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佐々木梓回想⑥ アズサ戦闘団創設

「アズサ様、班長が出来そうな者の名簿ですわ」

「エミリア、有難う」


 訓練隊は私を抜かしたら、99名。

 エミリアは貴族だ。

 生まれた時からマネージメント能力を求められている環境にいた。

 この部隊の長で良いだろう。


 しかし、物足りないな。

 いや、役職が人を作るから魔王様に推薦するか?


「エミリアを長に推薦するけど良いかしら?」

「えっ、アズサ様、何を仰っているのですか?アズサ様がこの戦闘団の長ですよ」


「無理、無理、私は補給が・・」


 トントンとノックして人が入って来た。魔族のサキアちゃんだ。


「アズサ様、魔道科兵を集めました」

「サキア有難う・・」


 この世界、魔法は貴重だ。サキアちゃんを長にして、9名魔族の魔道師を集めてもらった。


 これで、110名、班編制は小銃班と迫撃砲班に戦闘工兵班、後は、車両、通信、諸々を行う本部班・・






 カン!カン!


「訓練に非ず!戦闘団は至急、鉱山基地前平原に集合!」



 実戦か・・・


 話を聞くと、こちらの貿易網を潰そうと兵が動き出している。



「ヤン、計画書を」

「はい、戦闘団長殿」



 私達は魔王様の魔王軍と合同で出陣をした。


 敵は数千・・・


「蛮勇は無用!迫撃砲班を主体!戦闘工兵班は指向性散弾を設置!」


「「了解!」」


 指向性散弾は悪魔の兵器だ。

 米軍で言えばクレイモア地雷、つまり露出した地雷。

 爆発により数千の破片と弾が扇状的に散らばる。

 いきなり使われたら平地ならこれを避けられる手段はない。


「小銃班は、逃げ道に伏せておく。突撃破砕線を構築!」


「「突撃破砕線構築了解」」


 突撃破砕線というのは、超簡単に言うと、横から攻撃することである。

 もし、突撃している時に横から攻撃されたら、大きな損害がでるのは定番だ。



「半装填ヨシ、てぇ~!」


 迫撃砲2個班、6門の迫撃砲で攻撃し。

 更に、指向性散弾で攻撃する。



「アズサ班付・・・全滅です。動いている者はいません」

「そう・・・」


 血湧き肉躍らない。戦闘は少しも楽しくない。

 まるで建設現場?何だろう。まだ、学生の身だから分からない。

 今はそんな事はどうでも良い。


 皆の心のケアだ。

 わざと明るく振る舞う。


「皆、すごいわ。誰を表彰しようかしら」


 しかし、エミリアは察してくれた。


「アズサ様、この世界の者は・・死体は見飽きていますわ」

「そう、大丈夫そうね」


 何故、死体を見飽きているのかは聞かない。

 きっと、ロクでもないことだろう。



「アズサ様、友軍です。魔王軍です!」


 骸骨の人が死霊術で遺体を歩かせ一カ所に集めて。


 魔王様が。


「あ~、黒炎で焼かれやがれ!」


 ボアと巨大な炎の玉を出して遺体を鎧ごと溶かした。


「おう、アズサ、これでこちらの動きを秘匿出来るぜ」

「あの、魔王様、提案があります。私の召喚術はお金がかかりますから、次は・・は鎧を脱がせる事は可能でしょうか?」


「ええな。採用」


 話していて、『次は』と言ってしまった自分の傲慢さに気がついた。

『もう二度とこのような惨禍が起きないように尽力します』じゃないのか

 実は戦車が欲しかった。


 この一戦で私は人族部隊の長に正式に任命された。


『アズサ戦闘団』と正式に名称が決まった。


 亡国の王、エミリアの祖父、イワンさんに正式に挨拶をされた。

 私は魔族領人族部の正式な戦長にもなるそうだ。


「戦長に全権限を委ねます。魔王軍人族部の代表になってもらえませんか?」

「私には無理ですよ。イワンさんがまとめて下さい」

「アズサ様を全面的にバックアップします」


「それは・・・戦争が終わってからお話ししましょう」


 先延ばしだ。



 その後、騎士団が投入された事がドローン偵察で判明するが、

 次々に全滅、死霊術や魔王様の魔法で隠蔽を続けたが、

 さすがに相手もおかしいと気がついたようだ。


 夜襲を計画しているのか?


 こちらも暗視眼鏡があるが、これ、目が疲れるし・・・

 そんな時、ミーシャちゃんと合流した。

 無事に救出されたようだ。



「アズサ様~」

「ミーシャちゃん」


 抱き合った。


「ミーシャちゃん。いたい」

「ヒィ、ごめんなさい」


 力が強い。

 獣人は魔法は使えないが力が強い。

 そりゃ、猫ちゃんが人型になったのだから、その戦闘力はいかほどか?


