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魔王軍のアズサ

 ☆現在・・・


「お許し下さい・・とは申しませんわ!ですが、私は役に立ちます。この王国は私がいなければダメですわ!罪滅ぼしをさせて下さいませ」



 今、召喚の責任者ライアが佐々木梓の足下で必死に懇願している。

 この手の平クルクルも能力の一つかも知れない。


 佐々木梓は玉座に座り足を投げ出し、肘を肘掛けにかけだらしなく座っていた。


 まず。貴族たちは侮りの言葉をかける。


「ライア、見苦しいぞ!」

「魔族長殿!どうか、こやつの言う事を聞かないで下さい。我々がお仕えします」



 また、梓のクラスメイトたちも声をあげる。


「私達は騙されたわ!」

「佐々木・・・さん。仲間だろう?仇討ちを取ってくれよ」


 梓は手でサッと払う仕草をした。

『黙れ』である。


 皆はシーンとした。

 もう、この時点で梓はこの国の新たな施政者と認識されていたのだ。



 梓は言葉を発した。


「ライアの拘束を外してあげなさい」


「了解!」


「ライア、ついて来なさい」


 皆の驚くの顔に興味を示さずに梓は平然とライアに背を向けて王宮の奥に入る。




 ☆☆☆王宮召喚の間



 梓は護衛と伴に召喚の間に入った。

 そこにはこの国の魔道師、ドルク神官がいた。拘束はされていない。

 梓は微笑みながら話しかけた。


「フフフフフ、実はね。私は貴方たちを買っているのよ」




 ☆ライア視点


 きたわ。やっぱり27番・・・いえ、アズサは有能ね。

 有能なら私を欲しがるはずだわ。


 この召喚術を使えばこの大陸を統一する事が出来るわ。



「ライア、ドルク、実はね。日本人を召喚して軍団を作りたいの。協力してくれる?」


「非才の身なれど、尽力しますわ!」

「・・はい、この召喚術を活用して下さるとはお目が高い!」


 アズサはドルク神官に尋ねるわ。



「こちらから日本国、いえ、異世界に行くことは出来るかしら」

「無理です。こちらから騎士団を攻め込ませようとしましたが無理でした。体が耐えられません。一方通行です。・・・召喚は世界の狭間に網のような物があり。数人がやっとでした。

