第3翔『蒼の境遇』
端種汀の属する水息人の一派‘水蓮’は有翼人の‘蜉蝣’と協定を結んではいたが交流自体は最近まであまり無かった。普通の人間は自分とは違うものに対して畏怖し、蔑視する。それを知っていたから人間に知られる可能性を少しでも減らすために交流を絶っていたのだ。
現在では、人間とも信頼関係を組む事が出来たため、諍いがなくなり、交流もまたはじまった。
蒼い少年は、細長い建物の中で老人と対峙していた。
「なにかご用でしょうか?」
「汀、お前はわかっているのかい?」
顔立ちの似ている、全く色の違う老人は質問で答えた。
「彼女のことですか?」
「そうだ。そしてお前のことも含めてだ」
「それは、わかっています」
「やはりここにはお前を、お前の存在を認めたがらん者も多く居る」
汀は少し顔を翳らせ、俯きながらも言った。
「僕と彼女は同じ境遇です。だから僕は彼女を助けたいし、彼女に助けられたいんです。それがいけませんか?」
老人は彼の真剣な表情を目にした。
「私はお前を最長老としてではなく、祖父として心配しておったのだがな。ある程度までは私もお前を庇うことは出来る。それしかできないが」
「ありがとう、おじいさん」
老人に笑いかけると、穏やかな笑みを返してくれた。
汀は蒼瞳と呼ばれる存在であった。髪も蒼く、瞳を蒼い。
水蓮に伝わる言い伝えに蒼瞳というものは出てくる。
全身が蒼く生まれてくるものは蒼瞳といい、水息人や有翼人と比べても超常的な力を持ち、全てを崩壊させるという伝説。
それは迷信の域を出ない。しかし、汀が生まれてからはじめて目が開いた日、両親が亡くなった。
そのことが汀に対する感情、態度を一変させた。
差別。彼はその対象となったのだ。
そして、それは蜉蝣にも存在した。それが岸核勾だった。