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無表情少女の歩む道  作者: 日向猫
第一章 異世界再誕
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第2話 第二の生の歩き方

 


 綾子改めアウラです。


あのあと色々試してみましたがやはり私の表情は変わりませんでした。



表情筋が動かない。

これはいったいなんの罰なのか。

二度目の生も不幸になる?


私だけならまだいい、でも今世の両親も?


そんなのダメだ!


私の脳裏に前世の両親が浮かんで消えた・・・。

私のせいで不幸になった二人、私の存在が死に追いやった二人。

前世の両親に今世の両親の顔がダブる。


ダメ!それだけは絶対ダメ!


それだけは我慢できない!!


でも・・・・私に、今の私に何ができる?


私は無力な三歳児なのだ。


満足に一人で生きても行けない無力な子ども。

それが今の私。





どうすればいい?どうすれば?




今は・・・、そう知識を蓄えなければ・・・・。

もう少し育ったら出て行けばいい・・・

そうすれば、私が原因で二人が死ぬことはないはずなのだから・・・















とりあえず魔法・・・・・そう!魔法を覚えよう!



魔法があればある程度は生きていけるはずだ、知識も力もないなら得ればいい。

まだ時間はあるはずだ、だがなるべく急がなくてはならない。

もう二度と、私のせいで両親を死なせない為に・・・・。





















side ローラ


私の名はローラ、ローラ・ライヒマン

歳は26歳、一児の母です。

そう私には子供がいます、愛しい旦那様との愛の結晶


私たちの娘アウラ


アウラは親の私が言うのもなんですが利発な子です。

教えた事はほとんど一度で覚えてしまう。

面白くなって冒険者時代の知識まで教え込んだのは秘密です。

アウラは面白いほど物覚えがいい、そら恐ろしいほどです。

やはりオラクル持ちは常人と違うのでしょうか?

オラクルとは神が人の子に与える祝福と言われています。

一際神に愛された魂は、時として産まれつきその身に奇跡を内包しているのです。

有名所で言えば、神官が使う治療術もオラクルの一種です。

ただこれは努力とそれに見合う魔力があれば誰にでも使えますが。

他者の心の声を聞く力、あらゆる不浄を浄化する力、距離を無視して渡る力

例を上げれば数あれど私の娘に宿った奇跡は多くの例に当てはまらない稀有なものでした。


黄金瞳、便宜的にそう呼びます。


あらゆる不可思議を見通す眼、魔力の流れや不可視の精霊をも見通すのです。

この子は私たちに見えない世界を生きている。

だからでしょうか、この子は普通の子と違っていました。


歳に似合わず利発な所、同じ歳の子供がすることはほとんどしない所、感情が表に出ない所。

あまりに表情に変化がないので不安になって一度司祭様に見ていただいた事があります。

人の心に触れられる司祭様は、アウラには感情がないのではなくそれを表現する力がないと言われました。

感情が表現できない。


それはどんなに辛い事でしょう。


人は多くの感情を持ちます、それを持って他者と通じ、愛し合ったり、憎みあったり、笑いあったり

します。

でもこの子にはそれが出来ないというのです。

原因は不明とのことでした。

あるいは人にはない稀有な力の代償かも知れないとも。


神よ、なぜあなたはこの子に奇跡を与えたのですか?感情という無二の宝を代償にして


神よ、なぜあなたはこの子に力を与えたのですか?


あなたはこの子になにをさせようと言うのですか?


力など要らなかった、この子が人並みに生きられるのならば稀有な力など要らなかったのに・・・





















side アウラ


最近両親が深刻そうに話し合っています。

来るべき時が来たのでしょうか?

