長に選ばれたの」

お母さんが嬉しそうに言うが、兄達は。

「そんなの知ってるよ」

と、冷たくあしらう。

「そんな…。詩織、お兄ちゃん達が冷たい…」

お母さんが、泣きそうになる。

「お母さん。兄達はほっといて、一緒に食べよう」

私は、苦笑しながらお母さんに言う。

「やっぱり、娘が一番だね。詩織も、女の子産んだ方がいいよ。男の子なんか、直ぐに保されるから」

実感がこもってる。

って言うか、私、まだ高校生なんだけどなぁ…。

そんなやり取りを見ていた護が、噴き出す。

「護、汚い」

私が言うと、お母さんも。

「プレッシャーかけちゃった?」

って、笑ってる。

「護。気にするな。母さんのやっかみだ」

優兄の言葉に双子の兄達が頷く。

お母さんは、楽しそうだ。

護の事、なんだかんだ言って、認めてしまってる。

「護君。今度は、誰にもわからない所に着けようね」

お母さんが、意味深な言葉で、からかう。

護が、赤面しだす。

何の事かわからずにいる兄達。

私は、そのやり取りが可笑しくて、笑っちゃった。



夕食後。

リビングで寛いでいた。

「護。勉強、教えて」

優兄が言う。

「って言うか、お前、隆弥さんが居るんだから、聞けばいいじゃん」

護が、不思議そうに言う。

「隆兄は、詩織にしか教えないんだよ。俺が頼むと、断られるんだ」

って、剥れる優兄。

へー、そうなんだ。

「しゃあねえなぁ。何処だよ」

って、リビングで、勉強会が始まった。


「遅くなって、悪いな」

優兄が、護に言う。

「いいよ、気にするな。自分の復習にもなった」

護が、靴を履きながら言う。

「護。送っててやるよ」

隆弥兄が、鍵をもって現れる。

「毎回送ってもらうなんて、悪いです」

「受験生なんだから、早く帰って、勉強しな」

隆弥兄さんが、優しく言う。

「ありがとうございます」

護が、嬉しそうに言う。

隆弥兄と護って気が合うんだな。

「ご馳走さまでした。お休みなさい」

「お休み」

護が、玄関を出る。

「詩織。何か要るもんあるか?」

「ううん。今は、無いかな」

隆弥兄は、私の答えを聞くと玄関を出ていった。

私は、自分の部屋に戻って、テスト勉強を始めた。

どうしよう。

クリスマスプレゼント、まだ出来てない。

テストが終わったら、急いで、作らなきゃ。

とりあえず、テスト勉強に精を出した。



翌日。

首筋についていたキスマークは、綺麗に消えていた。

一限目の生徒総会で、私達、新役員のお披露目がある。


前生徒会役員が、ステージでスタンバイしてる。

新メンバーは、自分達のクラスで待機。

会長の合図で、ステージに上がるように指示が出ていた。

なんか、緊張してきた。

ちゃんと、喋れるかな。

不安を感じながら、何かの視線を感じて、振り返る。

そこには護の姿があった。

護が、笑顔で“ガ・ン・バ・れ“って、口パクしてる。

私は、そのお蔭で、緊張がほぐれた。


『只今から、生徒総会を始めます』

スピーカーから、会長の声が流れる。

『今日の生徒総会は、来年度の新規メンバーの紹介を行います。新規役員は、壇上に方へ上がってきてください』

いよいよだ。うわーもう、ドキドキと何時もより、テンポの速い鼓動を感じる。

私は、クラスの列から離れ、壇上に向かう。

上がる順は、あえて決めていなかったが、私が一番最後だった。

壇上に順番に並ぶと。

「生徒会長、水沢詩織さん」

と会長が私の名前を呼ぶ。

私は、一歩前に出るとお辞儀をし、元の位置に戻る。

他のメンバーも、同じようにお辞儀していく。

「以上の七名が、来年度の役員です。新会長から、一言お願いします」

私は、メンバーの顔を見てから、一歩前に出て会場を見渡す。

そして、深呼吸した。

「私達、新メンバー七名。至らぬところもあると思いますが、力を合わせて頑張りますので、宜しくお願いします」

言い終えて、頭を下げる。

野次が飛んでくるかもって思っていたけど、暖かい拍手で迎えてもらえた。

私は、思わず満面に笑みを溢した。

よかった。

認めてもらえて…。

心の中で、安堵した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