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精霊王国ライア・カスの回想

「ライア、何故、立っている。平伏をしないのか?」

「ヒィ、ヒィ」


 ・・・私は栄光ある精霊王国カス家の王女、ライア・カス。女王になるハズであったわ。今は捕囚の身になり召喚獣の前で平伏をしている。



 何故、こんなことになったのかしら。

 生き残るのよ。相手はガキよ。


 私、ライアは記憶を探った。まだ、逆転は出来る。

 異世界人特有の甘さがあるはずだわ。





 ☆☆☆ライア視点


 あれは10ヶ月前だったわ。遅れた野蛮の世界から召喚獣を27体つれて来てあげたわ。

 だけど、


「え、召喚獣の一体が城を出たがっていると?」

「左様でございます。序列27番のアズサ・ササキです」

「ふむ。皆、魔王討伐に乗り気なのにな」



 最初は興味も持たなかった。


「一応、聞いておく。彼女の能力は何かしら?」

「対価召喚でございます」

「ほお、あの召喚には対価が必要。結果はどうであった」


「はい、魔石を対価に召喚させたら、ゴミが出てきました」

「ゴミとな?」


「はい、ねっとりとした黒い粘土のようなものです。本人は『あすふぁると』と言っています」

「陛下の愛妾候補だったな。放っておけ。どうせ。7日も経てば現実の辛さに耐えかねて戻って来る」


「ハッ、一応、位置を特定させる魔道ペンダントを持たせました」

「さすが、ドルク神官、頼りにしていますよ」



 それから7日後、報告が来た。


「王女殿下、ササキの消息が途絶えました。池です」

「ほお、辛さのあまり自殺をしたか」

「しかし、冒険者ギルドにも商業ギルドにも来た消息がございません」

「大方、そこに行く知恵のない者であろう。それよりも残った召喚獣たちだ」

「はい、調教は順調でございます」



 最初の7日間は召喚獣を思いっきり甘やかした。

 それぞれの訓練は適当、教官達も甘やかすようにしたのよ。


 そして、すっかり信頼しきった時に、契約の儀を行わせた。

 これは、奴隷契約。


 本人が心から望まないと効力が発せない。

 契約の精霊を呼び出し。拘束の指輪をつけさせたら完了だわ。


「皆様、文言はキツいですが。これは、王国が皆様を保護する契約でもあります。

『甲は、精霊王国国王、王族、民のために心血を注いで忠誠を使う。逆らったら死罪を始め。いかなる罰も即時に受け入れる』


 これは皆様が強大な力をもっております。もし、闇におちて罪を犯されたら手のほどこしようがございません。普通に生活をして頂いたら、全く問題はございませんわ」


「だよねー、普通はそうだよね」

「ライア、これで俺たち、王国の民のために戦えるんだね」


「はい、皆様、宜しくお願いします。では、一人一人、私が契約の精霊を呼び出し丁寧に契約しますわ」



 ・・・・・・


 かかったわ。26体の奴隷を手に入れたわ。誰も疑わなかったわ。


「ライア、魔王討伐はいつ?」

「これ、呼び捨てはなかろう。緊縛!」


「ええ、体が痛い!ウワワワワーーー」


「お前達、召喚獣が我の名を呼ぶとは片腹いたい。直接話す事は禁止じゃ」


「「「そんな」」」

「おかしいよ!そんなの話と違うよ!」


「分からせてやるわ。契約の精霊よ。召喚獣に苦痛を与えよ。レベル鞭打ちじゃ!」



 それからは、調教を厳しくした。

 魔族領にある魔石鉱山を奪取する。

 魔王なんてどうでも良いわ。


 しかし、まだ、懲りずに我に直接話しかける者がおった。錬金術師のヤマナだ。

 訓練を抜けだし、廊下で話しかけてきた。


「へへへへ、ライア王女殿下」

「こら、ヤマナ、王女殿下に近づくな」

「これを・・・」


「ほお、これは・・・見事な細工だ」

「我輩は、宝石の光度を上げることが出来るでござるよ。それに、精巧な人形もつくることが出来るでござる」


「これは良い。一室を与えよ。働き次第では好きな召喚獣と番にすることを許すぞ」

「うほほほーい。じゃあ、ギャルの山花さん!」



 山名はとっかえひっかえ女を変えたな。まあ、どうでも良い。


「王女殿下パーティーが仕上がりました」

「そうか、リーダーは誰じゃ?」

「剣聖のケンタ、格闘士のゴウキ、聖女のサチコ、それに、後、何匹か格闘系と魔道系のジョブ持ちをつければ鉱山奪取は容易でございましょう」


「うむ。行かせよ」





 しかし、結果は大敗・・・聖女は行方不明。


「何故じゃ!」

「それが・・・四本角が出てきました」

「ま、魔王じゃと!何故じゃ!嘘であろう!」


 魔王は女神信仰圏方面の戦線にいると聞いたが・・・何故じゃ!