まだ私は三歳児、母や父に知識を与えられていても、今だに何も出来ない子供です。


私はどうするべきなのでしょうか?





















side テオドール


もうそろそろ限界かもしれない。

そう思った。

私はテオドール、テオドール・ライヒマン

歳は38歳、一児の父だ。

私が今悩んでいるのはその子供のことだ。

オラクルと呼ばれる神の奇跡を内包して生まれた私の子供アウラ。

オラクルを持って生まれた子供は教会によって検査を受ける。

内包する力の大きさによっては教会の庇護下に入り力の使い方を学ぶのだ。

オラクルを持つ力は時として人の常識を逸脱する。

暴走させれば天災に匹敵する被害が出ることもあるとか。

それほどの力あるものが生まれることは稀有なことだが、その稀有にアウラは当てはまるようなのだ。

これまで確認されたことのない黄金の瞳、便宜的に黄金瞳と呼ばれたものは前例のない力だった。

司祭の調べでわかった事でも、不可思議を見通す眼とのこと、全てがわかった訳ではないが

それでも貴重な力なのだと司祭は言った。

このまま手元で育てるのにも限界ではないかと考え始めている。

力の使い方を学ばすに成長すればどのような災いが降りかかるかわからない。

私だけならばいい、だが妻や村の者たちはどうだろうか?なによりアウラ自身は?

まだ三歳の子供決断させることなどできない、私は連日妻と話し合うこことなった。


「アウラちゃんはまだ三歳なのよ? こんな小さな子を預けるなんて私には出来ません!」


妻は案の定反対した、当然だろう。

私とて内心は反対なのだ。


「そうは言うがな、これはアウラ自身の為でもあるんだ」


「なにがアウラちゃんのためになるのですか?三歳で親元から離されて教会に預けられる事が

 あの子の為になると言うの? まるで棄てられた子供じゃないっ!」


妻の言うことはもっともだ。

実際そうする親もいる。

オラクルと言えば聞こえはいいが、実際は未知の力だ。

愛情より恐怖が勝る親もいるのだ。


「だが力の使い方を知らねば、将来的にあの子は不幸になる」


「!」


「私は親のエゴであの子にそうなってほしくはないのだ」


「でも!・・・でも・・」


妻の勢いが弱まる、彼女自身感じているのだろう、私達親の都合で子供の未来を閉ざす訳にはいかないのだと。


「・・・・・・・・・」


「何も遠く離れた都会に預けるわけではない、すぐ近くの町の教会に預ければいいのだ

 会おうと思えばすぐ会えるさ・・・」


「・・・・・・・・でも」


「ローラ」


「でもアウラちゃんは・・・感情が・・・表現できなくて・・・それで・・」


妻の懸念はもっともだ、私とてそれは考えた。

アウラは感情を表現できない、そういう機能がないそうだ。

きわめて無口も拍車をかけるだろう、だがあの教会の神父は他者の心に触れるオラクルを持つ。


彼ならばアウラを無下には扱うまい。


「大丈夫だ、アウラはルシフ神父に預けるつもりだ。

 彼の力は知っているな?彼ならばアウラの相手が出来ると私は考えている」


「あなた・・・、そう・・・ね

 ルシフ神父なら信頼できるわ、でも私はやっぱり納得できないわ」


妻の説得は難航しそうだ・・・。

















side アウラ


最近両親は私を教会に預けるべきかと相談しているようだ。

うん、いいと思うよ。

このまま私がここにいれば二人が不幸になる。

だから私を教会とやらに預けてくれればいいのだ。


ああもう、もどかしい。


なんで今世は自由に会話が出来ないか・・・。









side テオドール


埒が明かない。

妻は頑なに拒否している。

本音を言えば私だってそうしたい。

でもこれはあの子のためだ。

ふと眠っている我が子に視線を向けると眼が合った。

起きてしまっていたのか、起こしてしまったのか、私たちの話し合いもヒートアップしていたから

気づかなかった。


「アウラ・・起こしてしまったか?すまなかったな」


アウラの頭をなでる、妻譲りの絹のような髪だ。

無表情のアウラは私に無感情な瞳を向けている。


なにも知らぬ者が見れば恐怖するだろうか?まっすぐに私に向けられる黄金瞳。


「ちち」


「!」


アウラが喋った!

