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無表情少女の歩む道  作者: 日向猫
第一章 異世界再誕
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第8話 魔術を教えて

 

 



とてとてと、シスターカリーナの後に着いていく。






シスターカリーナが私の部屋に案内してくれました。






「・・・・・・・」






・・・・・・・・・・・いやね











うん、私も今戸惑っています。








シスターカリーナは私を部屋に案内すると、いつの間にか着いてきていた

白い修道服のシスター、名をネーナ・スーというそうだ。

に後を任せてさっさと行ってしまった。

でも私が戸惑っているのはそんな事じゃないのだ。













私の部屋、それが問題だ。










日当たりのいい個室でベッドと洋服箪笥、小さな机と本棚が備え付けられている。

まぁ、そこまではいい。






ベッドの上には可愛らしいウサギのような動物の大きなぬいぐるみが置かれていた。

ウサギのようなぬいぐるみで視線が止まってしまったのは内緒だ。

気づかれてないよね?

他にも壁紙は薄い桜色で床のカーペットは小さな花柄模様、カーテンもピンク色と

女の子然とした子供部屋だった。

本棚の本は絵本や童話のようだ。

文字を覚えるのに使えるかも。

これはあのシスターカリーナが用意したんだろうか?

なんかイメージと合わないな・・・・。

もっと厳格で生真面目そうな人に見えたけど・・・。

初対面ですごいしかめっ面だったし、いきなり啖呵切られたし。


ひょっとして彼女はもっと子供然とした可愛らしい女の子が来ると思っていたのかな?

だから来た私がまるで期待はずれの様子に、ついつい不機嫌になってしまったと・・・


そういうことだろうか?


そうだったらゴメンナサイ、可愛げのない子供で

まぁこんな無表情面の子供はイヤだよねぇ・・・。

とりあえず後で部屋のお礼は言っておこう。


最低限の礼儀として・・・・。






さて、とりあえずここが私の生活拠点となる。

この後はどうすればいいんだ?

とりあえずネーナさんに聞いてみよう。


「先、どう?」


・・・・・・・・・・おぅ


我ながら酷いものだ。

これじゃぁ意味が通じんだろう。


我が自動変換機能(今命名)も段々ひどくなってないだろうか?

がっくり肩を落としそうになるが、その前にネーナさんが屈みこみ

私の視線に合わせて聞いてきた。


「これからどうするのか聞きたいの?」


「・・・・・」


びっくりだ、この人すげぇ。

あれだけの単語で私の意思を汲み取ってくれた。

こくりと頷いた私を彼女はにこりと笑い返して




















「そうね、まずはお風呂かしら」

















そうのいったのだ。


「・・・・・・」


いや、あのね、そういう事を聞きたかった訳じゃ・・・


て、ちょっと、引っ張らないでぇぇぇぇ!?



そうして私は彼女に抱えられるように引っ張られて転生後初(?)の湯船につかるこことなったのだ。













































結論から言おう!


いい湯でした・・・・・。



なんとこの教会、普通に浴室がありました。

ちゃんとお湯を張った浴室です。

サウナとかじゃないですよ、異世界に来て日本風のお風呂に

入れるとは夢にも思いませんでした。


うん、元日本人としてはやはり湯を張った風呂に入りたい訳で


キムラさんありがとうございます。

きっとキムラさんがはっちゃけた結果なのでしょう。


そんなことをつらつら考えていた私の目に飛び込んで来たのは

温風を起こして髪を梳かしているネーナさんの姿だった・・・。
















ドライヤー代わりですね、わかります・・・・・・・・・・・・・・。



















いや、いやいやいやいやいや!


そうじゃない!そんな事はどうでもいいんだ!

魔法っ!あ、いや魔術か?


や、まぁどうでもいい。

とにかくネーナさん魔術使ってね?








ほしい!教えてほしい!






魔術・・・、そうだ、まずは確認だ。

私はネーナさんに近づき、彼女の衣服の袖を握ってちょいちょいと引っ張った。

彼女が此方に振り向くと私は彼女に聞いたのだ。


「まじゅつ」


「え?」


「魔術?」


小首を傾げて再度尋ねる

一瞬ネーナさんはきょとんとした顔をしたが


「あぁ、この風が魔術かってこと?」


こくんと私は頷いた。


「えぇそうよ、元はファイアストームという魔術を改良調節して

 

 作った温風魔術なの・・・」


ファイアストームって明らかに攻撃魔術ですよね?

改良調節ってことはそれなりに応用がきくって事だ。

新しい可能性。

ルシフ神父から魔術は攻撃に特化していると聞いた。

一般的に攻撃魔術しか存在しないのだと。

なまじオラクルという別の力があるがゆえに

魔術の利便性を追求することがなかったようだ。

魔術は戦闘行為にのみに使用され

基本、攻撃にしか使えないと言う先入観をこの世界の住人は持ってしまったのだろう。

結果魔術は戦闘方面にしか発達せず、人の営みには関わりの薄いものとなってしまった。


彼女のように魔術を生活の一部として取り入れるものは少数だ。

彼女しかり、我が父しかりだ。

少し考えれば解かりそうなものだが、

一度刷り込まれた先入観はなかなか変えることができないようだ。

魔術をもっと便利に使おうという意識がこの世界の住人にはないのだ。


だが私は違う。


私が転生者ゆえに、前世の知識が魔術の可能性を広げている。

あとは魔術がどの程度のことが出来るかだ。

私は魔術に関してまるで知識がない。

ゆえに何ができて何が出来ないのかを知らないのだ。

そもそも私に魔術行使が出来るのか、それすら解からないのだ。

改良調節が可能なら私の知る魔術ゲームやアニメのを再現出来るだろうか?


