表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

幼馴染

 幼馴染に夏之盛という男の子がいた。

 母方の親戚の子で、12歳くらいまで私の家で暮らしていた。

 家の長男が、幼少時代に格が一段高い家に居候して、行儀見習いのようなことをするのはよくあることだった。うちにも何人か彼のような子供がいたはずだけど、私と年が近いのは彼しかいなかった。

 私は彼より4つ年下だった。

 彼は多少理解していたかもしれないが、私は幼すぎて、自分の家の格など知らない。彼を兄ちゃんと呼んで慕っていた。


 私が8歳になるまで、私たちは本当に兄妹のようだった。

 毎日2人で野山を駆け回り、花や草をつんで、一緒に読み書きを習って、一緒に風呂に入って、一緒に寝た。


 どのタイミングか思い出せないが、あるとき急に彼は変わった。

「俺と結婚しろ」

と言った。

 彼が我が家を去る半年くらい前のことだ。

 そのときの彼の言い知れない迫力というか、鬼気迫る雰囲気というか、そんなものがとても怖かったし、周りの空気をとろりとやわらかくするような感覚が気味悪かった。

「やだ」

私は叫んで、お義母さまのところに逃げ帰った。


逃げてきた私を、わけも分からないだろうに、それでもお義母さまは優しくなでてくれた。

「結婚は女の墓場よ」

いつも聞いている言葉なのに、その日はやけに真実味を帯びて聞こえた。

 初めて感じた恐怖のような感覚、それとヒモづいているに違いない「結婚」という言葉。

「やはり、結婚は良くない。女の墓場なんだ」

鬼気迫るほど真剣にうなずきながら、お義母さまの言葉を聴いた。

 之盛の様子は尋常じゃなかった。

 どうしてあんなふうになってしまったんだろう、そう思うとさびしくもあったけど、子供だからそこまでは考えなかったと思う。


 之盛は非常にしつこい性格だ。

 勉強のときも、武術の稽古のときも、彼は「できないこと」にぶつかるとできるようになるまで、本当に粘り強くがんばる男の子だった。

 そんな彼を尊敬していたし、自分もこんなふうにがんばらなくちゃいけないんだって、目標にしていた。


 もちろん「結婚」に対しても粘り強さは遺憾なく発揮された。


 どこにでもついてきたし、やたらと髪をなでるようになったし、かと思うと遠くからこっちをにらんでいたり、意一緒に寝たりお風呂に入ったりしなくなったのは、本当に良かったけど、もう、気持ちが悪くてしかたがない。

 私は今までのように一緒に遊べなくなって、お義母さまの部屋に避難することが多くなった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