 それを私が考案した方法で、多量の魔石を使い、一時的に、網の目を広げ・・・」


 ドルク神官はさも我が手柄のように言うわ。命じたのは私よ。

 でも、我慢だわ。


「なるほど、すごいわ。日本人を少しずつ連れてこれるわね。で、今まで召喚した日本人は?」


「はい、大人は調教が上手く行きませんでした。ライア殿下の契約魔法に疑念を持ってサインをしなかったり。世界の事を教えろといろいろ聞いてきて厄介でした」


「だから高校生に狙いを定めたのね。その日本人は?」

「奴隷として売りました・・・いや、ライア殿下の命令で」



 ・・・アズサは、すっかり王国民のような思考になっているわ。

 なら、操り放題だ。

 しかも、召喚を独占しようとしているわ。


「この素晴らしい召喚術を独占したいわ。ドルク以外に知っている者は?」

「おりません。口伝です。元々は危機に陥った時に使え。異世界人を国賓待遇にしろとの古いしきたりでした」


「本は?」

「ございません。女神信仰圏では自然召喚以外は認めていないので、実質、私しか方法は知りませんぞ」



「次に、ライア」

「はい、何でございましょう。何なりと申しつけ下さい」


「この国は魔王軍の属国にするわ。貴女に女王になって欲しいの」

「はい、もちろんでございます!」


「でも、父を殺した私に服従出来るかしら」

「はい、父は女にだらしなくて、私がこの国の実権を握っておりますわ。これも戦、仕方ないですわ」


「統治を万全にしたいの。この国を脅かす勢力はあるかしら?」


 キター!と私は小躍りしたい衝動を抑えた。

 旧王家の残党がこの王国内にいる。


 精霊の愛し子を奉じて、古法にすがりついているわ。



「アリスとその残党ですわ!怠惰と停滞の象徴、アリスが精霊の愛し子として辺境に隠れております!その異世界の武器で殺して下さいませ!」



「へえ、そんな勢力がいるのね。でも、ライアほどの実力者でも討伐が難しかったのかしら?」


「はい、小癪にもアリスのきれい事に騙される民が少なからずおります。アリスが森に逃げると木々が覆い隠し。藪で道をふさぐ厄介な相手でございます」


「分かったわ・・・あれを運んで来て」


「了解です」


 部下たちが木箱を運んで来たわ。二人がかりで・・何が入っているのかしら。


「ヒィ、金貨・・それも上質だわ」


 蓋を開けたら金貨の山だ。


「これを見て、女神信仰圏の金貨です。精霊王国復興の予算に使います」



 私は残った左手で手を取った。


「ライア殿下、ズルいですぞ!」

 ドルクも負けじと金貨を手に取るわ。


 いいわ。魔王軍の属国になってその中でのし上がってやるわ。


 しかし、蓋をバタンと閉じられて、左腕を負傷したわ。


「ギャアアーー」

「あら、何故、魔王軍のお金に手をつけるのかしら。そんな人はやっぱり無理ね」



「下さるのではないのですか?」


「あら、私は『見て』と言っただけよ。・・・二人を牢屋に入れて」


「「「了解です」」」



「そ、そんな。嘘つき、優位な立場を利用して文言のアラを探して人を貶めるなんて・・為政者として失格ですわ!」


「何故、私まで!私を処刑したら召喚出来なくなりますぞ!」



 梓はグッとためて答えた。


「まず。ライア、それはお前だ。次に、ドルク、召喚なんて出来なくても良いわ。この世界の問題は自分たちで解決しなさい」



【お役に立てますわ!】


 ライアの叫びが響いた。




 ☆梓視点



 私達よりも先に召喚された日本人を探した。

 ヒドい有様だった。


 王都内のコロシアムで戦い戦死した者。

 中には動物園に収容された日本人がいた。

 もちろん戦時徴用で保護した。


「小杉です。施工管理をしておりました・・・自衛隊の方・・?」

「鈴木です。・・・保母をしておりましたわ・・グスン、グスン」


 30代の男性と20代の女性・・・番として展示されたそうだ。


「生活と安全は保障しますわ。それまではこの王宮に一室を・・いえ、個人に部屋を与えます」


「いえ、一室で大丈夫ですわ。猛さんと一緒に暮らす覚悟は出来ています」

「保奈美!」


 何だか。手を握りラブラブな雰囲気だ。吊り橋効果か。


「ゴホン」



 次はクラスメイトだ。


 諮問の機会を設けた。


 生き残ったのは、坂城君は私が殺して25名に、それから魔石鉱山の戦いで聖女の佐伯さんが行方不明で24名、



「佐々木・・・さん。俺たちにも銃を貸してくれよ」

「あのね。山名君を処罰して・・・私達を無理矢理・・」

「山名だけライアに取り入って特別待遇を受けていた!」


「フン、刑罰不遡及の原則があるなり。前は合法だったなり。今の法律で処罰できないなり。佐々木氏、我はラノベ初段なり。この後の展開は任せるなり」



 どうしたものか。山名はライアに気に入れられて、好きな女子を部屋に呼び寄せたらしい。

 私は既にこの世界の者だ。魔王軍の幹部だ。転移者は捕虜、戦利品扱いだ。

 しかし、私情がある。


「ゴホン、山名に関してはこの世界が決める事でしょう。城から追放します」


「何ですと!我、軍師として才能があるなり!」

「ダメです」


 冒険者になるしかないだろう。しかし、魔王軍占領下の冒険者ギルド、魔族領の素材の切り取りは御法度だ。



「次に、皆に提案します。この国の下級官吏として働く事を許します。真の王国民のためになるでしょう」


「佐々木さん・・・私達を自衛隊に入れて」

「そうだ。銃なんて簡単に扱えるよ。新しい銃を出してくれよ」


 ・・・『簡単に』で火がついた。

 これは信用が出来る者にしか渡せない。信用できる者は簡単にとは言わない。



 だから、


「どうしても、下級官吏として働くのが嫌なら城を出なさい。他国へ仕官するも、冒険者になるのも自由です」


 と言ってしまった。


 すると、クラスメイトたちは次々に城を出る案に乗る。


「そうか、他国で活躍できれば・・」

「佐々木が出来たのだから、俺たちにだって・・・ヤバい」

「ああ、そうだ。チートの初まりだ」



 しまった。この外の世界の事を話していなかった。


 私は山名以外に銀貨を一人50枚、金貨にして5枚ほど一人ずつに渡した。

 皆はまだ夢の世界にいるようだ。



 皆が何グループに分かれたて城を出た後、報告が上がった。


「サエキと申す異世界人が来ております。聖女のようです」

「幸子ちゃんが・・・確か聖女だったよね」


 すぐに会った。

 しかし、男性が横にいる。素朴な若者だ。


 話を聞くと始めの魔石鉱山攻略に行った時に騎士団長に夜伽を命じれて逃げ出したそうだ。

 逃げた先でポーターのハンスという者に助けられたそうだ。


「佐々木さん。私、ハンスさんと生きて行く。帰れる法はないのでしょう」


 梓と呼んでくれない。


「ないわ。幸子・・・分かったわ。応援をする。でも何故名で呼んでくれないの?」

「貴女はこの国の支配者でしょう。分別をつけるわ」

「生活は大丈夫なの?」

「大丈夫。治療のスキルがあるから、旅をしてお金を稼ぐ・・」

「金貨を渡すわ。皆にも渡したの」

「いらないわ・・・佐々木さんが成功してうれしい。でも、プライドが許さない」


 ハンスと共に頭を下げ。幸子は王城を後にした。

 彼女こそ残って欲しかった。

 思わず幸子に向かって腕を伸す。


 幸子はクルッと振り向いて別れの言葉を言ってくれた。


「さようなら、また会える日を楽しみにしているわ」

「幸子・・」





 感慨にふけると、部下が会いに来た。

 第一小銃班長のガンスとその部下ルドだ。


「アズサ戦闘団長殿!ガンス入ります!命令無視のルドをつれて参りました。完治したので腕立て100回を実施します」


「分かったわ。腕立て伏せの姿勢をとれ」


「「「1、2」」」



 号令で腕立て伏せの姿勢をとった。



「あれ、何で戦闘団長も?」

「ガンスも腕立て布せをするじゃない。部下の失敗は最終的には指揮官の責任もあるのよ」


 三人で腕立て100回行った。


「「「・・・55,56!」」」


 この頃から佐々木梓は魔王軍のアズサとして認識が広まっていくが、彼女と会見した者は普通と言う。しかし、大事な場面で最適解を選択する。それが彼女の恐ろしさだと後の賢者は年代記に記す事になった。




最後までお読み頂き有難うございました。

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