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無表情少女の歩む道  作者: 日向猫
第一章 異世界再誕
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幕間3 神父の憂い(ルシフ視点)

短い話が続きます。


もう三年も経ったのですね。


私はふとそんな事を考えた。


子供ひとり増えただけで、教会内は随分と賑やかになった。


モルガナの教会には、さほど人はいない。


私を含め癒し手が三人、シスター見習いが二人。


シスターが三人、シスターを取り纏めるカリーナ女史に


神官戦士が三人の計十二人しかいなかった。


静かで穏やかだった日々は


彼女アウラの出現で一変した。



学習において習ったことを実践しようとして


彼女は大抵騒ぎを起こす。


神官戦士の話を真に受けて、これまた実践しようと


騒ぎを起こす。


やること成す事どこかずれたアウラ嬢。


最初は戸惑っていた教会員も、次第になれていった。


今では騒動が起こるたびに、「やれやれ、またあのお嬢さんか」と笑って対処


出来るようになった。


静かだった日々は賑やかになった。


だが不快なものではない。


人々の笑いと喧騒が、こんなにも心地のよいものだったのかと強く思った。


願わくばこんな日々がずっと続けばいいのにと・・・・。
























私には悩みがあります。


アウラ嬢が教会に保護されて以来抱えている悩み。


アウラ嬢のオラクルが発動しません。


制御とかそれ以前の問題で発動すらしていないのです。


ありえない事です。


どれほど弱いオラクルでも本能的に発動の仕方を知るものなのですが


アウラ嬢にはそれがありません。


あの瞳がオラクルであるのは間違いない。


だが何故か発動しないのです。


アウラ嬢はオラクルを認識すらしていないようでした。



その事があまりにも気になった私は、秘術を使う決意をしました。


私のオラクルは人の心に触れる力を持ちます。


人の心、いわば魂に触れる力とでも言おうか。


この力で私は人の心の傷を治療します。






だが・・・・この力には別の側面も併せ持つのです。


心に、魂に触れられるという事は人の最も弱い部分に触れられる事と同義である。


使い方次第で人の心を壊したり、魂だけを殺すことができます。


そうすれば身体は生きたまま、中身が死んだ状態になる。


ほぼ廃人状態に出来るのです。



この忌むべき力を上手く利用すれば、人の心と身体の状態を確認できるのです。


アウラ嬢のオラクルが発動しない理由。


私はそれがアウラ嬢の心に由来すると考えていました。


ごく稀に心因的な原因から、力の発動が上手くいかなかった例があります。


私はアウラ嬢もこの例だと考えました。





















アウラ嬢が寝静まるのを待って、私は力の行使を実行しました。


以前アウラ嬢に、身体の接触がなければ力を発揮できないと言ったのは嘘です。


少し疲れますが、離れていても力の行使は可能なのです。


私は眠っているアウラ嬢に力の意識を向け、彼女の状態を調べました。









そして知ったのです、今彼女は非常に危ういバランスで生きていると。


心と身体に齟齬を見つけました。


つまり、魂が肉体にかみ合っていないのです。



何故こんな状態になっているのかはわかりませんが、このままの状態で良い訳がありません。


だがこればかりは、私の力を持ってしても癒すことはできません。


いったい原因はなんなのか?


原因を取り除かないことには、このままでは彼女の命に関わる。


このまま齟齬を放置すれば、彼女の成長と共に


肉体と魂は剥離していき、いずれ死に至るでしょう。


なんとか治療できないものでしょうか・・・・。


この時ほど自身の力の無さを嘆いた事はありませんでした。


子供ひとり満足に救えない。


私はなんと無力なのでしょうか・・・・・。






だが諦める訳にはいきません。


アウラ嬢を死なせる訳には行かないのですから。


待っていてください、私の光。


過去の文献をあさり、他のオラクル所持者にあたってでも


必ず貴方を救う手がかりを突き止めてみせます。


必ず・・・・。





























貴方を死なせたりなどするものか・・・・・・。















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