第7話 初めての町モルガナ
本文短いです。
夜明けと共に再び移動を開始しました。
もうまもなくモルガナに到着するそうです。
道中魔物の襲撃にあってえらい目に合いましたから
早く安全な所で落ち着きたいです。
それにしても初めての町です。
どんな町でしょうか?非情に楽しみです。
モルガナの町は、アウラスタ王国とロンバル聖王国との国境に程近いアウラスタ王国最南端の町。
人口約600人程度の小さな町だが国境に程近いため交通の要衝として栄えてきた。
アウラスタから出ていく物資が最後に通り、ロンバルから来る物資が最初に通る町。
それがモルガナだ。
キチンと整備された石畳の道とレンガ造りの綺麗な建物が特徴的な町だった。
この町で私は生きていくことになる。
モルガナの町は丸い円を描く防壁で覆われている。
魔物の進入を防ぎ町で暮らす人々の安全を守るのだ。
防壁の上には常時衛兵が歩哨に立ち、緊急時は備え付けの鐘で警鐘を鳴らす。
朝日が昇ると同時に町の門が開き、日が暮れる前に門が閉じる。
よって出入りはその間に行わなければならないのだ。
町に入ってすぐの大きな通り、町の中央で十字を描くように交差する
大通りがこの町のメインストリートだった。
店が立ち並び多くの人が出入りする商店街だろう。
私は馬車に揺られながら町の景色を眺めていた。
大きな通りを抜け、細い通りに入る。
目的地はもう間もなくのようだ。
モルガナの聖天教会は、人々で賑わう大通りから外れて閑静な住宅街のはずれにぽつんとあった。
教会は古いレンガ造りの大きな建物で聖天教会のシンボルである羽飾りがかかっているだけだった。
前世の記憶にあるような教会を想像していた私だがまったくちがう建物に戸惑いを覚えた。
そりゃそうだよね、ここにはキリスト教はないのだから前の世界の教会と同じなわけはないのだ。
世界が変われば宗教のあり方も変わるだろう。
前世の記憶の弊害か・・・。
今世での常識を早急に身につけて、思考を切り替えないと後々痛い目にあうかもしれない。
前と今は違うのだ、世界のあり方が変わったのだから・・・。
前と同じに考えているといずれ致命的なミスに繋がるかもしれない、そんな恐怖感が私を襲った。
焦るな、そうまだ時間はあるのだ、ゆっくりと覚えていけばいいだろう。
そう自分に言い聞かせて、心を静める努めた。
そうこうする内に馬車が教会の敷地内に入る。
と同時に、教会の中から二人の人物が我々を出迎えてくれた。
一人は黒い修道服に身を包んだ修道女だ。いわゆるシスターという奴だ。
ふと思う、彼らが着ている服は前世の記憶にあるものと似ている。
なぜだろか?キムラさんか?彼女が関係するのだろうか?
異世界に来た日本人がいたとして、この世界にいろいろなモノを
残していったとしたら、それが今尚こうして残っているそう考えれば自然な気した。
黒い修道服に身を包んだ修道女は年のころは30台後半くらいの生真面目そうな女性だった。
厳しい表情の厳格そうな女性だ。
銀というより灰色の髪と深い青い瞳が冷たさを際立たせる。
もう一人の人物、白い修道服に身を包んだ女性は十代後半だろうか?
少しふっくら頬と全体的に丸みのあるふくよかな女性だ。
青い髪に緑の瞳が印象に残る。
温厚そうな顔立ちでぽやんとニコニコ笑顔を振りまいている。
しかし、さすが異世界だ、青い髪を実際に見るとこんなにも違和感を感じるものなのか。
染めてんじゃないよね?
ルシフ神父が先に下り、私を抱き上げて下ろしてくれた。
その様子を見ながら黒いシスターが厳しい表情で近づいてきた。
ルシフ神父に話かける女性
「お帰りなさいルシフ神父、予定よりずいぶん時間がかかりましたね?」
「いや面目ない、道中魔物の襲撃を受けましてね
半日ほど立ち往生してしまったのですよ」
「そうでしたか、お怪我は?大事ないですか?」
「ええ、問題ありません。
馬車が破損した程度で済みましたよ」
「なら結構、ものは壊れても代わりがききますから・・・・・
で、そちらが例の?」
「はい、アウラ・ライヒマン、オラクル黄金瞳の持ち主です」
私に目を向けた彼女は眼を細め私を観察してきました。
「左様ですか、アウラ、私はカリーナ・ニーチャ
この教会の修道長を任されています。たとえ貴方が稀有なオラクルの持ち主だとしても
ここにいる限りは甘やかしたりしませんから、そのつもりでいなさい」
・・・・・・・・・・・・・うわぁ
三歳児に啖呵きったよこの人。
まぁいいさ、そんなのは期待してないし。
やってやるさ、とっとと生きる知識と技術を身につけて出てってやる。
「ん」
そういって私は頷き返した。
彼女は少し目を見張ったがすぐさま元の表情に戻ると
「着いて来なさい、貴方の部屋に案内します」
そう言ってさっさと歩き出したのだ。
私の隣でルシフ神父は肩を竦めやれやれと苦笑し
白いシスターは相変わらすぽやんとニコニコ笑っている。
今日からここで暮らすのか・・・・・。
正直げんなりした。
よしっと意気込んで私はシスターカリーナの後を追ったのだ。
これが私とシスターカリーナとの長き戦いの始まりだった・・・・・・。