アウラの声を聞いたのは何ヶ月ぶりだろうか?この子必要なことしか喋らない。

それもほとんど単語でだ。


「ちち、あうらいく、きょうかい」


「!!」


やはり理解していたのか、利発な子だとは思っていたがこの歳で私達の会話の内容を理解して

自分の判断を下せるとは思わなかった・・・・。


「・・・・・・すまない」


ぎゅっとアウラを抱きしめた。

小さな手が私の首を抱きしめ返す。


「たとえ離れようと、お前は私の子だ」


「うん」


小さく呟いてアウラは抱きしめる手に力を込めた。


「二人だけでずるいわ・・・私だけ仲間はずれなの?」


ローラも一緒になって三人で抱きしめ合った。

この日、私たちはアウラを挟んで眠ることにした。





















side ローラ



「ちち、あうらいく、きょうかい」


その言葉が聞こえたとき私は自分の無力を悟った。

子供にそんなことを言わせるなんて母親失格だ。

情けなくて涙が出る。

アウラは普通の子供と違う、わかっていたのにわかってなかった。

アウラは自分で考えて自分で判断した。

ならぼ私に出来るのはその判断を受け入れることだ。

夫とアウラが抱き合っている、いつも寡黙な夫の目じりに光るものがあるのは

見ないフリ。



「二人だけでずるいわ・・・私だけ仲間はずれなの?」


三人で一緒になって抱き合った。

アウラちゃん、どうかこの温もりを忘れないでね。

たとえ離れてもアウラちゃんは私達の娘なのだから・・・。

この日、私たちはアウラちゃんを挟んで眠りについた。














side アウラ


父と母が話し合いをしていた夜。私は二人の声で眼が覚めた。

なかなかにヒートアップしておりますね。

教会とやらは良くわかりませんが、前世の教会とにたようなものかな?

つまり父は私を教会=孤児院のような所に預けたい、母はそれに反対しいたるらしい。

ううむ、やはりこのままでは二人が不幸になる、私を預けたいという事は

そこまで生活が圧迫されているという事か?

父と母は私の感情表現云々に関しては何も言わない。

なにも感じていないわけではないだろうが、それはそういうものと認識しているみたいだ。

だからこの場合考えられるのは、生活苦によるものだろうと判断。

うむ、家ボロイしね?仕方ないよね?

毎日食事が出来るだけマシな生活なんだよね?

だってここ文化的には中世くらいの時代だし、確か中世時代は人の売り買い当たり前だったはず

まだ預けようって言ってくれるだけマシなんだよね・・・。

二人の為にも決断の時だ。

その教会でどんな扱いを受けるかわからないから怖いけど、このまま二人が不幸になるより

ずっといいはずだ・・・・・だから。

父が立ち上がりこちらを向いた・・・・・ばっちり眼が合った。

近づいてきた父は私の頭をその大きな手で撫でた。


無骨な手だ、硬くて大きい、でも優しい手。


「アウラ・・起こしてしまったか?すまなかったな」


今世の両親も優しい、この優しい両親を不幸にしてはならない。


だから・・・・決断の時だ、少し早いが決断するときだ。


「ちち」


「!」


私の呼びかけに父が驚きを返す。

失礼な、ただ呼びかけただけじゃない・・・。

あんまり呼んだ事なかったかな?ごめんね?



「ちち、あうらいく、きょうかい」


「!!」



驚愕の表情を作る父、ですよね三歳児がそんな事言えば驚きますよね?



「・・・・・・すまない」


うん、わかってますよ、生活苦で子供を手放さなきゃならないのは優しい二人にはつらいよね?

そう言って父は私を抱きしめてくれた。

うれしくなって私も抱きしめ返す。

ぶっとい首に手を回して抱きついた。


「たとえ離れようと、お前は私の子だ」


「うん」


あれ?父ちょっと泣いてる?

うん、私は要らない子じゃないよね?仕方なくだよね?

それだけで十分だ。


それだけで。



「二人だけでずるいわ・・・私だけ仲間はずれなの?」


今度は母が抱きついてきた、きゅう・・・つ、つぶれる

この日私は二人に挟まれたまま眠る事になった。



親の心子知らず


変な方向に勘違いしているアウラでした。


魔法関連出てきてないっすねぇ

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