可能性はある。


夢が膨らむ。


一度無力感を感じたがゆえに

力を手に出来るかもしれないという期待は膨らむばかりだった。

私は彼女に師事することにした。

少なくとも私が知る中で魔術の使ったのは父以外で彼女が最初だ。

オラクル所持者の神父は魔術を行使しないというし


護衛についていた神官戦士も魔術は使わなかった。

攻撃に特化しているなら、魔物の襲撃の際に使ってもよかったはずだ。

だが使わなかった。


使えなかったと見ていいだろう。


だから私は、この目の前の女性に魔術を教えてほしいと頼む事にしたのだ。


「教えて?」


「え?」


「魔術」


彼女の目を見つめお願いした。

断られるかもしれない、だが諦めるつもりもなかった・・・・。






























side ネーナ


「ではシスターネーナ、あとは頼みますね」


そう言ってシスターカリーナは行ってしまった。

おそらくルシフ神父と今後の相談でもするのだろう。

私は残された少女アウラを見た。

彼女は今部屋の観察をしているようだ。

ウエット(うさぎのような動物)のぬいぐるみで視線が止まっていたので

気に入って貰えたようだ。


あれはシスターカリーナお手製のぬいぐるみだ。

シスターカリーナは厳格そうな女性だが、小物やぬいぐるみなど

そういったものを手作りするというかわいい趣味をもっている。

この子供部屋の小物関係は全て彼女の手作りだ。

この子が気に入ったらしいと知れば、シスターカリーナも喜ぶことだろう。


ふと視線を感じた。

いつの間にか観察を終えていたようだ。

すると彼女は


「先、どう?」


と言葉を発した。


鈴を転がしたような可愛らしい声だ。

私は身を屈め、彼女と目線を同じくした。

子供と話すときはなるべく目線を合わせるべきだと

シスターカリーナに教わっていた。

無表情の少女の黄金の瞳を見つめながら

私は彼女の言葉を思い返す。


先、どう?と彼女は言った。

先とはこの先、このあとのことだろうか?

どう?とはどうするのか聞いて来たという事?


「これからどうするのか聞きたいの?」


だから私はそう聞いてみた。


「・・・・・」


沈黙ののちこくりと頷いた。

どうやら正解らしい。


雰囲気的にびっくりしてた?


なんとなくそう感じた。

無表情に見えてもキチンと感情はあるようだ。


さて、このあとどうしようか?


シスターカリーナからはなんの指示も受けてないから

私の采配に任されたとみていい。

私は彼女をみて思いつく。




「そうね、まずはお風呂かしら」



彼女は少し埃っぽかった。

男だらけで移動していたのだから仕方ないが

仮にも女の子がこれではかわいそうだ。

私は半幅抱えるように彼女を引っ張ると浴室に向けて歩き出した。











この教会には浴室が備え付けられている。

ちゃんと男女に分かれた大浴場だ。

過去、聖天使キムラ・スター様が伝えたと言うこの浴室は

我々、教会関係者が自身を清潔に保つ為に重宝されている。

怪我人や病人と接するものが不潔ではいけないからだ。

ゆえに教会関係者は身を清潔に保つことを義務付けられている。

彼女とともに浴室に入り、彼女を丹念に洗ってあげる。


私には歳の離れた兄弟がいたのでお手のものだ。

身奇麗にした後、お湯につかる。

彼女は大人しく、どこか満足そうにお湯につかっていた。






お風呂から出て、私が髪を梳かしていると彼女が話しかけてきた。

私の服の袖を掴んでちょいちょいと引っ張った彼女は

私に対してこういった。


「まじゅつ」


「え?」


「魔術?」


小首を傾げて再度尋ねてくる。

彼女は私が発生させた温風を見て私に問いかけてきたようだ。

彼女は魔術を見るのが初めてなのだろうか?


「あぁ、この風が魔術かってこと?」


こくんと彼女は再度頷いた。

彼女は私の魔術に興味があるようだ。

私は少し嬉しくなって自分が使っていた魔術について説明した。


「えぇそうよ、元はファイアストームという魔術を改良調節して

 

 作った温風魔術なの・・・」


私のように魔術を戦闘行為以外に使う者は滅多にいない。

元々魔術は特殊技能だ。

オラクルほどではないにせよ、習得には特別な才能を要求する。

習得が難しく、応用性に欠ける魔術は戦闘行為以外で

気軽に使われることはなかった。

だからこそ私はもっと広い意味で魔術を広めることが出来ないものかと

日々改良に勤しんでいたのだ。


そんな私の魔術に興味を抱いたくれた彼女に自然頬が緩む。


「教えて?」


「え?」


「魔術」


しかも彼女は私の魔術を教えてほしいといったのだ。

真剣な眼差しで(無表情ではあったが私はそう感じた)私を見つめてくる。

オラクル所持者が魔術を習得することはあまりない。

別に禁じられているわけではないが、オラクルという神の恩恵を持っているのだ

魔術を覚える必要などないのだろう。


そんなオラクル所持者の彼女が魔術を教えてくれと言ってきたのだ。

私は内心驚きを禁じえなかった。

彼女は真剣に魔術を習いたいようだ。

醸し出される雰囲気がそれと伝えてくれる。


だからこそ私は


「いいわよ」


そう返す以外返事を持たなかったのだ。


































少し早計だったかも知れない。

少なくともシスターカリーナかルシフ神父に許可を得てからでもよかったかも

・・・・・・・・・・・・・後で怒られないだろうか?







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