表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無表情少女の歩む道  作者: 日向猫
第一章 異世界再誕
17/29

幕間4 秋津と神父(ルシフ視点)

アウラ嬢の様子がおかしい。




それに気づいたのは、つい先日の事でした。


はじめに異変に気づいたのは、何か後ろぐらい事がある様子に気づいたことでした。


思考を詠んでも、よく理解できなかった私は


彼女の行動を観察する事にしました。



「子供とて隠し事のひとつやふたつあるだろう」


そう思うのですが、同時にアウラ嬢には問題もあります。


心と身体の齟齬。


それは最近では乖離にまで進んできていました。


なにがそうさせるのかが解らず、手の施しようがない・・・。


そんな状態に私は途方に暮れていました。



今はまだ身体に影響は見られませんが、このまま乖離が進めば体調にも影響が出るでしょう。


身体の感覚が鈍り、神経は弱り、次第に動けなくなる。


そして眠るように死ぬのです。


この世界では、心は重要な意味を持ちます。


特にオラクル所持者には顕著に影響するのです。


心の持ちようで、力の強弱がきまる。


想いが奇跡をおこす。


しかし、心を閉ざし生への執着を放棄すれば、身体から心、


魂が乖離する。


そうなってしまえば、我々の手で救う事は出来ないのです。


唯一救えるのは自分自身のみ。


心の在り方を変えられれば、乖離は無くなり、齟齬も消える。


そう思うのですが、彼女に生への執着が無いようには見えませんでした。


彼女は生きるすべを必死に習得しようとしているのだから。



だからこそ、私は疑問でしょうがなかった。


なぜ彼女がと・・・・。























そんな彼女の乖離が、此処しばらくの間止まっている。



これは私にとって、またとない朗報でした。



なにかが彼女に変化を与えている。


うまくすれば、彼女の治療に役立つかも知れない。


そして私は彼女の観察を始めた訳なのですが・・・・・・・。




『ふむ、普段の行動に変化はなし、と』


内心考えながら、彼女の後ろを隠れてついてゆく。



『ん?食堂?』


彼女は食堂に入っていった。


きょろきょろ、周囲を見回した後、こっそりという感じで食堂に潜入するアウラ嬢。


『これはやはり、なにかありますね』


確信した私はさらに尾行を続ける。



アウラ嬢は昼食の残り物を持ち出すと、教会の裏手に駆け出した。


『裏手?裏手はたしか林のはず・・・・まさか』




彼女はそのまま林に入っていった。













私は彼女を見失わないように、隠れて着いて行く。



すると、何時建てたのか解らないが


小さな小屋があったのです。


『こんな所に小屋?』


アウラ嬢は小屋に入ったようです。


私はこっそり小屋に近づくと、小屋の窓から中を覗き込みました。


『ふむ、やはりですか』


案の定、アウラ嬢は動物を隠れて飼っているようでした。


あの食料は、この動物のためなのですね。


微笑ましい気持ちになった私でしたが


アウラ嬢の足元で、一心不乱に食料を食べている動物を見て顔色が変わるのを自覚しました。


『あれは・・・まさか・・・!』


いけない!アレが私の考えているとおりのモノならアウラ嬢があぶない!


そう思った私はすぐさま小屋に駆け込みました。


突然進入してきた私に、アウラ嬢が驚きの思考を発するのを私は感じました。


「アウラ嬢!その獣から離れて下さい!」


突然の事に混乱しているだろうアウラ嬢を無視して


私は腰のメイスを抜き放ち、黒い獣に向ける。


「待つ、魔物、違う!」


アウラ嬢が獣の前に立ち塞がります。


「アウラ嬢!退きなさい!この獣は危険なのです!」


そう、危険なのだ。


私の見間違い出なければ、この獣は幽鬼狼ファントムドラゴンの子供だ。


竜種でありながら狼に酷似した外見を持ち、


濡れ光る漆黒の毛並みと、天かける翼を持つ。


深い森を縄張りとし、まるで幽鬼のように獲物を狩る。


その事から人々は彼らを幽鬼狼ファントムドラゴンと呼ぶのです。


それがまさかこんな人里に出ようとは・・・・。


「アウラ嬢、その獣は大変危険な魔物です、今すぐ始末しなければ


 沢山の人に害が及びます」


幽鬼狼ファントムドラゴンの前に立ち塞がる彼女を説得しようと、私は声を張り上げた。



「違う、秋津、違う」


いやいやする様に首を振るアウラ嬢。


「よく見る、心」


アウラ嬢は何かを必死に伝えようと無表情の顔を私に向けました。


心を見ろ?


