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聖王国

 ☆☆☆聖王国



 異常事態が起きている。

 魔族が賢くなってきている。

 今までは少数の勇者パーティーが魔王を討伐していた。

 魔族との戦争は少数の部隊のぶつかり合いだった。


 少数精鋭が大規模魔法や奥義を使い雌雄を決する。


 今世の魔王討伐は7度失敗している。

 それに、年々転移者も数が少ない。ワシは法座から集まった面々に意見をする。


「魔族との戦争を改めるべきじゃな。凍結じゃ」


 だが、頑迷な奴らは言うことを聞かない。


「猊下!第8次魔王討伐は連合軍を派遣しましょう」

「いや、全面戦争だ。最近の魔族はどうも人族臭い。知恵がついている」

「転移者の質が落ちているのも原因だ」


 司教達が騒ぐがのう。

 ワシは、度重なる失敗で失脚した法王の次に即位したスタイン4世。

 それまでは地方で宗教裁判の判事をしておった。嘘判別のスキルがあるが、

 選ばれた理由は痩せているだけだ。



 貴族や民の批判をかわすためにな。女神教幹部はでっぷり太っていて、宝石にちりばめられた法衣を着ているのに、魔王討伐失敗し続けているとな。


 そんな意味の無い会議を数回続けたが、司教達が段々と魔王討伐に乗り気ではなくなってきている。


「もう少し、勇者パーティーを錬成するべきです」

「今更、魔王を討伐しても・・・転移者を待ちましょう」

「大規模派兵は財政上の問題がございます」



 おかしい。宗教家は頑迷が商売じゃ。

 その理由が分かったのは聖女ヤスコ殿だ。

 いきなり飛び込んできおった。



「ちょっと、法王様、魔族領に転移者がいます!」

「ほお、何故分かった」


 魔王から贈り物が来ている・・・・とな。

 ヤスコ殿の故郷、異世界ニホンの製品を見せられた。化粧品らしい。



 そう言えば、魔族に飲み込まれた人族の国もあったな。

 そいつらを使って工作をしているのか。


 冒険者ギルド以外から、妙に魔族領の素材が入ってきておる。


 人族を使って、商会を作り表向きは合法を装って交易をして。

 おそらく司教達を顧問にして金を払っているな。

 妙に頭の回る人物が魔族領にいるようだ。


「でだ。異世界の武器も召喚可能ということだな?」


「可能と考える方が無難ですわ」



 あまり知られていないが、異世界は魔法がないが高度な文明を築いている。


「異世界の武器を教えて下され」


「私も軍事常識がありませんが、銃とか大砲とか戦車、戦闘機・・・」


 どれも聞いたことないレベルだ。嘘判別鑑定をしたが、彼女は嘘を言っていない。


「しかし、一人武器を持ったところで・・・」


 ここで、ハッと気がついた。まさか、多量に召喚して、訓練をしていたら太刀打ちできない・・・・




 ☆☆☆魔族領鉱山基地


 一方、法王の危惧の通り。梓は現代軍の訓練を命じられた。



「いいか。号令には予令と動礼がある。【前へ~~】が予令、明瞭に長く、【進め!】が動令で短切に強い!

