プロローグ
きゃーーー。
どうしよう。
今、彼と目が合っちゃったよ。思わず座りこんだ。
彼が、私の方を見ていたとは、思いにくいけど……。
改めて教室の窓から、グランドを見るとそこには誰も居なかった。
ハァーー。
やっぱり、私の気のせいだったんだよね。
そろそろ帰ろうっと・・・。兄達が帰ってくる前に・・・。
鞄を手にして、教室の戸を開けようと手を伸ばした時だった。
ガラッ・・・。
私が開けるよりも先に戸が開いた。
エッ・・・。何で?
不思議に思い目線を上げるとそこには、玉城先輩の顔があった。
うっそー。
「あれ、まだ残ってたんだ。他の奴等は、とっくに帰ったぞ」
「ちょっと、遣り残した事があって・・・。今から、帰るところです」
私は、言葉を濁す。
本当は、
"あなたの勇姿を見ていたくて、残っていました。"何て、言える筈もなく。
「そっか・・・。気を付けて帰れよ」
そう言葉を掛けてくれる彼に。
「はい。さようなら」
って、笑顔で答えて、背を向けて歩くしかなかった。
ハァー、ビックリした。
まさか、彼が教室に来るとは、思いも寄ら無い出来事。
ばれてないよね。今も、心拍数が上がって、ヤバイんですけど・・・。
私が、彼に想いを寄せてる事、未だ気付かれてないよね。
一番の仲良しの里沙にだって、知られてない事。
大丈夫だよね。
私は、自分に言い聞かせるように幾度となく呟いた。
今日は、嬉しかった。
私は、お風呂に浸かりながら思った。
彼と目が会うだけじゃなく、話す事が出来た事に喜びをヒシヒシと感じていた。
明日も、話すことが出来たらいいなぁー。
なーんて思っていたら、とんでもない事が、待ち受けていた。