花嫁修業
鮮烈な紅の衣装。
紅の布で飾られた輿。
道いっぱいの曼珠沙華。
てっきり輿入れしたのかと思った。
けれども皇帝の妻になるのが
そんなに簡単なわけがない。
到着したのは帝都の叔父さまの家だった。
でも私は子供だし、帝都に来るのも初めてだった。
叔父さまが何の商売をしているのか
いまだに分からないけれども、
成功しているのは分かる。
そのときの私が「ここが皇帝のおうち」と
思い込めるほどの邸宅だった。
私は迫力負けして呆然としていた。
ここまでの道のりで多少さびしくなったり、
後悔したり、逆にうきうきしたり、
いろんな感情に支配されていたが
全部吹き飛んだ。
叔父さまに手を引かれて屋敷を歩く。
口を丸くあけたまま、きょろきょろしていた。
叔父さまが私の靴を脱がせて足を洗ってくれた。
そのあと紅色のうっとおしい服は脱いで、
軽い普段着に着替える。
ほっとした。
叔父さまはそんなことをしながら
私にこれからのことを説明してくれていたけど
私は子供だし疲れていたので
ほとんど理解できなかった。
私はこのまま皇帝の妻になれるわけではない。
お金と土地を多少持っているとは言え、
私はただの田舎の豪族の娘だ。
まず、私は帝都の権力者の娘となる。
養子縁組だ。
その間に後宮の礼儀などを叩き込まれる。
急な話だったので、それを半年の間にやらなければならなかった。
毎日来る家庭教師は怖いし、
めまぐるしく行事が続くし、
もう嫁入りした気持ちになっていた私は
どの人が皇帝なんだろうと不思議に思いつつ、
結婚はやっぱり良くなかったなと思っていた。