 例外もある。【気をつけ!】【休め】などだ。質問!」


「あら、何故、例外もあるのかしら?」

「不明!以上」

「まあ、分からないのね」


 フウ、今、私、梓は班付として訓練教育を命じられた。魔王様から教わった事を教えているのだ。そのために、予習ノートも取った。

 今、つかかっているのはエミリア・ボア、亡国の貴族出身。回復術士、私のバディでもある。


 私を入れて100名、だから、10人で1人、交代で学生班長を定め訓練をさせ。私が学生班長を見る方法だ。偶数なのは2人一組で組むためだそうだ。お互いに助け合う。

 サキアちゃん以外は人族だ。サキアちゃんも合流した。魔道師だ。



「アズサ様、分かりやすかったですわ」

「有難う。サキア訓練学生」


 他に女の子はいる。ミルちゃん平民出身で、エミリアの寄家筋に当たる回復術士。

 今はサキアちゃんのバディだ。


 私はエミリアと度々衝突した。エミリアはミルをメイドのように扱う。


「ミル、水をお願い」

「はい、お嬢様」

「エミリア、自分で行きなさい!」

「まあ、貴方は家門名があるけど、異世界では平民でしょう」

「ここは平民も貴族も関係ありません」



 しかし、学科が進む毎に、エミリアは落ちこぼれていく。


「何ですの!これは?何で動きますの?魔力を感じませんわ!」


 銃だ。この世界では火薬の排気で動かす発想そのものが無かった。


 魔王様に怒られた。


「エミリア、0点って何だ。銃の部品の一つも暗記できないのか?連帯責任!腕立て伏の姿勢をとれ!」


「「「「1,2」」」


「グスン、グスン、私は貴族なのに・・グスン」


「エミリアは頭がいいからまず原理を考えようとする。未知の物にたいしては、まずは丸暗記だよ。そしたら、段々と分かってくる。銃は排気とバネで動いている」


「だべ、オラも丸暗記だべ」

「そうだ。水車を作るときも親方にそう言われたよ」


 班付の仕事は多岐にわたる。


 点呼を受けたりもする。


「点呼!」


「班付!1人いません。ヤンです!」

「何ですって」

「あの野郎、バックレやがったな」

「ルド、決めつけはやめなさい。具合が悪くてトイレに籠もっているかも知れないわ」



 ヤンはルドとバディだ。ルドはヤンチャでヤンは大人しい。組み合わせ失敗したか?


 皆で探す。


「男子は男子トイレ、女子は一応女子トイレも見て!」


「「「了解!」」」



 ベースキャンプの訓練場の草むらですすり泣きが聞こえた。


「グスン、グスン」

「やあ、ヤン、隣座って良い?」

「ヒィ、班付!僕は敵前逃亡で死刑ですよね」

「さあ、どうだろうね。だけど、君はまだ兵士ではないよ」


 ヤンの隣に座り話を聞いてあげた。

 私から特に言う事はない。


「僕、村に帰っても居場所がなくて・・・」

「大変だね」


「僕、班付みたいに優秀じゃないから、訓練班長上手く出来なくて、ルドに叱られて・・」

「あら、私は異世界から来たのよ。その中で序列最下位だったわ」

「班付が?」


 一通り話を聞いて、決断を迫る。


「今なら、具合が悪くて草むらに伏せっていた。体調不良で除隊も出来るよ。どうする?それとも戻る?」


「僕、班付といたいです」

「分かったわ」


 隊舎に帰り。皆を集める。


「皆、ヤン、少し具合が悪かったのだって、これから点呼だよ」

「「「はい」」」


「何だ、ヤンそうだったのか」

「皆、ごめん」

「気にしないだ」


「はあ?ヤン、迷惑をかけるなよ」

「おい、ルド、お前の先走りも迷惑だぜ」

「何だと!」

「まあ、まあ、おやつ食べるベ」


 皆、優しいな。


 それから、ヤンは訓練班長もこなすようになった。


 自衛隊では体罰は禁止されているそうだ。

 魔王様曰く。


『俺も一般だった頃、よく五任期士長とかが酔っ払って、説教&制裁を喰らったのだよ。軍隊は階級社会だ。絶対に逆らえない立場を利用して行う制裁はクソだ。

 しかし、罰がなければ締まらねえ。腕立て伏せだ。やり方はアズサなら分かるよな」


「はい・・」


 考えた。魔王様から懲罰権をもらって、


「ドン!食べ過ぎによる訓練遅刻!第五班は腕立て伏の姿勢をとれ!」


「「「1,2」」」


 私も腕立て伏の姿勢をとった。

 訓練前に錬成をしたが、やはり、男にはかなわない。


「・・30,31・・・」


「「「30!31!・・・」


 時間が掛かる。


 しかし、


「アズサ班付!僕に戦闘靴磨かせて下さい!」

「ヤン、いいよ。自分でやるわ」


「班付、おやつ手に入っただ。あげるだ」

「ドン、おイモ、いつの間に?頂くわ」


「アズサ様、いえ、班付、女子会をしましょう」

「分かった。エミリア、おイモ頂いてから行くわ」


 何か、慕われているような気がするわ。

 いつも懲罰しているのに・・・何故?

 何かハードルが上がっているように思える・・・



・・・資質が先か、それとも立場がそうさせるのか。リーダーシップ論は諸説あるが、少なくても梓が懲罰を一緒に受けていた事が皆の心に響いたようだった。


最後までお読み頂き有難うございました。

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