 確かめなければならないわ。調教失敗かしら。


「おい、我国一番の剣士を出せ」

「御意!」

「このケンタと死合いをせよ。殺しても構わない。ケンタよ。こやつを殺す気でいけ」


「アハハハ、このガルド、騎士団長を拝命しております。負けるはずがございません」


「はい・・・行きます」

 しかし、たった一振りで、ガルドは真っ二つに切り裂かれた。


「ヒィ、ケンタよ。何が起きた」

「魔王・・・です。手も足もでませんでした」

「何故、生きて帰ってこれたのだ!」


「魔王軍に参加を呼びかけられました・・・」



 意味分からない。


 しかし、凶報はこれだけでは無かった。



「ライア王女殿下の遺跡鉱山からでるオリハルコン、ミスリルが売れなくなりました」

「何故じゃ!」


「それが、言いにくいのですが、とても品質が良い物が出回っています」

「それを手に入れよ」



 何だ。これは・・・まるで、今日、昨日で出来上がったものだ。


「『ふらいぱん』というものに。鍋・・・です。オリハルコンの鍋です」

「どこからか!」

「獣人族の集落です」

「あの低脳種族が?あり得ん」


 その時、また、報告があがった。


「大変でございます。ササキの召喚した物を分析した結果、ライア王女殿下の遺跡鉱山から出る物と同じでございます。道の材料です」


「何ですって!」

 なら、ササキか。生きていたのか。


 王城にも獣人メイドがいる。


 メイド長を呼び出したわ。


「メイド長、正直に言え。いなくなった獣人族メイドはおるか?」

「はい・・・家猫族のミーシャが・・・いなくなりました」

「大方、売ったのであろう。どこが買い付けた?」

「ヒィ、裏組織でございます」

「正直者よ。耳だけで済ましてやるわ。ケンタ、この女の耳を切れ」

「御意・・」



 読めたわ。裏組織と獣人族は裏でつながっている。


「獣人族の集落を捜索せさよ」

「「「御意」」」


「ケンタ!ついてこい」

「はい・・」



 裏組織に会いにいったわ。


「ほお、これは、これは、ライア王女殿下自らか??よく来られました」

「この金貨を上げるから正直に言いなさい。ササキはどこ?」

「ササキ、知りませんな」


「最近、出回っている貴金属のことよ!」

「それは・・・そうですね。最近、女神信仰圏の金貨が入って来まして・・」

「ぶっ潰しますよ!」


「はあ、分かりました。かないませんな。実は、獣人族と交易をしているのです。お互いに物をおいて立ち去り、良かったら交渉成立です。沈黙交易ですね」

「読めたわ。その場所を教えなさい!」



 兵を差し向けた。


 しかし、


「全滅!」

「分かりません、跡形もありません」


「そう、なら、騎士団を総動員ね」


 私はお父様に奏上して、王都近辺の騎士団総動員を願い出た。


「ほお、最近、歳入が減っているそうではないか?」

「申訳ございませんわ」

「まあ、良い。近衛騎士団を差し向けさせよう。その代わり・・」

「分かっております。魔石鉱山を奪取したら、異世界から召喚獣を呼び寄せます」

「うむ。それでこそライアよ。今度はもう少し幼い子を頼む」



 ・・・自分では何にもしないくせに。

 既に、後方職種の中から3体ほど、お父様に差し上げたわ。

 まだ、欲しいようね。


 しかし、私が王国を継いだら、もっと豊かにしてみせますわ。精霊信仰諸国をまとめ女神信仰圏にも対抗するわ。

 そうでなければ王都市民の支持を得られませんわ。


 しかし、さすがに王都近辺を空にするわけにはいかない。

 最低限の賊対策を残して地方から兵を呼び寄せるか。


 と思った矢先、とんでもない報告が上がる。


「ライア様、地方軍が魔王軍に襲われています!」

「各個撃破されている模様!」


「何ですって!ササキは陽動か!近衛騎士団を呼び寄せなさい。その他のもよ」


「定期連絡の怪鳥便が来ておりません」

「全滅はなかろう。伝令を出せ!」

「召喚獣たちは?」

「王都決戦で温存よ!奴らは信用できないわ」


 そして、あのササキの兵団が王都近郊に現れたわ。


「行くわ!ケンタついて来なさい」

「はい、王女殿下」









 ・・・・・・・・・・・・・・



 そして、今、私はあのガキの足下で平伏をしている。

 考えるのよ。考えるのよ。



「ライア、表をあげ」

「はい、ライアでございます」


「右腕痛い?」


 お、お前が打ち落としたくせに。


「いえ、痛くはございませんわ」

「な~んだ。残念」


 甘さが全く無い。これは、もう。無理?どう切り抜ければいい?


最後までお読み頂き有難うございました。

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