第15話 闇夜に輝く黄金の…
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「秋津・・・、逃げ、る」
その言葉を聞いた瞬間カチンときた。
『今なんつった?』
自問する。
逃げろ、と言った?
そしてその意味に気付いた時、沸々と怒りが湧いてきた。
独角鬼に対する怒りなど、それに比べれば小さきものだ。
俺は怒りのあまりアウラに怒鳴りつける。
【ふざけんじゃねぇっ!】
そうだ、ふざけるなっ!
【なに勝手に諦めてやがるっ!てめぇっ!】
なぜこうも容易く諦めるのか。
まだなにもしていない、諦めるには早すぎる!
「っ!?」
アウラが息を呑むのを感じた。
俺はアウラと独角鬼の間に入り、独角鬼を威嚇する。
独角鬼は俺を警戒しているのか動きを止めた。
力では敵わないが素早さなら俺が上だ。
なんとかアウラの体制が整うまで時間を稼がなければ。
恐怖がない、恐れも怯えも不思議と感じていなかった。
独角鬼に対して敵意を持ち殺気をぶつける。
俺は地面に倒れ脱力しているアウラに言葉をぶける。
【一度失敗したくらいで諦めて逃げてんじゃねぇよっ!】
そうだ、だった一度魔術の発動に失敗しただけで
なぜこうも簡単に諦める。
なぜこうも簡単に生を放棄しようとするのか。
俺はそれが許せなかった。
アウラは何事にも関心の薄い奴だった。
何かをしても熱中するタイプではなかった。
どこか冷めたように世界を見ている子だ。
自分から進んで物事に関わる事はしなかった。
だから今回は嫌な予感がしたんだ。
この手のタイプが自分から動くと碌な事がない。
そして案の定だ。
しかし、自分の生き死にまで関心が薄いとは思いもしなかった。
だから俺はそれが許せない。
俺だって好き好んで今の境遇になった訳ではない。
だがなってしまったから仕方ない、仕方ないからこの生をしっかり生きようと思った。
その俺の相棒が、あっさり生を手放す?
ふざけるなっ!ふざけるなよアウラっ!
【一度失敗したくらいで諦めんなっ!一度でダメなら何度も試せばいいっ!
早々に諦めて、生を放棄するなっ!
どんなに無様で格好悪るかろうが、足掻いて足掻いて生き抜いて見せろ!】
生きる事を放棄するなっ!
それはただ逃げてるだけだ!
だから逃げるなアウラ!
少しの間の後、囁くようなアウラの声が聞こえた。
「死にたくない、生きていたい」
その言葉を聞いて怒りが消える。
変わりに歓喜湧き上がる。
そして自然と笑みが、言葉がもれる。
【そうだっ!それでいいっ!生き足掻け!生を放棄するな!】
生き残ったれたら俺らの勝ちだっ!!!
もはや俺の行動を縛るものなど何も無い。
本能の命じるまま、独角鬼に向かって駆け出す。
牙を剥き奴の頚動脈を狙う。
人型ならば、急所は人間と同じはずだ。
一撃で仕留めてやるっ!
「ガアァァァァァ!!!」
俺の口から漏れる獣の声。
俺の身体は疾風となって独角鬼に迫った。
ざしゅっと奴の首筋を牙で切り裂く。
だが独角鬼はそんな事などものともせず、俺の身体目掛けて腕を振りかぶる。
【そうそう当るものではないっ!】
どこかで聞いたセリフを口にして俺は避ける。
当ってたまるか!
独角鬼を翻弄し駆け回る。
奴の注意は俺に移り、アウラへは欠片も意識がいっていない。
これならばしばらくの時間稼ぎくらいは可能だろう。
さすが下等生物。
このまま時間を稼ごうとしたその時。
世界が軋んだ気がした。
【なっ!】
身体の動きが止まる、俺も奴も。
全身の毛が総毛立つ。
本能が全方向に警戒を表す。
なんだ、なにが起こった。
アウラは無事か?
そう思ってアウラを振り返ったその先に
・・・・闇夜に浮かぶ黄金の輝きを見た。
な、なにが起こった?
一体なにがどうなっている?
アウラが立っている。
それはいい。
それはいいが、あれはなんだ?
アウラの両目が光を放っていた。
薄暗くなった森の中で、ハッキリと確認できる黄金の瞳。
ほのかに光を放ち、神々しく、或いは禍々しく見えた。
「■■■■■!■■■■■!■■■■■!」
アウラが何かを呟く。
身体が動かない、恐怖で。
あれはなんだ?
あれはアウラなのか?
あんな化け物がアウラなのか?
本能が物凄い勢いで警鐘を鳴らす。
逃げろ!逃げろ!!
逃げたい、逃げたいが逃げる訳にはいかない。
独角鬼に向き直る、しかし独角鬼も俺同様に
恐怖で硬直していた。
そして踵を返すと、なんの躊躇もなく逃げ出した。
しかしそれは、アウラの気を引く行為にしかならなかった。
アウラは輝く黄金の瞳で独角鬼を見据えると
左手を独角鬼に向け
「天雷招来 全天轟堕」
再び何かを口にする。
聞こえるのに聞き取れない。
矛盾したそれを聞き、独角鬼を見やる。
すると燐光が輝き、逃げる独角鬼の頭上にそれは姿を現した。
空を覆う無数の雷。
刃のように研ぎ澄まされた死の象徴。
何千何万もの雷の群れが、空高く視界一杯に広がっていたのだ。
雷の群れは無音で独角鬼に狙いを定める。
そして
まるで空が落ちるかの様に
凄まじい轟音を伴って、雷の群れが独角鬼目掛けて落下したのだ。
全ての雷光が大地に突き刺さった後、独角鬼が居たであろう所を俺は見た。
だがそこには黒く焼け焦げた土があるだけで、独角鬼がいた痕跡さえなかった・・・・。
長くなりそうだったので二話に分けることにしました。
続きの解決編は明日あたりに上げられたらいいなぁ。
なんか似たネタがあるらしいので変更しました。
今度は大丈夫?
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