あの獣の?


アウラ嬢が何かを伝えようとしている、私は少し冷静に考える事にしました。


メイスを腰に戻すと、私はアウラ嬢の前に膝を突く。


「解りました、貴方の言葉を信じましょう」


そう言うと、アウラ嬢から安堵の思考が流れてくる。


それから私は黒い獣、幽鬼狼ファントムドラゴンの子供に眼を向けた。


「・・・・・・・」


「ぐるるる」


少し唸りを上げている。


私はオラクルを使い幽鬼狼ファントムドラゴンの心を見ました。


「!」


驚く事に、幽鬼狼ファントムドラゴンの子供の心は


人間のものに酷似していました。


「言葉、解る」


アウラ嬢が告げる。


「この子は人の言葉が解ると?」


アウラ嬢は少し首を傾げて


「今、解る、私だけ」


と続ける。


「つまり、今この子と会話が出来るのはアウラ嬢だけなのですね?」


「そう」


そういって頷くアウラ嬢。


「この子は・・・・、人を襲わないのですね?」


「ない、秋津、人間、思う」


この子はアキツというのか・・・・変わった響きの名だ。


アウラ嬢が付けたのだろうか?


「なるほど、この子、アキツと言いましたかは、自分を人間の様に思っているのですね?


 だから人を襲わないと言うのですね?」


少し考える素振りをした後、こくんと頷くアウラ嬢。


そのさまに幽鬼狼ファントムドラゴンの子供、アキツが


「クルルゥ」


と、なにやら抗議の声を上げる。



『どうやら本当に害はなさそうですね』


そう思い安心した私は、警戒心をといた。


「しかし、このままと言う訳にはいきませんよ」


私が警戒心を解いた事に安心したのか、アウラ嬢はアキツの頭を撫でている。


アキツは大人しくされるがままになっていた。


そんな二人を見ながら私は言う。


「いくら大人しいといっても幽鬼狼ファントムドラゴン幽鬼狼ファントムドラゴンです」


他の住民に見つかればただでは済むまい。


私の言葉にアウラ嬢の不安が伝わってくる。


「そこで私に任せてみませんか? この問題を解決し、アキツを飼えるようにしてあげましょう」


その私の言葉に暫し逡巡したあと、彼女はその黄金の瞳で私を見据え


「よろ」


と頭を下げたのだ。















































その日、モルガナの町は騒然となった。




なんと町中に幽鬼狼ファントムドラゴンの子供が紛れ込んだというのだ。


だが幸いな事に、偶然近くに居合わせたオラクル所持者がこれを捕獲。


強力なオラクルの力によって、使役することに成功したというのだ。


一度念のためにと警備隊の詰め所まで連れて行かれた幽鬼狼ファントムドラゴンの子供は


警備隊にて、一通りの検査を行い安全を確認されたという。


しかも念のためにと、拘束用の術式を組み込んだ聖印を首にかけられる事になった。


これで万が一にも備えられた訳だ。


住民は安心し、捕獲したオラクル所持者を褒め称えた。


そしてそれが年端もいかぬ少女であると知ると、熱烈な歓声が上げられたのだ。










この日から、アウラとアキツはモルガナの町で注目を浴びる事になる。













































その後アキツは無事、教会に引き取られることとなりました。


若干シスターカリーナが渋りましたが、アウラ嬢の情操教育にいいと説得すると


あっさり折れました。


アキツの世話は、そのままアウラ嬢の担当となりました。





「貴方はアウラ嬢の騎士ナイトになるのです、これからアウラ嬢を頼みますよ?」


そういってアキツの頭を撫でようとした私は


ガブリっとアキツに手を噛まれたのである。













































私とアキツの対立は、この時から始まったといっていい。








感想にてご意見をいただき、会話描写を増やしてみました・・・・


増えたよね?


どうでしょうか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