 ミーシャちゃんとその仲間を合せて10人加入させて、夜専用の監視班を創設した。

 もちろん、人族からも不寝番を出すが・・・夜間の索敵能力が大幅に向上した。

 これで戦闘団は私をいれてアズサ以下120名だ。


 そして、私は王都攻略軍長にもなった。

 と言っても千人弱か?


「アズサ、魔王軍は精霊王国に深く侵攻し、地方軍を叩く。アズサは現代軍と獣人族と裏組織をつける。王都を攻略せよ」

「はい、魔王様・・・」

「何が重要だ?」

「・・速さ。この王都近郊の騎士団を撃破、いえ、撃滅掃討しなければなりません」

「正解だ。拙速で動け。場合によっては、戦死者も覚悟せねばならないな」



 戦車を召喚したいが、お値段が高い・・・

 魔王様も戦車の事は詳しくは知らないと言う。

 この場合・・・


 一番お安い61式戦車?いえ、74式にしよう。






 ☆☆☆騎士団視点


 夕暮れ時、魔族領方面に出陣した常勝騎士団は野営をした。


「フウ、ライア王女殿下も困ったものよ。召喚獣にやらせる仕事なのに騎士団を動かすとは・・」

「ガーランド騎士団長殿、召喚獣は信用できないようです」

「ああ、魔王にやられたとか言うが・・おおかた調教の失敗だろうな」


 ガーランド、若くして騎士団長に抜擢されたが元は王都市民である。

 ライアは事の重大さを文書で伝えたが、今一理解出来ていなかった。


「騎士団長の役職はつかれるよ。次は楽な役職にしようかな」


 この王国では高位の役職は金で買える。

 競売の場合もある。

 まるで古代ローマ帝国のようだ。


 しかし、ガーランドは部下に金を配り人望はあった。

 軍団を私物化する流れではあるが任期がそれを阻んでいた。


 これから精霊王国が魔族領魔石鉱山を奪取したら新たなビジネスチャンスが見込まれる。だから、ガーランド家は騎士団長を落札した。


 が、・・・彼は騎士団が戦う集団であると忘れていた。


「城から逃げた召喚獣は陛下の愛妾候補だったそうじゃないか?見てみたいものだな」

「全くです」


 その時、外から歓声が、いや、喧噪が聞こえてきた。



「「「「ワー!ワー!ワー!」」」



「何だ。外が騒がしい」

「酒でしょう・・・注意してきま・・・グハ!」



 ダダダダダ!と銃撃が本営を襲った。



 軽装甲機動車に5.56ミリ機関銃、ミニミを積んでいる仕様である。

 服装は迷彩服に鉄帽に、暗視眼鏡をつけていた。

 その姿は・・・この世界の者には。


「悪・・精霊!」


 に見えた。


 また。


「フクロウ?精霊女王の使者?」



 アズサは車体上部から顔を出している。

 暗視眼鏡をあげて。


「撃て!」


 と命じた。

 この日、わずか3台の軽装甲車で防衛ラインを突入して本営を攻撃を敢行した。


 本営を見つけたのはマグレだが、偶然でもない。

 軍旗が堂々と掲げられていたからだ。


「一分以内に、本営の金貨を接収!」

「「「了解!」」」


 金貨を詰めるだけ詰め込み。


 信号弾を撃った。

 3分後に信号弾めがけて、迫撃砲が降ってくる作戦だ。


「撤収!」



 翌朝、アズサは待望の戦車の召喚に成功した。



 ボア~!


「戦車だわ!」


「すげえ」

「長ハナ?」

「車両に近いのか?どうやって動かす?」


「研究するしかないわ。これから王都に進軍します。ドンを長にして、訓練をしなさい。人員の選抜はエミリアにお願いするわ。後三人ね」


「了解ですわ」


 戦利品を使って戦車と弾丸、燃料を召喚したが、その事で誰も不満を漏らす者はいなかった。

 この世界では戦利品は勝った側の正統な権利だ。


 皆はアズサ戦闘団の一員として深く自覚し。

 まるで日本の自衛隊のように使命感に燃えているから不満に思わない。

 とはアズサは思わなかった。







最後までお読み頂き有難うございました。

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― 新着の感想 ―
退役した戦車だからお買い得なのですね!! こういう細かい設定痺れます!! りっくんランドで展示の戦車の下に潜ってキャタピラ見てたら叱られたことあります、テヘペロ。
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