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無表情少女の歩む道  作者: 日向猫
第一章 異世界再誕
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第10話 竜の子、拾った

私は「魔法」を得た。



魔法を得た私は有頂天だった。


無論この身が、表情や感情を表さないから無表情でスキップしたり


万歳したりした訳なのだが


他人が見れば、はっきり言って不気味だろう。


かなり可哀想な子にみえたであろう。


しかしその時の私はまるで気にならなかった。


自室だった事もあるが、魔法を得たことで


私はひとつの目的を達したからだ。



もはや何者も私を脅かす事はできない。


このときの私は、真実そう思い込んでいたのだ。



世の中そんなに甘く無いというのに・・・・。













しかしそれを思い知るのはもうしばらく先の話だ。





















魔法を得た翌日、私は魔術の練習をしていた。



ん?なんで魔術の練習なんかしてるかって?


無論偽装のためだ、いきなり魔法を披露するほど愚かではない。


あれはこの世界の魔術とは、次元の違うものだ。




内心ニヤニヤしながら、無表情で魔術の練習に励んでいた。


昼食後、シスターカリーナが所用で出かける事になったので時間が空いた。



久しぶりの空き時間だ、さてなにをしようかと思案する。



久しぶりにお気に入りの場所に行ってみようと思い立った。











教会の裏手に林がある。


深い森ではない、防壁の内側に作られた人工の林だ。


まっすぐ歩けば三分ほどで防壁にぶつかる程度の林。


ここで昼寝するのが私のお気に入りだった。


森林浴ってやつだ。


しかしその日はいつもと様子が違った。


鳥の囀りが聞こえない?


なにかあったのだろうか?


注意深く森を進む、いつでも魔法が行使できるように準備も忘れない。


そうするうちに、少し開けた場所に出た。



ふと視界の中に黒い物体が目に入った。



動物?


大きさから子供のようだ。


犬?黒い子犬が倒れている?


恐る恐る近づいた私は、倒れている黒い子犬?を観察した。


始めは死んでいるのかと思った。


ピクリとも動かないのだ、だがよく見ると腹が上下している。


呼吸してる!まだ生きてる!


私は慌てて子犬?を抱え上げ動きを止めた。


どうしようか、このまま教会に連れて行くべきだろうか?


よくよく考えて、私はこの世界に生まれて以来


猫や犬のような動物を見た覚えがない。


もしこの子が魔物の子供なら、教会に連れて行ったら殺されてしまうかもしれない。


でも急がないとこの子は死んでしまうかも知れないのだ。


とりあえず外傷がないか調べる事にした。


外傷が原因なら魔法でなんとかなる、そう思ったのだ。



そして・・・・




















ぐぅぅぅぅぅぅっという音が響いた。






「・・・・・・」





どうやら空腹で倒れていたらしい。


なんとも人騒がせなものだ。


一瞬で気が抜けた。


しかし、なんとも抱き心地がいい毛並み・・・。


どうやら私は癒しに飢えていたらしい。


ついつい、抱きしめる手に力が篭ってしまった。





【ぐぇっ苦しぃ!】



あ?


今頭に何か響いたような?


すると目が覚めたのか、黒い子犬?が顔を上げ私に目を向けた。


【くそっ、苦しいだろ小娘っ!】


今確かに声が聞こえた・・・。


え?


まさかこの子犬?が喋ったのか?


私はまじまじと子犬?を見つめた。


よく見るとこの子犬じゃない。


背中に小さな羽根があり、耳の後ろに小さな角がある・・・。


やっぱり魔物だったのか・・・。


しかもなんか竜っぽい・・・。


しかし、この世界もう何でもありだな。


魔物が喋るなんて。


「魔物」


おっとつい口に出てしまった。


すると私の言葉に反応したのか、黒い竜の子(仮)は私を睨みつけてきた。


【魔物じゃねぇ!人間だっ!ちくしょぉぉぉ!】


などとのたまったのだ。


「人間?」


【!】


おや?驚いてるね?何でだろ?


【お、おい!お前、俺の言葉が解かるのか?】


なにを今更、さっきらベラベラ喋っているではないか。


「解かる」


まぁ、とりあえず答えてやるが


【まじかよ、ははっははは】


なんかすごく嬉しそうなんですが


尻尾をパタパタ振ってるし。


【まさか言葉の通じる人間がいるなんて思わなかった】


ん?


【このわけ解からん状況で言葉が通じる人間にめぐり合えるなんて・・・】


んん?


【なぁ、お前名前は?俺は秋津あきつ 博則ひろのりってんだ】


なに!?


「秋津?」


【そうそう、秋津 博則。しっかしお前こんな状態なのに無表情かよ。


 少しは動揺とかしないわけ?】


話ができるのがよっぽど嬉しいのか、尻尾が高速回転中。



「私、アウラ」


【へー、アウラってのか、なぁアウラここは一体何処なんだ?】


「モルガナ」


【モルガナ?】


「町」


【町の名前がモルガナっていうのか?】


彼の質問に私は答えながら頷いた。


「そう」


【モルガナ・・・ね、なぁ?ここはなんて国なんだ?】


「アウラスタ」


【・・・・・・・・・知らねぇ】


さっきまでぶんぶん振り回されていた尻尾がしゅんとなる。


【くそっ、やっぱこれ、あれか?異世界トリップ?いや姿が違うから憑依転生もの?】


いや、もうね


わかっていたけどさ。


まさか私以外の、異世界人(この場合転生者か?)に出会うとは思わなかったよ。


名前からして日本人ぽいよね?


はてさてどうしたものか・・・。


このまま見捨てるのも気分が悪いし、連れて帰ろうにも魔物だしね。


中身はともかく。


暫し思案していると彼の視線を感じた。


【なぁアウラ、ものは相談なんだが】


ん?


「相談?」


【そう!相談!】


なにか重要な事だろうか?


元の世界に戻してくれと言われても無理だからね・・・。



【何か食い物もってない?実はすげぇ空腹でさぁ】


そういって尻尾が揺れる。


「・・・・・・・」


ガクリと気が抜けた・・・・・。
























・・・・・・・もうホントにどうしてやろうかコイツ。








もう一人の転生者登場。


ただし人外。


詳しい説明は次話で。

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